「大怪獣のあとしまつ」を忘れたい

さてさて、あの特撮ファン達から非難轟轟であった作品がアマプラ無料配信に来て数ヶ月。
つい暇に任せて見てしまった。
見た事も無い作品をどうこう言うのはナンセンスなので今まで言及してはいなかったものの、これで大手をふって感想が言えるぞ。

ここからネガティヴ長文です。
不快に感じる方、要約するとどうなのよという方は、一番下まで飛ばして下さい。


(序盤から中盤)

飽くまでリアルな死骸処理をコメディタッチで描く作品である触れ込みの割に、世界観がメチャクチャじゃないか?
現実と地続きを感じない世界観で始まってしまった印象。
「特務隊(科特隊みたいなの)あるんだ……」ってなるし、初手からの庵野文字パロディもあれは架空の世界をリアルに感じさせる手腕があって初めて意味を成す演出であって、直後に差し込まれたデウス・エクス・マキナの文字と相まって「オタクこういうパロディ好きじゃない?」っていう制作側の安い思惑を裏読みしちゃうな。

そして一貫して政治家達がクソなんだけど、風刺の仕方が下品。
それだけなら一般聴衆のガス抜きになるのかもしれないが、この作品は国民も含めて無能で描かれている。
まともな奴の描かれない国、政府、組織。
いったい何処へ向けた作品なんだろう。
度を超えた無能さ、下品さが僅か30分で正直キツい。

メイン主人公らしいアラタ隊員も、性格は善性なんですが、指揮を任されたくせに現場にやたら出て行くし、非科学的な対応してるし、他組織と下手な揉め方するし、ここもやっぱり無能感が鼻について素直に応援する気持ちがわいてこない。


(中盤から終盤)

オダギリジョーさん演じる爆破屋が出てきてから、ダム爆破までの流れは若干映像作品として面白さがあった。
あったが、それをキノコネタに落とすのは如何か。いちいち下品だな。
これ以上オダジョーを特撮嫌いにさせないでくれ。

で、現場と指揮所の思惑や思想がズレたまま進み最後は主人公がウルトラ系巨人に変身してメデタシメデタシ。
そのまま落ちてない落ちでエンドテロップ。
投げっぱなしジャーマンがここまで綺麗に決まった映画も実に少ないだろう。


(感想)

まぁ、評判通りクソつまらないんだけど、それだけじゃ何だからどうつまらないかを考えてみたい。
まず前半戦からそうなんだけど、総じて登場人物がクソしかいない。
恐らくは、「特撮上の国家危機の時に右往左往する人物達のコメディ映画」というのがこの作品のメインテーマなのだろうが、右往左往の仕方がとにかく下品。
うんこちんちんで笑ってくれるのは小学校男子までか、酔っ払いだけだとご理解頂きたい。

そしてオチを含めての主人公。
最後にそれをやるなら、今までの行動は何だったのかがさっぱり分からない。
愛する人の側にいたかったのかも知れないが、仮にも人妻になってしまった後でソレされると不快感が勝る。
だったら、愛する人を危険に晒す前にさっさと潔く変身して去れよって思っちゃう。
そんなワケで善性の性格であり変身能力を持った主人公も、上記テーマにそって右往左往した結果とてもじゃないが応援対象とはならない。

最後に、致命的なのがプロモーション。
これがこの映画を殺した最大最悪のポイントだと言い切っても良い。
奴らは、何故か特撮ファンが反応するプロモーションを行なった。
致命的にほどがある。
そういった目線で見た時にどれほど期待とズレてつまらなく感じてしまうか。
この世界観とオチが、どれだけ愛する特撮作品への敬意を欠いていると感じてしまうか。
そこを予測出来なかったのだろうか。
きっと、出来なかったんだろう。
プロモーション担当はおそらく通常通りの邦画担当が務め、特撮ファンではない人なのだ。
だから分からない。
愛する作品群のフンドシに土俵まで借りて下品なコメディを作り、そこに愛を敬意を感じない作品を見せられたファン心理が予想出来なかったのだ。

要するに、この作品は、大人しく「この監督のいつものコメディ映画です。舞台装置として世界観はちょっといつもと違うけどね」くらいで宣伝しておれば良かったのだ。
あの作風が好きな監督のファンだけが見に行けばよかろう。
わざわざ、他の畑の人を呼び込まなくて良いのだ。
そうすれば、ひっそりとそういう邦画があったねと、ただそれだけで終わったのだ。

(最後に)

ひたすらネガティブな長文、お目汚しも良いところだが、分かりやすくまとめよう。

「特撮ファンは旧作100円レンタルでも見るな」


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