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法哲学

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法と哲学に関する思索。特に価値相対主義や功利主義を批判します。
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2023年9月の記事一覧

ヘイトスピーチ規制の法理

ヘイトスピーチ規制の法理

私はかねてから「ヘイトスピーチは個人のアイデンティティに対する権利の侵害」だと主張してきた(拙著「ヘイトスピーチに抗する人々」新日本出版社2014年、120頁以下)。 例えば、在日コリアンはヘイトに晒されるのを避けるために人目を避け民族名等自己のアイデンティティを秘して生活しなければならない。これは個人が「自分らしく生きる権利」を行使することを妨げる。

この点、横浜地裁川崎支部2016年仮処分決

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「法と道徳の分離」原則の射程

「法と道徳の分離」原則の射程

「法と道徳の分離」原則はリベラリズムの主張であるが、それは「道徳に反した行為は直ちに処罰されない」ということを意味するに過ぎない。 「法で処罰されない行為は道徳的にも許される」ことまでは意味しないし、そこまで言うのは「法と道徳の分離」原則に反し、道徳判断を国家に委ねる結果となる。

たとえば、米国は、ヘイトスピーチが処罰されない“自由の国”で知られるが、社会的にはヘイトスピーチは道徳的に厳しく批判

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