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ビカクシダを、腰水、水なしで育てた場合の成長速度を比較した

ビカクシダは水耕が可能

水苔だろうと、ベラボンだろうと、ハイドロボールだろうと
それらなしで、ダイレクトに根を水に沈めっぱなしにしようと
枯れたりしない

ググって出てくる情報として

  • 水に沈め続けると根腐れする

  • 水耕栽培は液肥が必要

などがあるけど、これらはデマ

被子植物など、シダと異なる植物の
しかも、安全側に倒した教科書を

筆者自身が一次体験で検証せず
こたつでコピペしただけのウソにすぎない


ビカクシダは乾燥にも強い

以前、1週間水なしでも元気だった
と書いたけど

複数の品種で実験を続けた結果
10cm未満の小さな株だろうと
2週間、3週間目に突入しても枯れない

大株なら、真夏の屋外で水なしでも枯れない

ビカクシダが乾燥に弱いという情報は
デマだと断言できる

コケやシダは乾燥に弱いだろう
という先入観で、昔の誰かが書いたデマが
再検証なしで広まったのかもしれない

ダイヤモンドがトンカチで割れるか
という実験みたいなもので

株数が有り余ってる人以外、実験しようとしないから?


まず、湿潤のほうからエビデンスを示す

この株は1年以上、腰水につけっぱなし

水苔は1回も交換してない

ハイポニカもハイポネックスもなしで
水が減っては、水道水を補充するだけ

水の流れもなし

風もなし

白いカビが生えても
緑色のスライム(アオコ、シアノバクテリア)が生えても、放置

植物ライトを深夜以外に当ててるけど
メインの株の背景として
中心から離れた位置で、ついでに受けてるだけ

最初は2cmくらいだったけど
2ヶ月に1枚くらいのペースで胞子葉が世代交代し
だんだん大きくなってる


つまり、ビカクシダは腰水での放置が可能

ビカクシダ栽培での、毎日の世話……
厳密すぎるマニュアルの、ほとんどは不要といえる

ただし、この栽培方向には
1点だけ注意点があり、そこだけ気をつけないと株が枯れる

マイナーな実験なのか、その注意点について書かれた
既存の情報を見たことがない

注意する対象は、上の写真にも写ってる

中心付近に生えた小さい胞子葉のうち、1番右……!

黒く覆われてる


これは黒カビ

単なるカビだけど、トリコームの多い品種では
出始めた葉での密度がスゴイから
毛同士をカビが接着しちゃって

毛を離さないようにする抵抗力によって
葉が膨らむことができず、真っ黒になって枯れる

ただ、葉の根元まで真っ黒になるのは
アポトーシスによって自爆したためであり
根元まで黒カビが広がったわけではない

ほか、ややこしいのは
トリコームは光や水を当てると、白く写るけど
実際は細い茶色であり
密集した状態では、茶色く見えるのが自然ということ

それはカビではない


ビカクシダや水苔に、カビが生えることがあるけど

黒カビはクラドスポリウム属と考えられ、上記以外の害はない

白カビはビカクシダ本体でなく
水苔に生えるけど、ペニシリウム属と考えられ、大した害はない

野菜の場合は、白カビといえば「うどんこ病」を疑うけど
水苔に生える白カビは、明らかに違う


成長済みのビカクシダの葉に
黒い斑点があったら、「炭疽病」と考えられるけど

この写真の場合は、自然治癒して
ほかの葉に広がってないので、明らかに違う

中央の緑っぽい葉が、最も新しい

葉の先端が黒くなってないし
このまま成長してくはず

写真には、この葉からみて
1つ前の葉(黒くなって枯れたもの)
2つ前の葉(中央やや左で、葉の先が黒くなってるもの)
それらより昔の葉(左右に開いて大きくなってるもの)
が写ってる

2つ前の葉が、黒カビによって成長が止まり
1つ前の葉を出したが、同じく夏だったので
黒カビの勢いが勝って

植物自身がその葉を打ち切って
いまの葉でリベンジしたら成功した、って歴史

株が健康なら、そうやって
根や既存の葉にキープしたエネルギーで
新しい葉を出せるから

既存の葉が枯れ終わるほどの期間
何連敗もしない限り、黒カビは問題にならない

いちおう、2つ前の葉の時点で
黒い部分を爪で削り取ってれば、その葉は成長し続けたはず

でも、それだと順調すぎてつまらないし
知識が貯まらないから、基本的に放置してる


腰水の2例目

トリコームの少ない品種だけど
生え始めの葉は密度が濃いので、トリコームを目視可能

茶色い部分は正常だけど
黒いカピカピができ始めてて、カビにやられ始めのタイミング

に書いたけど
ビカクシダには、株が大きくなるほど
葉の成長スピードも速くなる法則があり

それは生え始めの時点で、すでに速いので
こういう5mmから2cmくらいの期間は、2日くらいで過ぎてしまい
黒カビが覆う前に葉が膨らんで、それらを弾き飛ばす

この写真くらいのサイズだと
カビからの安全圏(水苔から2cmくらい上の空中)まで
葉が脱出できるまでに、2週くらい掛かる

なので、カビにつかまってしまうわけだけど
慣れれば後付けの対処で、どうとでも辻褄は合う


写真の水苔の上に載ってるのは
マグァンプKの粒

液肥でなく、固形の肥料を
水につけっぱなしにすれば液肥みたいなものでは

という実験をした

結果、マグァンプKは水やりの時に
水を掛ける程度では溶けず、白いまま

これくらい湿度100%を保つと
茶色く変色し、周りの水苔だけを緑にしてく

ビカクシダの前葉体は、この養分が好きなようで
肥料焼けなどしないし

そこから自動的に胞子葉が出てくるので
受精の邪魔もしないし、胞子葉の成長も速い

液肥だと、吸収や蒸発で水面が下がり
現在の濃度が不明なまま、注ぎ足す必要があり
厳密に測ることに意味がない、という気持ち悪さがある

水道水の腰水にマグァンプK置きっぱなし
は、シンプルでありだという結論


次に乾燥のほうからエビデンスを示す

3週間、いっさい水やりなしで放置した株を、5例

成長点の表面が乾燥しきってるけど、枯れない

1週経過くらいから
ワラジムシが鉢の外に逃げ出し始める

(写真の手前に写ってる)

ワラジムシは水を好むので
水没作戦で駆除しきれないケースが最悪
(小さい個体は1mmくらいなので、静止してると見えない)

そこからの繁殖ペースがヤバくて
元の数に戻るので、乾燥作戦が良い


この写真でも、ワラジムシが逃げ出してる

茶色い葉は、乾燥のせいで枯れたわけでなく
古くて元々枯れてたもの
(私は枯れた葉を、人為的に処分しない)

胞子葉にシワが入り始めてるけど
まだ1週は行けそう

西日の暑さ、夜の寒さが当たるカーテンなしの窓辺で
けっこう過酷なはずだけど

この株は、3cmくらいのときから1年以上
この場所にいたので
耐える葉に置換され終わってて、ビクともしない


葉が、くたーって寝た状態になってく

葉脈?が浮き出て
触れると、ふにゃふにゃ

体液が不足してるのか、テンションを保ててない

古い葉の先ほど、水分が切れて
新しい葉に水分を集中させる本能があるっぽい

水苔はカラッカラで水分0

軽すぎて、空のプレステラを持ってるような錯覚


これも水断ちの日数は同じだけど
株が大きいぶん、しおれるのが遅い

胞子葉が出始めてるけど
こんな乾燥してちゃどうせ無理だー、みたいに
自滅させるような本能はないみたい

これくらいの乾燥は、自生では日常茶飯事で
耐えた先にある雨につなぐため
未来への布石を捨てるような進化をしてないのだろう

ビカクシダに限らない話だけど
園芸関連のサイトでよく見る信仰として
「植物は、原産地の環境を再現するのが良い」
という俗説がある

書いてる人からは
砂漠も熱帯雨林も行ったことない、耳年増なオーラがする

乾季とか雨季とか、スコールとか、夜間の気温とか
たぶん調べて、理想の育成方法を予想したのだろうけど
前提の時点で誤ってる

原産地の環境を再現すると
少なくとも枯れにくい、というだけで

最大サイズの株、最速の成長スピード、株の健康
などを期待するなら、原産地より恵まれた環境を用意するべき


砂漠の植物は、砂漠以外を知らず
自ら出ていけないから、仕方なく砂漠にいるんであって

砂漠以外に移動したほうが、成長スピードが速い

少ない水に対応できる、というだけで
水が多すぎても枯れないし、巨大化したりする

ビカクシダも同じで
乾燥に強いけど、乾燥が好きなわけじゃない

スコールは、時計のように正確なわけじゃないし
何日も雨が降らない、やまない運だってあって
日本と大して変わらない

海外の天気は、日本に聞こえてくる定型から100%狂わず
毎日再現し続けてるわけじゃない

だから、水やりと乾燥を
狂いなく繰り返して育ってきたビカクシダなんて
自生にもいない

蒸れが良くないと書かれてるケースもあるけど
シンガポールや台湾のビカクシダは
スコールの後で、モヤができるほど蒸れまくってた

たまたま無風で、何日も濡れっぱなしの個体だっているけど
それでも屋外というだけで有利で、枯れないものなのです


日本でも、屋外ならビカクシダは
現地と変わらない育て方で、充分に育つ

北陸の屋外でも、冬以外なら育つくらい
ビカクシダは強い

都市部の屋内で育てたい人で
太陽光による殺菌が、どれほど嬉しく恩恵のあるものなのか
理解してない人たちが、ビカクシダについて
エビデンス不足の、おかしなマニュアルを書いてきた気がする

太陽光がないことが、ほとんどの不調の原因なのに
太陽光以外の、現地の環境を再現しようとすることに
あまり意味がないし

サーキュレーターを買っちゃった人は、減価償却したいので
風なしでの実験を、逆にできない立場になるだろう

そもそも現地の環境だって、日によって違うので
再現なんて無理

日本では、日本の屋外の
日によって違う環境に、ただ置いてれば
植物側で対応してくれる


「乾燥気味に育てると、ビカクシダが焦って
水を貯めるために巣葉を生やす」
という俗説があり、私も半分くらい信じてた

けど、数十株で実験した結果
まったく有意差がなかった

乾燥し始める前に、生え始めてた葉が
急きょ巣葉に変わることも

乾燥後に生え始めた葉が、巣葉ばかりになることも
まったくなかった

葉が生えるのが止まることもなかったが
生えた葉は、すべて胞子葉だった

ついでに、「風が強いほど
重心を低く安定させるために、巣葉を生やす」
という俗説も、真実とは思えない

風がなくても、水平でも、巣葉は生えるし
風があっても、垂直でも、胞子葉しか生えない株もある

次に生える葉が巣葉である確率は
品種、個体差、1つ前に出した巣葉の時期で決まってるようで
乾燥や重力に依存してるエビデンスは、得られなかった


以上
極端に湿潤、乾燥させた例を挙げた

湿潤と乾燥、どっちがオススメかというと
圧倒的に湿潤!

限界を超えて乾燥させると、ビカクシダは枯れる

一方、腰水には限界がない

1株だけ放置したまま忘れて
1ヶ月後に発掘されるようなケースで
枯れないメリットは大きい

乾燥の限界付近では、血を抜きまくったアカギみたいに
ぐったりして、成長速度が0に近づく

けど、湿潤方向は
湿潤をキープするほど、成長スピードが上がってく

「湿潤と乾燥を交互に繰り返すのが最速」という説もあるけど
湿潤だけで充分では……?


これ以外に、置き場所、水やり方法、品種など
1パラメータずつずらした数十株で
1年間、比較実験をし続けたけど

成長スピードに、有意差があった

最もトラブルが少なく、最速の成長スピードを示したのは
屋内の、太陽光の当たる窓辺で
しかし西日や夜間の寒さを浴びない、レースカーテンより屋内

腰水にしっぱなし

肥料なし

風は、猫や人間による対流のみ

植物用LEDでない、天井からのスポットライト型LED
(夜間は消灯)

つまり、ただ室内で、人間の隣で
ふやかした水苔に置いておいただけ……!

野菜ならあり得ないことだけど、ビカクシダの場合
それが、植物専用のあらゆる装備に勝ってしまった


この環境が、ほかと違うのは
常に20°以上、30°以下

人間のいる空間なので、暑すぎたらエアコン
冬は夜も床暖

季節のない、快適な空間では
成長をやめる期間が存在せず
最速スピードを維持し続けた結果

加速の強いヨッシーよりも
1回もぶつからないクッパが最速なように

時間が経過するほど、株のサイズの
差が広がる結果になった

ウサギとカメみたいな話だけど
結局、成長をやめさせないことが重要と分かった

寒い部屋で調子を崩した株も
この隣に並べると、復調してトップスピードの仲間入りをした

それが3回くらい再現したので
ビカクシダは、人間の風邪の治し方と似てると思った


夜間にLEDを消さず、光合成させ続けるとか
植物用LEDの、最も美味しい位置に置くとか

そういった光での加点よりも、高めの室温をキープすることが
最も成長スピードに貢献する

考えてみれば
失敗できない農業のプロは、温室を使うのだった

照明がぶら下がってる温室もあるけど
基本的には、夏も冬も、太陽光を期待してて
温室でも光は特別じゃない

温室で高速に育つ理由は、温度なわけで
当たり前のことを、ビカクシダに適用すれば良いだけだった


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