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岩波ホールラストチョイス『歩いて見た世界-ブルース・チャトウィンの足跡』レビュー
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ヴェルナー・ヘルツォーク監督による紀行作家ブルース・チャトウィンのドキュメンタリー。閉館となる岩波ホール、最後の作品としてチョイスされた理由納得の巨匠名人芸と評されるべき佳品。早世した偉大な紀行作家の足跡を、残された肉声や関係者の証言でたどるヘルツォーク監督の哀惜感が、岩波ホールを喪う思いと重なって、特異な抒情のうちに経過する90分となった。監督にとっては本意でないだろうけれど、岩波ホールの観客の多くが、同じような思いを共有したのではなかったろうか。本編上映前に、閉館告知のアナウンスが流れ、ホールの細部の映像が流れるのだから、涙を堪えるのが精一杯。中盤のアボリジニの章で再現される老師の歌声というか神への呼びかけには重なるものが多く、陶然とするばかりだった。
最後になった今日の座席はA10。岩波ホールではいつも最前列と決めていた。エンドロールが終わり場内が明るくなってもすぐに席をたたなかったのは、ぼくひとりだけではなかった。
ありがとう岩波ホール。さようなら。評価点には、かかる思いも加点されてます。諒とされたし。