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発売前に"ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け"のレビューをしてみる

こんにちは定期的にnoteを書いていきたいなと思いつつ、なかなかまとまらないので年一回でいいやと思っている角刈書店のふわふわです。今年はもう2回目なので2021年の分だと思って読んでいただけるとありがたいです!

少し前にこんなツイートを見かけました。

これは....?もしや...?

出出出〜〜〜買ってから一年以内に翻訳でちゃうや〜〜〜つ〜〜〜!!
翻訳本出るの良いですよね。アクセスし易くなるし。でも翻訳しながら読んでたりする人にとってはちょっとショックだったりしますよね。まさに自分のことなんですけど

言うて上杉さんのツイートをみてから即座にポチった私には死角などない。一年も経てば読み終わると思うじゃないですか。ほぼ読み終わってるのですが、まだちょっと残ってるんですよね。今日時点で461ページ中234ページまで読んでいます。四捨五入すると100%ですね。

というわけで半分しか読み終わってないけど、この本の構成と使い方を完全に理解したので軽くレビューしてみたいと思います。もしも読んだ後に買うの辞めようと思ったら、読み終わってない人間のレビューなのでこれを理由に買うのをやめるのは良くないと思います!読んだ上で求めてるのと違うなと思ったら別に良いか。

どんな本か?

原題をBuilding Blocks of Tabletop Game Design: An Encyclopedia of Mechanismと言います。直訳するとテーブルトップゲーム(アナログゲーム)デザインの構成要素:メカニズムの百科事典というタイトルですね。アナログゲームを構成する要素についてカテゴリー毎にメカニクスを分けて説明しています。

それは例えばゲームの構造についてどのような構造が存在して、どんなゲームがあるのか?どんなメリットデメリットがあるのか?デメリットに対してこんなアプローチをとったゲームがあるよ、などを百科事典のように記載しています。各メカニズムについて項目、簡単な説明、詳細な説明、そしてサンプルゲーム一覧が載っています。

例えば協力ゲームでAlpha Player Problemがしばしば話題にあがる思うのですが、それについてちょっとした議論が記載されていました。
ちなみにAlpha Player Problemとは"奉行問題"とも呼ばれる1人のプレイヤーが他の人の行動にも指示を出してネガティブなプレイ体験にしてしまう問題の事ですね。Alpha Player Problemのほうが呼び名としてクールなので自分はこっちを率先して使っていくことにしました。
Alpha Player Problemはヤベェ人と卓を囲うことが問題なのか?それとも構造的な問題やデザインの問題もあるのではないか?会話を制限して対策を入れてるゲームもあるよ。他にも情報の非対称性を利用して奉行が生まれないよういしてるゲームもあるよ。さらには時間制限をいれて奉行してる余裕なんで生まれないようにしてるゲームもあるよ等のメカニクスの定義だけではなくメカニクスの理解を深めさせてくれるような事が書いてあったり、なかったりします。
*メカニクスごとに文章量が多かったり少なかったりするので読みたいと思うような記述があるかはメカニクスによります。

知らないメカニクスについて学べるというよりか、知っているメカニクスについても良い点、注意したいところなどについて調べるのに使うのがこの本の正しい使い方な気がしています。

ゲームデザインをしてる最中に何かしらの問題にぶつかったときに、"こういう感じのメカニクスを使ってる他のゲームはどうなってんだろう?"と思う瞬間がある人にとってこの本は強くオススメできると思います。他のゲームではこうしているよ!というのが説明されていると理解しやすいですし、ボードゲーム一個分程度の値段でプレイしていないゲームに関しても本を通して学べるのはありがたいですね!

「すべてのゲームデザイナーのための」って本当?

これは帯の煽り文言なのですが、ちょっと誇張していると思います。元々のタイトルはBuilding Blocks of Tabletop Game Designなので"テーブルトップゲームの構成要素"となります。つまりアナログゲームの話なんですよね。

言葉じりにこだわりすぎているかもしれないのですが、ゲームデザイナーはアナログゲーム作る人だけではなくてデジタルゲームを作る人も存在するわけですが、この本は基本的にアナログゲームのデザインに関することが主題です。ほんの少しデジタルゲームが出てくることがありますが、全体から見るとごく一部です。

「すべてのゲームデザイナー」というのは言い過ぎで「すべてのアナログゲームデザイナー」の方が正確だなと思いました。タイトルもアナログゲームメカニクスで良いと思いますが、文字数の関係で削られているのですかね。

あまり好きじゃないところ

私はチャプター1から順番に読んでいるのですが、百科事典なので全ての項目を読むのは全然面白くないなと感じています。百科事典は気になる項目をひいて読みますよね。そこで目に止まった項目を見たりもしますが、百科事典を持っているからと言って最初から最後の項目まで読む人は少ないんじゃないかと思っています。

この本の正しい読み方はおそらく興味のある・調べたい項目を見つけて読んでいくことなのですが項目から「読まなくて良い」を判断するのは結構難しいですね。項目を読み、項目の定義を読むとかなりわかると思うのですが、定義を読んで「別に読まなくても良いかな〜」と思ったものであっても実際詳細な記述を読むと面白かったりするから困る。その逆も然り。

自分は頭から読んでいますが、前のチャプターの内容を踏まえて後半が書かれているかというとそういうことはあまりなく、なんなら前半のチャプターに後半で触れる内容について書かれていたりもします。

本の頭から順番に読んでも「いま何故これを読んでいるんだっけ?」となるメカニクスとかも人によっては存在するんじゃないかなと思います。自分の場合はウォーゲームでよく使われるメカニクスなどがそれに当たりましたね。そもそもそのメカニクスも知らなくて実際に使う場面を想像できないと興味が薄れてしまい、実際使っているところを説明されても「なるほど.....で?」となってしまったりしていました。そういう章を読むとだんだん辛くなっていきますね。

サンプルゲームがメカニクス毎に載っていて、プレイしたことがあるゲームが載っていると理解を大きく手助けしてくれるのですが、日本人には馴染みがないゲームも結構ありますね。ワンナイト人狼やラブレター等も載ってましたが、基本的には北米で購入可能なゲームしかサンプルゲーム一覧には載っていないような気がします。日本で買えるゲームだとこれもそうだよね?みたいなゲームのリストあると便利なんですけどね。作れば良いじゃないって?いや大変なんで...(すいません...)

自分は本を購入した時点で目次に書いてあるメカニクスの定義が明確に理解できていなかったので、メカニクスに対して理解を深めるべく全部読んでいます。これ読まなくても生きていけたわ〜っていう部分も結構ありましたが、面白い部分もありました。実際に使うときはおそらく「そういえばコレについて書いてあったな〜」と思いながら百科事典のように索引から調べて読み直すのではないかなと思っています。

どんな人がこの本を買ってよかったと思うのか

この本を読んだだけでは「アナログゲームのメカニクス完全理解した」とは言えないとおもいます。本の最初の部分にも全てのメカニクスを網羅した本ではないと明確に記載されていました。

アナログゲームのメカニクスに興味があり、何冊か読む中の一つとして読む方には強く薦めたいなと思います。他の本で出てきた内容の理解を深めたり、これまで遊んだゲームについての理解を深めさせてくれるのにとても良い本です。

ですが、一冊で基本を学びたいとか、ゲームデザインってなんだろう?という疑問の解決をするために一冊目に読む本ではないなと読み進めていくと感じることがありますね。

ただし、メカニクスの情報を整理したり、知っているメカニクスのメリットデメリットの言語化、ゲームのメカニクスを他のデザイナーと話すときに使えるツールとしては非常に優秀だと思います。メカニクスについて学ぶとゲームをプレイしながら「この話本で読んで確かにこういう問題あるよね〜」みたいな気持ちになったりしてゲームプレイした際の学習効率が上った気分になります。実際に上がったのかは不明ですね。

なのでどんな人にこの本を勧めるかというと以下の条件に当てはまる人に勧められるな〜と思いました。

1. アナログゲームのゲームデザインに興味がある
2. アナログゲームデザインの本を読んでおり他に読む本を探してる

最後に

読んでる途中は少し懐疑的な気持ちだった時期もありますが、読み進めた今では、この本を買って良かったと思っています。読んでいなければ知らなかったこと、あまりよく咀嚼できなかったであろうメカニズムもあったと思います。

この本があったから完成することが出来たゲームは今の所ありません!

ここまで読んでくださりありがとうございます!もしもゲームデザインに興味あるけどこの本が自分にあってるか微妙だなと思った方がいたら心配無用です!世の中には「約束されたオススメ本のリスト」が既に存在するのでそっちのほうオススメです!

最後になりますが、本を読んでもゲームができるわけではないと思っています。とあるボードゲーム 製作者の上杉さんがポッドキャストで「作るのが一番の勉強ですよね」とさらっと名言を放ち号泣したことを思い出しました。

しかしながら、ゲームができないから本を読む意味が無いとは全く思っていません。ゲームを作る上で便利な道具、ゲームのクオリティを上げるアセットを提供してくれるのが現在出版されている、そしてこれから出版される本の意義ではないでしょうか?

ゲームを作って、遊んで、勉強する、そして遊ぶサイクルを回すと良い学習になると信じて今日もゲームをプレイしたいと思います。

....アレ....もしかしてワイ...上杉さんが勧めた本とかポッドキャストしか聞いてない...?手のひらで踊らされてる....?まぁいっか(思考放棄

(上杉さんリンク貼りまくってしまってごめんなさい)
(上杉さんはめちゃめちゃすごいゲームデザイナーなのでゲームデザインに興味ある人はフォロー推奨)

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