【軽羹読書録】斜陽
御機嫌よう。kalkanです。
分かりづらいのですが、今回からヘッダーの画像のフォントを少し変更しました。
ええ、元データを無くしたからです。
そしてどのフォントを使っていたかメモするのを忘れていたという失態。
手帳とノート好きで、いつも余計なことまでメモしているくせに、こういうときにメモしないという。
そんなことはどうでもよくて、今回は太宰の「斜陽」を読みました。
それではお好きなお茶と軽羹饅頭を片手に、是非お付き合いいただければ幸いです。
【あらすじ】
直治が南方から帰って来て、私たちの本当の地獄がはじまった。
〝斜陽族〞という言葉を生んだ名作。没落貴族の家庭を舞台に麻薬中毒で自滅していく直治など四人の人物による滅びの交響楽が静かに始まる。
破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため"生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、最後の貴婦人である母、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、“斜陽族"という言葉を生んだ太宰文学の代表作。
【読書感想録】
解説が角田光代さんだったのですが、非常に共感を覚えました。(勝手に)
この小説はいまの私が読んだから刺さるものがあったんだと思う。
もしこれが10代だったらば、「大好きなお母さんが亡くなって、唯一の肉親である弟も亡くなって独りぼっちになった女性が強く生きようと決心する哀しい話」で終わっていたと思う。
「恋という革命」
強いワードだよなあ。
三島由紀夫の「夏子の冒険」の主人公である夏子が言いそうなワードだなと思ったけれど、考えてみたら「斜陽」の主人公である「かず子」も似たような性格だよなとふと思った。(これについてはまた改めて書こうと思う。)
革命を起こして、それが世間的には歪んだ形であれ「恋が成就した」かず子。
革命を起こさず、自らのプライドを守り通して「恋が成就しなかった」直治。
最後の直治の手記によって、今までのイメージがぐらぐらと崩れ落ちていった。
なんだか太宰の心のうちを聞かされているようで。
それでいて自分の常日頃から思っている、だけど口に出せないモヤモヤとした何かを代弁してくれているようで。
ひどく切なくてやる瀬なくて。
何度も同じ個所を読んでは戻って、を繰り返してしまった。
やはり太宰の描く女性目線の作品が好きだなあと改めて感じた。
恋も愛も知らず、世間知らずなかず子を、太宰は何をモチーフにして作り上げたのだろうか。
正直、かず子にはイライラしっぱなしだったというのが本音。
自分の欲に素直なことは否定しないけれど、だけどあまりにも常識知らずすぎて、ハラハラどころか呆れてしまう。
どうやったらこれだけリアルな女性になりきることが出来るのだろう。
改めて太宰のセンスに感動した。
折に触れて読み返したいと思う作品はいくつかあるけれど、これもまたその作品の一つになったのは確実。
また数年後、スウプを上品に召し上がるお母さまと、恋の革命に走るかず子と、貴族に対するまっすぐな精神を持った直治に会いたいと思う。
それでは本日はここまで。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。
またお会いしましょう。kalkanでした。
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