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第九200年!ウィーンフィル・ライヴビューイングが新春限定特別上映

 今年は、ベートーヴェン第9番交響曲「合唱付き」の初演から200年となる記念イヤーである。5月7日が記念日とのことだが、同日ウィーンフィルがムジークフェラインで特別公演を開催した。当然プラチナチケット。来年のニューイヤーコンサート指揮者として早々に指名されたウィーンフィルと縁深いリッカルド・ムーティが指揮したその模様が、年明け3日から1週間限定で全国映画館上映される。しかも日本でのみ。入手困難だった記念の演奏会が、高音質、大画面で鑑賞できるのは嬉しい。
 今年84歳となるウィーンフィル名誉会員であるムーティは、いまやすっかりクラシック界の大御所。初めてその存在を知ったのは75年のベームの来日公演での随行だった。まだ若々しくスカラ座の常任就任前で、当時の新進気鋭筆頭のひとりとして注目されていた。その後紆余曲折あって、現在に至っているが、指揮ぶりもすっかり落ち着き、威風堂々たるマエストロ・バトンテクニックである。
 独唱は、ユリア・クライター(ソプラノ)、マリアンヌ・クレバッサ(メゾソプラノ)、マイケル・スパイアズ(テノール)、ギュンター・グロイスベック(バス)の四人。とりわけ数々のオペラ公演でその名演を称揚されることの多いギュンター・グロイスベックのバスが圧倒感に満ちて、その歌声の力強さが楽曲のイメージとも合致して、心打たれる。
 近時すっかり定着した感のあるライヴビューイングは、約20年前の劇団⭐︎新感線の公演が嚆矢だったように記憶している。当時、やはりチケット入手困難な舞台を劇場で映画のようにして鑑賞できるということで、一部には好感されたが、個人的には実際の舞台のライブ感と映像での代替鑑賞は別物、という違和感が強かった。しかし、考えてみれば、クラシックの演奏会や落語会の多くは、ほとんどテレビ鑑賞で十分満足していたわけだし、そもそも野球や大相撲その他のスポーツ、格技等々すべからく生放送というライヴビューイングだった。ことさら別物扱いする必要などなかったのだが、積極的には主に松竹が主導したシネマ歌舞伎、METライヴビューイングには足を運ばずに来た。恥ずかしながら自分の中で、どう線引きしているのか、いまひとつ明確でない。こう書きながら、何度もその恩恵に浴してきたことを、そう言えばとあれこれ指折り数えてしまう。ライヴ拒否して録音に注力したグレン・グールドを崇拝していたではないか、という内心の声も聞こえて来る。あれこれ言わず、まずは鑑賞。年初の特別上映に先立ち、大晦日12月31日には、東劇・新宿ピカデリー、ミッドランドスクエア シネマで特別先行上映も実施される予定とのこと。
 ムジークフェラインの柔らかに大きく包まれるような響きとは異なりはするが、高音質、大画面の好環境でベートーヴェン第9番交響曲「合唱付き」を体感し、200年の時空に思いを馳せる迎春をお薦めしたい。
以下は、その予告映像。
https://youtu.be/q2opd-xeF78?feature=shared


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