スタグフレーションが起こりそうにない件
このところ景気後退とインフレが同時に起きるスタグフレーションのリスクが話題ですが、これはそう簡単に起こるものではありません。3ヵ月から6ヵ月程度なら、物価上昇が企業のコストを増やしたり消費を冷やしたりして景気に悪影響を及ぼす可能性はありますが、数年続くトレンドにはならないでしょう。注目される石油価格は、景気回復での需要の伸びが価格を引き上げています。石油輸出国機構(OPEC)は、目先の増産を避けたものの、世界の脱炭素が進む前にできるだけたくさんの石油を売りたいと考えており、供給不足による石油価格上昇が原因で長く景気を悪化させる結果となるとは思えません。半導体不足も一時的で、来年に供給が安定すると見ています。一方、世界の需要は米国などの財政出動でまだ伸びしろがありますが、短期的にミシガン大学の消費者態度指数はこの2ヵ月落ち込んでおり、需要の急激な伸びがインフレにつながるとは考えにくいです。現在の経済状況は、石油が必需品供給と直結していた1970年代の石油ショックによるスタグフレーションの状況とは根本的に違いますから、スタグフレーションになる理由が見当たりません。ただし、今後数年のうちにインフレになる可能性はあります。中国の人件費が上昇し、安くて大量の商品が出回りにくくなり、インターネット企業の無料サービスも大体行き渡ってきました。財政政策の有効性も認められ、デフレ懸念よりインフレがましだとも思われるようになっています。景気が良ければインフレになる可能性は残っています。
〔チーフ・ストラテジスト神山直樹のレポート等は下記URLからご覧いただけます〕
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