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デンマークの子ども政策から考える自己肯定感とか意見表明権とか

11月20日、参議院議員会館で開かれた「共同親権?! 子どもの権利・相談救済・親の責務」というシンポジウムに参加してきました。

メインのお話は、北欧の国デンマークの子どもオンブズマンについてと、今年5月に成立した改正民法で導入が決まった「共同親権」について。
前者はデンマーク大使館の担当官の方から、後者はこのイシューについて取材を重ね記事にしてきた東京新聞の記者の大野暢子さんからのプレゼンでした。


デンマークの子ども政策

デンマークには子どもの権利を守る機関がおもに3つある:

・子どもオンブズマン
・子ども評議会
・子どもの福祉ダイヤル

子どもオンブズマン(OMBUDSMAN)

オンブズマンは、国家権力が子どもの権利を侵害していないかどうか、子どもの意見がきちんと聞き入れられているかどうか、政府を監視する目的の組織。
2012年に導入され、いまはなんと120人もの職員が働いていて、自治体、学校、病院、児童養護施設など、子どもにかかるさまざまな場所にアクセスしている。

ちなみに、オンブズマンとは、スウェーデン語で「代弁者」を意味する言葉。
最近ジェンダーの観点から、たとえば"chairman"→"chairperson"と言い換える流れのなかで、「オンブズパーソン」と呼ぶ向きもあるけれど、スウェーデン語でこの単語は「両性名詞」という扱いらしいので、このまま「オンブズマン」を使いますね。

子ども評議会(BØRNE RÅDET)

国の政策が子どもの声を反映したものになっているかどうかをチェックする組織。
政治的経済的に中立の機関で、議会や政府に勧告したり、子どもに関連する法案の起草にも参加、NGOと連携することも。
心理カウンセラーや医師、弁護士など、子どもの最善について知識のあるスペシャリストがそろっている。

子どもホットライン(BØRNETELEFONEN)

前の2つと違って直接子どもとかかわる組織。
いわゆる公設チャイルドラインみたいなものなのかな。
この電話番号が書かれたポスターが、どの学校にも貼ってあるのだそう。

もし福祉ダイヤルに深刻な相談が来たら、オンブズマンに通報がいく。
それを受けたオンブズマンは具体的アクションを起こす。
たとえば、いじめであれば、抜き打ちでその学校を訪問することもある。
オンブズマンには法的な強制力はないのだけれど、オンブズマンの判定は社会的影響力が大きいので、この場合学校はすぐに動いて対応することになるのだとか。

日本における共同親権の課題

離婚後の夫と妻が、共同で親権を持つという制度。
日本ではこれまで単独親権制度でしたが、今年5月に共同親権を選べるよう民法が改正されました。

どの学校に進学するか、子どもが病気になったりケガをしたときの治療の方針やワクチンを受けさせるか否か、パスポートに取得にあたっての同意や、引っ越しや転校などなど……

これらを決めるのに、共同親権の場合、別れた相手と協議が必要になるわけですが、父母間で不一致があった場合は家庭裁判所が介入することになる。

導入議論のなかで問題となったのが、夫婦間にDVや虐待があった場合。
当事者からしたら、せっかく離婚できたのに、子どものことでまた関係を持たざるを得ないなんてとんでもない、って話です。

ここでまた対立したり、嫌がらせが起きたりしたらどうするのか。
その原因を、裁判所がきちんと見定めることができるのか。

そして一番大事なのが、子どもにとって最善の利益が守られるのかどうか、ということ。

報告者である、東京新聞の大野記者は「法案提出までの経緯を見れば『子の利益』ではなく『子との面会交流に不満を持つ別居親の利益』のために急がれた法制化だった」といいます。

当時の国会では、協議離婚のケースで不本意ながら「監護者を指定しない共同親権(共同監護)」に合意してしまった人の救済などが課題とされて、法的拘束力のある「付則」が盛り込まれました。ここでは詳細は割愛します。

デンマークの共同親権

最初は単独親権だったデンマークで、共同親権がデフォルトになったのは2007年。もとは日本と同様の懸念があったものの、いまとなっては単独親権は例外的だといいます。

なぜか?

面会交流は週のうちたとえば母4:父3といったようにかなり寛容な感じ。
気になる養育費だけれど、基準額が決められていて、収入にもよるが、最低でも月3万円、収入1000万円なら5万円(ここで会場「えーーーーーっ!!!」ってどよめく「少なすぎ!!」)

ただし!

  • 貧困率が違う(シングルマザーの貧困率が、日本で48%、デンマークで5%)

  • 労働環境が違う(デンマークでは同一労働同一賃金、経済的自立が可能)

  • 教育費が違う(デンマークは学費が無料、さらに学生には月15万円が支給される)

  • 養育費の建付けが違う(デンマークでは、養育費は優先債権。さらに支払われなかった場合は国による立替制度が整備。スマホでポチっといける。あとは国が相手方から取り立てる)

おまけ!

  • 結婚観が違う(例えば婚外子の割合が、日本2.29%、デンマークで54.2%。婚外子と嫡出子の差別解消:相続平等は何となんと1963年に実現!)

会場から「そんなに養育費が低いなんてひどくない?」と声が上がったけど、バックグラウンドを考えれば単なる金額の高低の問題ではないということですね。

そして、共同親権が成立する条件は、経済的にも、立場的にも、父母が対等なパートナーであった(ある)かどうか、だと思います。

さらに!

親権=親の権利ではありません、子どもがどう守られるかということを重視するプロセスです、だと。
本当にそうだよね。

子どもがその声を聞いてもらえているか

「デンマークでは子どもの意見をしっかり聞きます。保育園のころからです。遠足も、どこに行くかを決めるのは子どもたちで、川なのか森なのか山なのか、出てきた意見からみんなで決める。日本だと、修学旅行先は(日光とか京都とか)勝手に決まっていますよね、それはデンマークでは起こりえない」

最後の質疑応答で、デンマーク大使館の寺田担当官の言葉に、すべてが凝縮されていると思いました。

ああ、これだよね。
これからの日本に必要なのは。

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大磯町ではいま、国のこども基本法にもとづく「(仮称)こども計画」の策定を進めています。
この策定にあたっては、子どもの意見を聞くことが求められています。

子育て支援課の職員さんたちが、昼休みや放課後に学校現場に出向いて子どもたちから話を聞いてきてくれている、そのがんばる姿がうれしいし、頼もしい。

洋服はどれにする?
どのパンがいい?
冬休みにはどこに行こうか?

わたしたち一人一人も、日頃から、小さなことから、子どもの意見をまず聞くことを心がけていこう◎

その意見を聞き入れる努力をすることと、できない場合の納得のいく説明も忘れずにね◎

※話を聞き取ったメモとレジュメをもとにしたレポートです。正確性の保証はありません。

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