【Netflix】「黄泉の兵士」兵馬俑のミステリー
【概要】
黄泉の兵士: 始皇帝陵に眠る謎
Mysteries of the Terracotta Warriors
2024 | 年齢制限:13+ | 1時間 17分 | ドキュメンタリー
中国の初代皇帝の墓である秦始皇帝陵を守る、数千体もの兵馬俑(へいばよう)。考古学的な証拠に基づき、その兵士たちの物語を再現ドラマを交えて検証する。
(Netflix公式サイトより)
予告編
【評価】
6月12日に世界公開。
歴史好きなら見ておくべきだろう。
「史記」などに記された始皇帝陵が、陝西省西安のはずれで発見されたのが1974年。
今年はそれから50年、ということで作られたドキュメンタリー。
始皇帝陵では、なんといっても兵馬俑が有名だが、このドキュメンタリーでは、それと同時に発掘された多数の人骨に焦点を当て、2200年前に何が起こったかを推理する。
このドキュメンタリーは、始皇帝が自分の墓を作った話より、作られた後の「墓」の運命を扱っている。
「史記」には、秦の始皇帝が死んだあと、陰謀家たちによって皇位が簒奪されたことが記されている。
長子を後継者に指名した始皇帝の遺言は破棄され、陰謀家たちは末っ子を2代目の皇帝に据えた。
その陰謀のために、残虐な粛清がおこなわれたーー
なにしろ中国のことだから、古代から粛清がハンパない。
発掘された骨は、バラバラにされている。死んだ後にバラバラにされたのか、生きながらバラバラにされたのか。
そのあたりを、再現ドラマで見せる。残虐場面そのものが映るわけではないが、想像するとホラー映画より怖い。
再現ドラマ部分の質も高い。
その後、陰謀家たち自身も粛清され、秦はあっけなく滅びる。
その騒動のなかで、始皇帝陵がどのような扱いを受けたかは、「史記」その他にも記述がない。
8000体近い兵馬俑は、現在は復元されたものがきれいに並んでいるが、もともとは全部こなごなに破壊された形で発見された。強い炎で焼かれた跡もある。
おそらく秦と始皇帝に恨みをもつ集団に陵辱されたのだろうが、それが何者で、いつ襲撃されたのかは分かっていない。
2000年以上前の「犯行」を追求する研究は今も続いている。
だが、発掘調査はきわめて慎重におこなわれており、始皇帝陵のほとんどはまだ手付かずだ。
「始皇帝の遺体」も、たぶん地下のどこかにあるはずだが、50年たっても、調査は及んでいない。(このドキュメンタリーではそれについて一切触れられない)
兵馬俑の発見は、1975年に世界的ニュースになった。
始皇帝陵の存在は歴史書に記されていたが、兵馬俑の存在は未知だった。
私も子供のころにニュースを聞いて、想像力をかき立てられたのを憶えている。
あれから50年かーー。
ドキュメンタリーの後半で、年老いた考古学者が出てきて、こうしみじみと述懐する。
「兵馬俑を50年研究してきた。幸せな人生だった」
そうだろうなあ、と思う。
こんな歴史的発見にめぐり合わせる幸運は、滅多にない。
ドキュメンタリーに出てくる中国の考古学者たちは、みな生き生きして幸せそうだ。
2200年後の人たちを幸せにする始皇帝は、残虐な男であったが、やはり偉大なヤツだった。
<参考>