はじまりの場所|そしてわたしは、紙をすきになる[第6話]
人生の分岐点は、その渦中にいるときには意外と気づかないものなのかもしれない。
何年か経って振り返ってみて初めて、あぁそういえばあそこだったなと分かるもの。
わたしにとっては、2015年8月がその分岐点だった。
大学3年生の夏休み、青春18きっぷを使って四国一周をした。
前年の夏の「手仕事を巡る旅」の反省を活かして、
①テーマを狭める
②本当に行きたいところはアポを取っておく
ことを決めた。
当時、手仕事の中でも興味のある分野が染織から紙漉きに移っている最中だったので、テーマを「紙」にして調べていくと高知に「かみこや」という民宿があると知った。
ここで、よく目にする「和紙作りの風景」である紙を漉くまでの工程を 初めて体験した。
木の皮を剥いで、叩いて柔らかくして、黒い外皮を取り除いて、細かく砕いて。
水を張って、ネリを入れて、紙の原料を拡散させて、ようやく紙漉きの工程にたどり着く。
木と水だけで紙ができていく様子を目の当たりにして、ただただ「すごい」と思った。
たった2つの原料から、本当に作れてしまうなんて。こんなに面倒な工程を、手作業で行う人がいるなんて。それが何百年と続いてきたなんて。
信じられない。
出来上がった紙を手にしたとき、「わたしはこれからもずっと、紙に関わって生きていくんだろうな」と感じた。
かみこやで知った和紙の工程や奥深さを存続させるために、何かしようと思った。一生をかけて少しずつでも伝えていこうと思った。
3年前の夏、かみこやに行ったこと。
人生を集約させる場所を「手仕事の紙」に定めたこと。
そこからわたしは、いろんな選択をしやすくなった。
和紙が、木と水だけで出来上がること。
それを実感する場所があったこと。
これが、わたしが紙をすきになった理由の1つです。
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こんにちは、kami/(かみひとえ)です。いただいたサポートは、「世界の紙を巡る旅」をまとめた本の出版費用に充てさせていただきます。今年の12月に発売できる…はず…!