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【木ノ下歌舞伎】三人吉三廓初買

 2024年9月16日(月・祝)、東京芸術劇場プレイハウスで、木下歌舞伎の『三人吉三さんにんきちさ廓初買くるわのはつがい』を鑑賞しました。記録を残します。
 なお、東京での公演は、9月15日(日)〜9月29日(日)で、その後、長野、三重、兵庫と続くようです。

■はじめに

(1)木ノ下歌舞伎について

 インターネットの公式HPによると、木ノ下歌舞伎は、木ノ下裕一さんが主宰する、歴史的な文脈を踏まえつつ、現代における歌舞伎演目上演の可能性を発信する団体です。2006年より京都を中心に活動を展開しているとあります。

 私が、木ノ下歌舞伎を観たのは、昨年の『勧進帳』が初めてでした。その時のプロモーション映像にも「歌舞伎と現代劇の"あわい"を行き来する」とあります。あまり説明になっていなくて恐縮ですが、「現代的な観点から作品を演出すると、こうなるのか」と驚き、楽しく観劇した経験・記憶があります。今年も楽しみにしていました。

(2)今回の上演作品について

 今年の演目は『三人吉三廓初買』です。過去にも、2014年と2015年に上演されたとあります。今回、上演時間は休憩を挟み、5時間ありました。あまり詳しいあらすじは記載しませんが、少し配布チラシから引用し、その後、感想を記載しようと思います。

数奇な運命に翻弄される若者たち―和尚、お坊、お嬢の"三人吉三"と、現行歌舞伎ではカットされている"商人と花魁の恋"がダイナミックに交錯する鮮烈な群像劇。

配布チラシより。

■感想

(1)壮大なオマージュ

 観劇して私が最初に強く感じたのは、台詞のリズム感です。『三人吉三廓初買』の原作は河竹黙阿弥(1816~1893)ですが、同氏は七五調の台詞のリズムで有名です。今回の作品でも、登場人物が現代語で話す台詞に、そのリズム感が取り入れられていました。

 こうしたリズム感の点も含め、河竹黙阿弥の作品に対する木ノ下さんの尊敬がひしひしと伝わってくる感じがして、「こういうのを"オマージュ"というのではないか。」と思った次第です。また、作品全体から伝わってくる感じから「壮大な」と見出しに書きました。

 「月も朧に…」という有名なお嬢吉三の台詞の場面がありますが、ここは、(私の予想とは)また違った演出がされていて、面白かったです。

(2)三人吉三の場面

 「吉三」という同じ名前を持った三人の若者たちの話です。それぞれ、和尚吉三、お坊吉三、お嬢吉三と呼ばれます。
 名刀と百両を巡って、話が進むのですが、誰から誰にお金が回るのかなど、私は頭がこんがらがる部分もあり、この点は一度整理しないといけないなと、毎回この作品を観るたびに思います。

 そして、彼らは、生まれ育った環境や(人生の)成り行きから、罪を犯さざるを得なかった面もあるようにも思います。開き直るような所もありますが、「取り返しがつかない。」「いずれは捕まる。」といった気持ちも強く、切なさや悲しさが伝わってくるような気がしました。

 また、今回、私は、お坊吉三に注意が行くところが多かったように思います。具体的には、お坊吉三と和尚吉三の父親との立ち廻りなど、結構集中して観ました。作品や観るタイミングによって、三人の誰に着目するかも変わってくるような気がして、こうした部分もこれから楽しんでいきたいです。

(3)花魁の意地

 本作に出て来るもう一つの話である"商人と花魁の恋"を、私はてっきり、木ノ下さんのオリジナルの部分だと思っていました。しかし、上演後、物販コーナーに木ノ下さんがいて、私はサインを頂きながら、「"商人と花魁の恋"の部分は、現行歌舞伎ではカットされているものの、原作にあるんですよ。」と教えて頂きました。

 この"商人と花魁の恋"の部分についても、少し感想を書きます。
 私の主観で恐縮ですが、後半は特に、演出にもよるのか、明治期の雰囲気を感じました、河竹黙阿弥が、江戸時代後期から明治にかけて生きた人であることを感じます。

 そして、作品の他の部分にも「それでは、○○(人名)の顔が立たねぇ。」といった台詞が出て来るところがあるのですが、花魁に関しても「ここは花魁のプライドだろうな。」と思う場面が何度かありました。
 この「プライド」という言葉を日本語に訳すと、ここでは「自尊心・誇り」というよりは、「意地・意気地」だろうなと頭をよぎり、「武士は食わねど」のような、日本らしさを何となく感じました。

(4)地獄の場面

 同様に、「原作にあり、(木ノ下さんの)オリジナルではないですよ。」と教えて頂いた部分に、地獄の場面があります。ぶちの衣裳を着た鬼たちに加え、意外な登場人物もいました。作品の半ば(中間地点)で、面白い部分でした。

■最後に

 今回は、感想を中心に記載しました。これから配布パンフレットや購入した叢書などを読んで、作品を観る観点を広げたり、深めたり、していきたいなと思います。
 冒頭の画像は、「日本庭園」と「冬」で検索し、瑠璃森しき花さんの作品を使用させて頂きました。ありがとうございました。


■公演概要

 公式HPのリンクを貼ります。

[作]河竹黙阿弥 [監修・補綴]木ノ下裕一 [演出]杉原邦生 [出演]田中俊介 / 須賀健太 / 坂口涼太郎 / 藤野涼子 / 小日向星一 / 深沢萌華 / 武谷公雄 / 高山のえみ / 山口航太 / 武居卓 / 田中佑弥 / 緑川史絵 / 川平慈英 / 緒川たまき / 眞島秀和 [スウィング]佐藤俊彦 / 藤松祥子

 本日は、以上です。

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