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半世紀の老いのはてに、愛する詩人に告ぐ。あなたはまちがっていた。
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私は雀たちに
夢も野心も悟りもなにも語らない
雀たちにであえたらただうれしいだけ
私たちは子供のころ
鳥が成層圏の彼方まで飛びつづけ
星になったお話を読んで
この世のやりきれなさを
高く高く飛び続けるしかないのかと
煩悶した
詩人の純粋さに心震わせながら
なぜそんな苦行を強いるのかと問うた
私はよたかのなきがらを
星にするのではなく
森の地面によこたえ
見つめてゆこうと
思索し覚悟した
半世紀をへて詩人に語るあなたはまちがっていましたと
星になったよたかではなく
地に伏すよたかに
わたしは語り続ける
お前の自死は美談なのか
欺瞞なのか
お前が虫の糞となり
腐敗しほこりとなり
世界から消滅しても
人々は神話にとらわれている
わたしは物語の本を投げ棄て
夜の森の深くにあゆむ
悟りをこばみ
お前たちの声に涙して果てるため