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北海道ツーリング11日目|2022.7.23

今日は1日中雨である。
それまでの1㍉程度の雨ではない。そう、バイクでは1㍉程度であれば降ってないと同じである。もちろんレインウェアは着るが雨への抵抗感はない。

しかし今日はところによっては3㍉から5㍉の雨にも遭遇するだろう。
 3㍉の雨となると話が変わってくる。ヘルメットに当たる雨音が強くなり、レインウェアを着ていても裾や袖口から雨水がじっとりと侵入してくる。
 そしてひとつ問題があった。
先日旭川から再び稚内に向けた北帰行の際、ブーツ用のレインカバーが破損した。購入してして5年目。こういうのはなぜか肝心の北海道ツーリングの際にダメになるのである。試される大地なのだ。

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 一応トレッキングシューズはウォータープルーフと謳っているが、まあ濡れるだろう。靴の中が濡れるのだけは避けたがったが致し方ない。覚悟を決める。

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今日は捨てる日である。

今日のルートは明日が帯広一体が晴れという一筋の希望ある予報を信じて、滝川から富良野を通って帯広に向かう。たった3時間だが道中には北海道の南部を東西に分つ日高山脈が待ち受けている。
 雨の中、高速道路を使用する選択もあるが、走行中にGoProがモゲたり、荷崩れや浸水などがあってもその場で停車できることができないため、リスクを避けて高速道路を使用するのは止めた。
ということで雨中の狩勝峠越えにすることにした。

 狩勝峠から見下ろす十勝の風景は古くから新日本八景として知られている絶景であると聞く。が、今まで一度も晴天で狩勝峠を通ったことがない。

 雨中の移動だけのために朝イチでホテルから出発する理由はない。
チェックアウトギリギリの10:00までのんびりと部屋で過ごし、バイクの荷造りを始める。

するとホテルのスタッフからブログに載せるのでバイクの写真を撮らせて欲しいと話しかけられた。
 ここホテル三浦華園は創業120年の老舗ホテルだったらしく(すみません特に調べもせずに予約取るもんで)、バイクの人にもこのホテルは人気なんだとか。
 たしかに駐車スペースに屋根があるのはバイクには便利である。
松尾ジンギスカンも近いし、道央の拠点としてもおすすめである(旅行ガイドっぽい)

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 さて、今日は雨のために帯広までただ走るだけである。ツーリングなんてものではなく、ただの移動である。
 富良野を通過しても狩勝峠を越えても絶景は拝めない。

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 ただただ雨を全身に浴びながら前に進むだけである。正直苦痛である。雨の不快さに景色のつまらなさと苦痛が続くと内省的な気持ちになる。ずっと夜が続く極北でソリを引きながら旅した角幡唯介の『極夜行』(文春文庫)では、景色のない中で紡がれていく彼の言葉のほとんどが自己の内面との対話と愚痴、そして食事のことである。
 某登山専門誌の編集者と話をした際、彼もまた登山家に名文家が多いのは苦痛と重力に抗うことで内面から本当の言葉が溢れ出てくるからだろうと語っていた。

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 つまりそういうことだ。
辛い時、人は過去を振り返り今の現実を少しでも頭から遠ざけるのだ。

ということで「移動中」の僕はバイクツーリングの思い出を振り返っていた。

 バイクの免許(当時は中型二輪)を取ったのは19歳であった。それまでバイクに興味があるわけでなく、普通免許も持ってなかった僕はクラッチの役割も知らないまま教習所の門を叩いた(教習所の門は叩いても意味はない)。ただ生活の“足”が欲しかったわけだが、せっかくだから原付でなく普通のバイクに乗れたらいいなという軽い気持ちであった。

 倒れたバイクの引き起こし、取り回しなど400ccの教習車が恐ろしく巨大で重かった。またがって走り出すと恐ろしくてステップに置いた足がガクガクと震えた。
 二輪教習は僕にとって苦痛であった。
次の予約までの日が憂鬱で仕方がなかった。外に目を向ければそれまで意識したことのなかったバイクが目に入り、スイスイと走って行く。年配の女性がブイーンと原付を乗り回す姿ですら羨ましく見えた。

 しかし教習所に入ってしまえばいつかは免許が取れるのである。苦痛でしかなかった二輪教習も終わり、晴れて運転免許保持者となったのだ。
 そして初めて買ったバイクはホンダのCBR250RR。たしか1万㌔走行で38万円くらいだったと思う。
 怖くて近所をふらふらと走るしかなく、どこかへ出かけるとしても10分程度のバイト先の本屋への往復くらいであった。

しかし友人も同時期に二輪免許を取ったということで、ツーリングが決まった。それがいきなりの北海道である。
 僕の母は北海道出身で親戚が道内にいるので宿泊先は問題なかった。
 結局、友人二人と僕の3人で北海道ツーリングに出かけることになるのだが、僕が250cc、一人が150cc、もう一人が50cc(スクーター)という凸凹な構成であった。

 大洗からフェリーで北海道に渡る予定であったが、当時は北関東道など影も形もなく、自宅からフェリーターミナルまで片道で3時間(50ccもいるので)はかかった。
 もちろんそれまで自転車しか乗ったことがない我々は距離と時間の間隔なんて身についていなかったので、実際に大洗までの所要時間がどのくらいかかるのがその時は未知数であった。

だから所要時間を知るために出発前に一度予行演習で大洗までのツーリングをすることにした。

23:00出航の深夜便に乗る予定であったので、夜間走行を想定して19:00に出発した。
今では車で10分の近所である交差点も、この時はかなり遠くへ来たものだと思った。自転車からエンジン付きの乗り物に乗り換えるとその「遠く」へ簡単にいくことができたのだ。

自分の行動半径を押し広げていく感覚。
未知から既知の景色へと塗り替えていく快感。
 
 そんなバイクの魅力に気づいたのは北海道に上陸する前の予行練習のたった数時間のツーリングだったのである。

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というようなことを考えながら狩勝峠は深い霧の中気温16℃で寒さに震え、晴れていたら気持ちが良さそうな帯広の直線道路を恨めしく撮影。
 ブーツカバーをつけなかった靴はというと、歩くたびにグチョグチョと不快な感覚がつま先に伝わり、案の定である。

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14:00には市内のホテルにチェックイン。

 滝川から帯広まで、すれ違ったバイクは4台だけであった。
 今日は食事も繰り出さず、ホテル内で仕事をすることにして、濡れた衣服などを乾かすことに専念した。ホテル近所のテイクアウトで豚丼を持ち帰り、今日初の食事を済ます。
17:00くらいにベッドでウトウトして寝てしまい、気づいたら22:00だった。まあ、今日は休息日。
そして明日は晴れ予報(たぶん)。
ここから1時間の距離にはナイタイ高原牧場があるのだ。先日スルーしたナイタイ高原へ。
 人生初のナイタイ高原は晴天で満喫できるという期待を胸にして帯広に来たワケである。
 未知の場所を既知の場所へと塗り替える快感が明日には待っている。

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本日のルート

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2022年7月13日〜26日の期間中 北海道ソロキャンプツーリング中にアップした日記です。

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