歩いて、見て、触れる、歴史の旅。
https://www.jreast.co.jp/otona/tvcm/kofun.html
吉永小百合さんが現在も二〇〇〇基余りの古墳が残る、「古墳王国群馬」の中の一基の古墳に訪れるCMを観た。
キャッチコピーもさながら、現在群馬県に住んでいながら、知らなかった「古墳王国群馬」を調べてみると、住んでいるすぐ近くにも数基の古墳があることがわかった。
天神山古墳、別名男体山古墳と言われ、一五〇〇年以上前に築造され、その大きさは東日本最大と言われる。
月曜日の昼下がり、目立った観光案内板もない、一見ただの小高い丘のような古墳には人っ子一人おらず、古墳の周りを走る車道の脇に自転車を止め、その丘の頂上を目指した。
前日の雨で多少ぬかるんだ土の上にたっぷりと絨毯のような落ち葉が敷き詰められ、普段堅いコンクリートの上を歩く足裏に新鮮な心地よい弾力とクシャックシャッと落ち葉が破れる音に心はウキウキしていく。
昔、子供の頃に裏山に登って、秘密基地を作っていた場所のように、ただそこには自然が広がっており、何もないような場所に見えて、目を凝らすと、どんぐり、朽木、落とし物、想像もつかないところから色々なものが見えてくる。
小高い丘の頂上からは街が一望できるほどの高さではないが、十分に街を見下ろすことができ、目に見えない風を葉や枝が擦れる音を通して聴き、たった一人の観光客を自然は大歓迎してくれているように感じた。
電話が鳴った。
ずっとお世話になっている先輩からの電話で、最近書いたものが良かったと褒めてもらった。
歳が一〇個以上離れている先輩からは、仕事のこと、人生のこと、男として、たくさんのことを学ばせてもらっている。
東日本最大の古墳、男体山古墳の自然の雄大さに包まれながら、男としての大きい背中を見せてくれる先輩の声に励まされた。
歩いて、見て、触れた自然と、人の温もりによる美しさで胸がいっぱいになり、曇り空の切れ目から太陽の光が差し込むのを見て、ポトリポトリと塩っぱい雨が地面に滴り落ちていった。