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千葉はディズニーだけじゃない!!
東京での試験(メイン目的)も終わったし、せっかく関西から関東に来たんだから観光してから帰るか!!
ということで私は千葉県南部の陸の孤島・鋸山(のこぎりやまと読む)に向かった(唐突)。千葉県初上陸。
これ、どうやっていくと思いますか?
JRあるから電車で行けないこともない(1時間に1本だが…)。
けどそれはちょっと芸がない(※そんなことはない)…
結局、横浜から京急で横須賀へ、そして横須賀(久里浜)を全く観光せずに東京湾フェリーに乗り込んで向かうことにした。
このフェリーがなかなか楽しい!
揺れがないから酔わないし、甲板の開放度が高いから海と船跡を思う存分満喫できる。ちなみに東京はほぼ見えない。
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このフェリー、祖父によると風速10m/s程度でしょっちゅう運航停止してるそう。今回は往復どちらも定時出航でラッキーだった。
神奈川側で船が動かなかったらまだ良い。しかし千葉側で動かなかったら終わりである。
湘南の海(?)を眺めていると一瞬夏に戻ったような気分になる。
帰りの船ではオリオン座がはっきりと見えた。
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あと面白かったのがこれ。船を固定するためのロープなのだろうが、乗り組み員の人がずっと槌みたいなので叩いてた。柔軟性が必要なのだろう!!
40分の船旅を終え対岸に到着。
鋸山というイカツイ地名は稜線の形がのこぎりの歯のようにギザギザなことが由来なのだそう。
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鋸山の岩は房州石と呼ばれ、耐火性の高さと採掘のしやすさから建材やかまどの材料として人気だった。これを切り出すときに石切りのこぎりみたいなの使うから鋸山かと思っていた。
かつてこの地で多くの岩が切り出され、海を渡り、横浜や東京の都市建築(実際にここの岩が靖国神社とかに使われている)に利用されてきた。
街を歩くとき目にする何気ない石垣や壁の岩にも壮大な歴史があると思うと面白い。
石切りの跡は今も残っており、巨大で直線的な穴の空いた断崖絶壁は他にはない圧巻の光景。ラピュタ壁という通称がつくのにも納得だ。
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そんな歴史が息づき、見どころ豊富な鋸山。
加えて、日本100低山(標高1200m以下で歴史などの特色がある山)の一つであるためか程よい整備がなされていて登りやすい。
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60分と言われている地獄のぞきという張り出した崖までのコースを25分で登り切り、山岳部魂を見せた。
もう少し時間があれば日本寺(なんと奈良時代に行基によって開かれたらしい!)や切通トンネルも見たかったが、登り始めた時から日没寸前でいかんせん時間がないのですぐに降りることに。
いつか山岳部の友達を連れてもう一度来たいと思う。
というわけで、ここまでは「石のまち」としての鋸山の魅力を語ってきたが、実は鋸山の見どころは石だけではない!
最近(というほどでもないかも)は「石と芸術のまち」を冠した町おこしで知られているのだ。実はこれがはるばるやってきた目的。
鋸山にある彫刻などは仏教美術そのものと言えそうだし、歌川広重も鋸山を訪れて浮世絵にしている。
古くから芸術の息づく町ではあったが、現代で鋸山美術館を中心に更なる発展を見せている。
なんと、完全市民運営の小型美術館なのだ。
具体的には、受付などをボランティアの地域住民の方がやっていて、敷地内の芝生は小学生が手入れしているという感じ。
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展示物や庭の桜も寄贈品が多いとか。
私が居た間にも隣町の住人が大きなガラス玉を寄贈しに来ていた。
何に使うものなのか聞いてみると、昔養殖業などで使われていたガラス製の浮き球なんだと教えてくれた。ほぼ傷なく残っているのは珍しいらしい。
スタッフの方は他にも色々な話を聞かせてくれた。
完全市民運営で建設代は今も借金になっていること。
美術館は人がいなくても空調を整えたりしなくてはいけなくて出費が多いこと。
縁がつながり、それで作品を展示させてくれるアーティストがいること。
ほんとにこじんまりした美術館だけど、そこにはずっと誰かが居て、にぎやかな空気がある。大型の美術館にはない魅力がある。
美術館観が大きく更新された気がした。
美術館自体の発見もあり楽しかったが、目当ての展示は岩波昭彦先生の日本画!!
芸祭と石崎光搖展以降、私は日本画に注目している。
あの自然とつながるような感覚になる絵具と、工夫次第でなんでもできる自由な技法に魅了された。
海外留学中に日本画の技法で海外の自然とかを描いて、日本画から日本文化を伝えていけたら、そしていつかは"Nihonga"が通じる世界を作れたらいいなぁ。
岩波先生は都市の風景などをモチーフに現代日本画を描いていらっしゃる方だ。
東山魁夷や千住博も海外取材・海外の風景をもととした作品制作をしているが、岩波先生のような都市画はあまりないと思う(時代もある)。
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この細かい絵の雰囲気がめっちゃ好き!
そしてタイムリーすぎる(海外モチーフ日本画制作の参考になる)!
ということでわくわくしながら展示を一通りみて、エントランスでスタッフの方と話していると、
なんと!岩波先生がまさにこの時!美術館にいるということが判明!
そして先生を呼んでくださり、実際にお会いすることができた(衝撃)。
気さくな方で、展示作品を回りながら色々な質問をさせてもらった。
夢のようなというか夢の時間である。こういうミラクルが起こり得るのも小型美術館ならではの魅力なのでは?
展示されている日本画の画材は先生が実際に使っているものだと教えてもらった。
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いや、画家の方に使っている画材を直接解説してもらえるってどういう状況!?
ここらへんから感激しっぱなしだった。
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特に印象に残っているのがこの作品。
写真だとわかりにくいが、枝や葉が実際にちょっと盛り上がっていて、立体感がある。これは絵具を単に厚塗りしているのではなく、軽石素材の盛り上げ具をあらかじめ塗っていると教えてもらった。まるで薄い彫刻のようだ。
日本画はやり直しが効かないし、アクリルとか油彩みたいな速攻表現はできないけど、繊細で計画的で、こだわりの詰まった絵が作れる。
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光の表現がとにかく素敵で、これも写真だとわかりにくいが、右上の空を中心に薄ーくなんと表現すればいいかわからない色が点描されている。これは西洋の印象派の点描技法を取り入れた光の表現だそう。美術鑑賞の時も、画家として何か自分の絵に取り入れられるポイントがないか観察するという話をしてくださった。
一つの作風や描き方に固執するのではなく、どんどん真似もして、模索しながら作品制作する姿がかっこいい。
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他にも「院展」をはじめとする日本画壇の話、膠などの画材の損失、若者への思いなどを語ってくださった。
夢の時間(再掲)。
サインと写真撮影まで応じてくださり、感謝でいっぱいだ。
日本画へのモチベーションがあふれている。まずは墨からでも始めたい!!
読んでくださりありがとうございました!