【Netflix】「ハウス・オブ・ガー」丸山ゴンザレス似が暴れるアフリカ史劇
【概要】
ハウス・オブ・ガー
House of Ga'a
2024 | 年齢制限:16+ | 2時間 | アクション
オヨ王国の最盛期。国の実権を握り続けていたのは、王たちを意のままにする冷酷な宰相のバショルン・ガーだった。しかし、彼はやがて自らの血縁によってその身を滅ぼすことになる。
出演:フェミ・ブランチ、マイク・アフォラリン、フンケ・アキンデレ
(Netflix公式サイトより)
予告編(ナイジェリア語、英語字幕)
予告編2 ガーの息子、オイェメクンが、恋人の結婚式の余興でカバのような巨漢と戦闘させられる。この映画随一のアクションシーン
【評価】
みんな見ている「地面師たち」を見てもつまらんから、わたしは誰も見てないであろうナイジェリア映画を見たぜ(7月27日公開、Netflixオリジナル映画)。
ハリウッド、ボリウッド、ノリウッドつーて、今や世界第3位の映画生産国ナイジェリア。
この映画、ナイジェリアでは、公開以来Netflixの人気No1を独走している。
わたしは、これからアフリカの時代が来ると思っているから、「勉強のため」もあったぜ。
とくにナイジェリアは、あと30年もすれば人口でアメリカを抜き、インド、中国に次ぐ第3の国になると言われている。
映画の舞台は、現ナイジェリアの南西部にかつて栄えた「オヨ王国」。
ナイジェリアの3大民族はヨルバ人、ハウサ人、イボ人だが、オヨ王国はヨルバ人の都市国家で、17、18世紀に最盛期を迎えた。現在のナイジェリアにも「オヨ州」が残っている。
その最盛期オヨ王国で絶対権力を握った宰相「ガー」の物語だ。(もしかしてこのタイトル、「ハウス・オブ・カード」のもじり? 寒くない?)
この映画の「ガー」は丸山ゴンザレスに似ている。というか、日焼けしきった丸山ゴンザレスにしか見えなかった。
この時代のオヨ王国は、日本の室町時代以降と似て、「王」の権威は残っているが力は弱く、宰相のガーが国を牛耳っていた。
ガーは、気に入らない王を何人も殺すなど暴虐の限りを尽くす。だが、やり過ぎて最後は悲惨な死を迎える。
監督は女流のボラニ・オーステン=ピーターズ(Bolanie Austen-Peters)。オヨ州出身で、ロンドン大学で法学修士号を取ったインテリ。ナイジェリア文化向上のための団体を立ち上げ、映画も製作している。
Netflixは「アクション映画」に分類しているが、アフリカの「大河ドラマ」みたいな史劇ととらえるべきだろう。まあ、いわゆるepic movie。
Netflix映画だから、製作のクオリティは管理されていて低くないが、エロもグロも申し訳程度で、目をみはるようなアクションシーンやスペクタクルがあるわけではない。せっかくの「呪殺」のシーンは、もうちょっとCGをがんばって欲しかった。
映画作法も、時系列に沿って物語っていく素朴なもので、かつ(こちらがアフリカ人の顔をあまり識別できてないこともあるが)話がときどき分かりにくい。
今の映画の水準で採点するなら、100点満点で45点くらいか。
それでも、役者たちの熱演に圧倒されるのと、アフリカ人特有の感情表現や世界観が興味深く、2時間の物語を楽しく見ることができた。
この映画は、ガーの末の息子、オイェクメンの視点から物語る形をとっている。
オイェクメンは、皇太子の娘(つまり王の孫)で王国一の美人といわれたアグボニン姫と相思相愛の仲だった。
しかし、アグボニン姫は、父のガーに奪われてしまう。
この映画の本当のキモは、暴虐な父ガーに対する、息子オイェクメンの反抗の物語だ。
しかし、父権がめちゃくちゃ強いアフリカのことだから、なかなか直接に反抗できない。そこが、われわれの目からは、もどかしい。
最後に反抗はするのだが、いかにも弱々しい。でも、ナイジェリア人の目からは、それが最大級の反抗に映るのだろうか。
そのあたりの世界観のちがいが面白いと思った。
日本を含め、西欧近代の思想は、「父権」の撲滅にいそしんだ。「家父長制」こそが諸悪の根源だとした。
しかし、アフリカには、まだそれが生きている。
そこがアフリカの強みだ、とわたしは思っているのだ。
<参考>
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