足立紳版『スタンド・バイ・ミー』、映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』レビュー
足立紳版『スタンド・バイ・ミー』、そのひと言に尽きる一本。既視感満載、内実ステレオタイプ、結末予定調和の仕上がりながら、子どもたちの生硬とさえ評したくなる立ち居振る舞いが、かえってリアルを生み出し、深く胸に沁みいって来る。原作の『弱虫日記』を足立紳自身で映画の尺に納めるべく色付けして、説得力豊かにまとめている。
自己嫌悪に苦しむ語り手である主人公と、彼の牽引役となり仲間たちの中心を担う友人の普通の子になりたいとの切望とが鮮やかに対比され、リーダーの涙の心情吐露は、原作同様、深いところで胸揺さぶられる。『弱虫日記』とした原作を、映像として具現化するにあたり『雑魚どもよ、大志を抱け』と変容させたあたりにも、今こそ子どもたちに語りたい、求めたいという足立紳の強いメッセージを感じる。
女子なら『若草物語』、男子はスティーヴン・キングという王道を地でいく作品。ありきたりの中にこそ、人生のマスターキーが存している。欲を言えば原作通り、鳥取を舞台に映画化して欲しかった。
夏休みの一本として家族鑑賞をお薦めしたい。