神山 直樹
投資の目的を「引退後の潤いのある生活」としましょう。マーケットの知識や相場観などは不要です。潤いのある生活のために、毎年3%、20年で60%の資産増を目指すのです。最初から「まとまった資金」はなくてよく、毎年の積み重ねであとから「まとまった資金にしていく」のです。これが、現役・退職世代の投資未経験者に本当に知ってほしいことです
これから投資を始めようと考えている資産形成世代のみなさまのお悩みや投資のギモンについて、日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト神山直樹がお答えしていきます。
2024年初のドル円相場は1ドル=141円くらいで、ドル安円高を予想しました。米連邦準備理事会(FRB)の利下げと日銀の利上げを予想したからで、ドル安の程度はFRBと日銀の臆病さによるとしました。ところが現時点でドル円は154円台で、年初と比べてドル高です。 ドル安が進まない理由の一つは、FRBの利下げのスタートが予想以上に遅かったことです。アメリカのインフレ率は今年初めにはずいぶん低下していましたが、賃金上昇率が高止まりするなどインフレ再燃リスクが気になる状態だったことも
トランプ氏が次期米大統領に決まり、「トランプ・ラリー」という言葉通り、株式市場、金利、ドルがいずれも上昇しています。 しかし、これはトランプ氏の主張のうち良い方だけを取り上げた結果であって、バランスが悪いです。トランプ氏の主張の中には、アメリカ経済にとって不透明な要素があります。 まず、市場が期待している政策は、景気刺激的財政拡大です。典型的なものとしては所得税減税の継続や追加、企業減税、規制緩和による活動活発化が期待されています。 減税は企業には利益がある場合に、個人
11月1日に10月の米雇用統計が発表されました。 大型ハリケーンやストライキの影響は前もって予想されていましたが、実際には非農業部門の雇用者の増加数が市場の予想よりかなり低くなりました。 これは、アメリカの景気が減速する兆しに見えます。インフレ圧力も低下するとみられ、金利低下、ドル安要因です。 一方で、賃金上昇率は4パーセントと高めになりました。賃金が上昇するとインフレが持続しやすく、米連邦準備理事会(FRB)もなかなか金利を下げられない、ドル高要因となります。 指標発
10月27日の総選挙で与党が過半数割れとなりましたが、翌28日の日経平均株価は上昇、ドル円や長期金利は大きく動きませんでした。波乱がなかったことは少し意外でした。 今のところ、野党が特別国会までに結束するのは難しいとみられ、比較第1党の党首である石破茂首相の続投となる可能性が高いようです。前もって下がっていた日経平均がその分を取り戻した理由といえます。 しかし、まだしばらく市場心理は落ち着かないでしょう。これまで野党だったどの党が与党寄りになるのか、あるいは政策毎に対応を
アメリカはかなり政策金利を上げていましたが、米国の消費はその間も強く、最近まで大きく悪化していません。 その理由として、まず、リーマンショックのころと違って、消費者が大きな負債を背負っていないことがあります。借金で消費してきたのではないので、金利の上昇が大幅な負担となることが少ないとみられます。 また、住宅ローンの負担が増えるケースもあったかもしれませんが、コロナ禍対応の財政出動もあって雇用が伸びたので、一家の中で働く人の数が増えるなどの効果があり、金利上昇を乗り越えたよ
石破茂首相は衆議院を解散し10月27日に総選挙となりました。 経済政策についてそれほど大きな議論になっていないのは、石破政権が基本的に岸田政権の経済政策を引き継いだとみられるからです。これまで同様、日銀の政策に強い意見をいわないし、大幅な増減税を行わないでしょう。 ただし、石破政権が現状の議席数を維持する程度の大勝利となれば、石破首相の発言権が強まるのではないかと市場が気を揉むことになるでしょう。 石破首相は、岸田首相就任時と似た「石破ショック」を市場に発生させたように
10月4日に発表された9月の米雇用統計では、雇用者数増加や賃金上昇率が市場の予想よりも強く、長期金利は上昇し、ドル高になりました。 この動きは現在の米連邦準備理事会(FRB)の政策を決める委員の見方におおむね沿った内容で、FRBは今年11月、12月にそれぞれ0.25パーセント程度ずつ緩やかに政策金利を引き下げるという予想と整合的です。 市場が大きく動いたのは、もともと市場がFRBの示す以上に早いスピードでの政策金利引き下げを予想していて、それが変わったからです。景気後退を
そもそも株主還元とは何だろう?株主還元とは株式の発行会社が株主に報いることで、自社株買いもその一つです。会社が自分の会社の株を買うので、株価が上がって良いことに思えます。 そもそも自社株買いとは何なのか、きちんと分かっている人はそう多くはないのではないでしょうか。配当と似ているのですが、なぜ自社株買いをするのか、投資家としては喜ぶべきか悲しむべきか考えてみたいと思います。 まず、投資家は株主ですから、株主還元を喜ぶでしょう。株主は配当などの還元によりリターン(収益率)が上
9月27日に自民党の新総裁が石破茂氏に決まりました。アベノミクス継承を強く主張した高市早苗氏が一時優位に立ち、市場は低金利・円安・株高で反応しましたが、石破氏に決まってそれが崩れ、30日には円高・株安となりました。これは、石破ショックというより「高市氏と思って慌てて買ったら違った」というショックの部分が大きいです。 石破政権の政策は、当面岸田政権とあまり変わらないでしょう。石破氏が増税を主張していたとしても、総裁として支持された経緯などから、これまでの岸田政権の敷いたレール
イスラエルがガザ地区でのハマス攻撃に加え、隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに対する攻撃も開始し、中東での紛争は拡大傾向に見えます。しかし、原油価格は紛争拡大につれて上昇しているとは言えません。 原油市場は、心理的には中東の紛争拡大を気にしているのですが、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など産油国が産油施設に被害を受けたり輸出ルートを止められたりしない限り、石油価格の大幅な上昇で先進主要国の経済が悪影響を受ける可能性は低そうです。 原油価格はこのところ
米連邦準備理事会(FRB)は9月18日まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.5パーセント引き下げることを決定しました。 この引き下げ水準は、市場の直前予想におおむね合致しており、市場の反応はそれほど大きくありませんでした。FOMCに先立って一時1ドル=140円割れのドル安円高になっていたドル円市場はひとまず143円程度に戻りました。 FRBとしては、市場が景気後退を心配する気持ちにいったん寄り添ったかたちになり、そのおかげで、年末までの金利、ドル円相場
日本株がこのところご機嫌ななめです。理由は、 ①人工知能・半導体関連のリスクが高まった ②アメリカの景気後退リスクが高まった ③日本の消費回復がまだはっきりと見えていない などにあるとみます。 まず、アメリカの主要な半導体関連銘柄で構成する、通称「SOX指数」とも呼ばれる株価指数「フィラデルフィア半導体株指数」が不調です。PCに関わる半導体メーカーの収益が、アメリカの景気減速で改善しない恐れが強まっています。 これは人工知能関連ではなく、景気敏感銘柄なので嫌われてい
日本経済が本格的に回復する可能性が高まっています。注目しているのは、賃金上昇率がインフレ率を上回りそうということです。 リーマンショック以来、日本の輸出企業は生産量を減らしたのに人手を調整しなかったので、人余りで賃金を上げられず、現状維持のため新鋭の設備導入を先送りし設備投資を削り、結果としてお金が使われない状態でした。 このため、賃金が横ばい、設備投資が弱い、金利がマイナスとなっていました。コロナ禍に対応する各国政府の財政出動で、輸出環境が改善して初めて日本の輸出企業の
8月23日に米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が「政策を調整する時が来た」と発言したことで、いよいよ9月にも政策金利引き下げがスタートすることを改めて織り込み、為替市場は円高気味です。 といっても、従来から市場はおおむね9月からの利下げを予想してきました。しかも、実はパウエル発言から金利を下げるペースやその後の頻度が分かるわけではありません。これは今後の失業率など雇用関係の統計と、インフレ動向に左右されます。 ただし、今回のパウエル発言でわかったことは、FRBがこれ
日経平均株価やドル円相場の動きが大きく、何が起こっているのか見えにくくなっています。ここでは、「円高でも株高」の兆しが見えてきた点を指摘します。 7月初旬にアメリカの景気好調、金利高継続、ドル高継続という見方があり、日経平均も輸出関連中心に上昇しました。しかし、アメリカの好景気を維持するためには利下げが必要であるとの見方も強く、8月2日に発表された7月の米雇用統計で予想以上に失業率が高かったことをきっかけに、金利高・ドル高継続の見方はかなり弱まりました。 実際、8月にドル
日経平均株価が4万円を超えた3月初めから7月上旬までと3万5~6000円台になった現在とでは、何が変わったのでしょうか。この間に日米の経済そのものが変化したとは言えません。変化したのは、楽観から悲観への市場参加者の気分です。 まず、半導体、AI関連の成長期待が過剰投資の懸念に変わったことは、楽観の修正の一つです。 次に、7月の米雇用統計での失業率の上昇で、それまで米連邦準備理事会(FRB)の政策金利引き下げはゆっくりで良いと見ていた市場心理が、マイナス成長を避けるために利