7月28日のお話***
「羽田空港 Terminal3」
あたたかな陽が滑走路の向こうの海に沈み
冬の名残が色濃い冷たい闇が訪れても
飛行場は負けじと星空よりも色とりどりの灯りをまとう
夜の寒さに肩を寄せ合う相手もいない僕は
ひとり 誰を見送るでも待つでもなく 送迎デッキから飛行機を見つめている
君になんて全く興味がなかった僕の平凡な人生に
君は突然割り込んできた
みんなから「派手なこと好きなお調子者」言われているくせに
僕はその時 見てしまったんだ
留学に向かうあいつの見送りに来たあの日 空港の片隅で
君が何度も何度も とびきりの笑顔の練習をしているところを
君が練習したその笑顔は
あいつを見送った後も あいつの飛行機が夜空に飛び立つのを見守った後も
空港にいる間ずっととびきりの状態で輝いていた
だから
僕以外の誰も 君があいつのこと好きだったとは気づかなかっただろう
だから
僕は気づいてしまったんだ 僕が君のこと好きになってしまったこと
滑走路に散りばめられた灯りのように
僕が進む道を示してくれたのが君
迷うことなんてなかった あの日 君を支えたいと心から思った
飛行機が向かい風を受けて飛び立つように
君のためなら星の見えない闇ばかり夜空も怖くないと思えたから
爽やかな風が滑走路の向こうの海から届く
夏の名残がまだ色濃い蒸し暑い夜が訪れても
飛行場は負けじと星空よりも色とりどりの灯りをまとう
夜の寒さに肩を寄せ合う季節が待ち遠しい僕は君と
ふたり 誰を見送るでも待つでもなく 送迎デッキから飛行機を見つめている
僕になんて全く興味がなかった君の穏やかな人生に
僕は突然割り込んでしまった
みんなから「派手なこと好きなお調子者」言われているくせに
僕は君が実は奥手で一途だと知っている
留学に向かうあいつの見送りに来たこの空港に
君が何度も何度も 訪れてはあいつのことを思っているから
君が練習したあの笑顔は
あいつを見送った後も あいつの飛行機が夜空に飛び立つのを見守った後も
あいつ以外に向けられることはないのだろう
だから
あいつ以外の誰も 君のあのとびきりの笑顔を見ることはもうないんだろう
だから
僕は気づいてしまったんだ 僕はあいつのことが好きな君が好き
滑走路に散りばめられた灯りのように
僕が進む道を示してくれたのが君
迷うことなんてなかった あの日 君を支えたいと心から思った
飛行機が向かい風を受けて飛び立つように
君のためなら星の見えない闇ばかり夜空も怖くないと思えたから
あたたかな陽が滑走路の向こうの海に沈み
冬の名残が色濃い冷たい闇が訪れても
飛行場は負けじと星空よりも色とりどりの灯りをまとう
夜の寒さに肩を寄せ合いながら君と僕は
ふたり 誰を見送るでも待つでもなく 送迎デッキから飛行機を見つめている
お互いに全く興味がなかった二人のこの一年に
終わりは突然割り込んできた
みんなから「派手なこと好きなお調子者」言われていた君が
僕に対して切なそうに微笑む理由は知っている
留学に向かったあいつが戻ってくるこの空港に
もう二人で来ることができないことを僕はちゃんとわかってる
君が練習したいつかの笑顔を
僕に送ってくれたこともあったと 僕はちゃんと気づいている
それが一時でも
あいつ以外に向けられたことがあったから
だから
僕以外の誰も もう君のあのとびきりの笑顔を見せないでほしいと思う
だから
僕は気づいてしまったんだ 僕以外の誰も好きになってほしくないと
滑走路に散りばめられた灯りのように
君が進む道を示せたのかな僕は
迷わせてばかりだった あの日から 君を支えられたのかな
飛行機が向かい風を受けて飛び立つように
君のために僕は何かに挑戦していたのかな 飛び立てたのかな
滑走路に散りばめられた灯りのように
僕が進む道を示してくれたのが君
迷うことなんてなかった あの日 君を支えたいと心から思った
飛行機が向かい風を受けて飛び立つように
君がいなくても僕は 君がいなくても多分 僕は飛べるはずだ