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【YouTube】「檜山大騒動」お暇なら見てほしい1950年代の日本人のモラル

【概要】

「檜山大騒動(ひのきやまだいそうどう)」

2週間限定でYouTubeで公開されている1956年の映画です。

【配信期間】 2024/7/19(金)13:00~2024/8/2(金)12:59 
【解説】 南部藩の横暴に一人立ち向かう相馬大作の活躍を描く。 山田達雄監督デビュー作。
【あらすじ】 1807年、東北・南部藩と津軽藩は国境の檜山を巡り争っていた。 ある時、津軽藩が南部藩の領有を示す杭を勝手に抜き、「津軽藩檜山」の新たな杭を設置する。 すると、これに抗議した南部藩家老の尾崎富右衛門(武村新)が 射殺されてしまう。 将軍家と結託した津軽藩は檜山領有を既成事実化し、 これに激怒した尾崎の息子・秀之進(嵐寛寿郎)は、 単独で檜山の奪還と父の仇討ちを誓う。
【スタッフ・キャスト】 脚本/筧和彦、大貫正義 監督/山田達雄  主な出演/嵐寛寿郎、小笠原竜三郎、日比野恵、田崎潤
1956年公開 81分 モノクロ・シネスコ

本編↓(新東宝【公式】チャンネル)


*上は公式チャンネルからの引用ですが、【解説】の「南部藩の横暴に〜」は「津軽藩の横暴に〜」の間違い?


【評価】

三島由紀夫の「鏡子の家」論でも書いたとおり、わたしは今、日本の1950年代に注目しています。

1945年の敗戦で何もかも変わった、と今の日本人は考えがちだけど、そうではない。

1950年代までは、日本人は戦前・戦中の世界観を、だいぶ引き継いでいるわけです。

日本人が変わったのは、1960年代、高度成長に入ってからです。

それが分からないと、なぜ三島由紀夫が1950年代に傑作を残し、なぜ1960年代に絶望して死んだのか、分からない。


この「檜山大騒動」という1956年の映画も、1960年代以降の日本人が失ったものを思い出させてくれます。

これは、江戸時代の南部藩と津軽藩の抗争にまつわる「相馬大作事件」を題材にした映画です。

「相馬大作もの」は、講談などで人気の演目で、戦前は映画でも何百作と作られたらしいですが、これがその最後の作品で、これ以降は作られていないそうです。

そこにあるのはサムライの精神、戦う本能だけで、「弱者に寄り添う」だの「平和主義」だののしゃらくさい左翼イデオロギーはありません。


低予算ながら、映画そのものも、とてもいい出来です。

戦前の大スター、嵐寛寿郎が、若い監督の初監督作のために、全身全霊で取り組んでいるのに感動しました。

口跡あざやか、という言葉どおり、聞き取りやすいセリフ回しも素晴らしい。パンツ一丁(パンツではないけど)で弾丸が降る水中を逃げるシーンが有名です。

剣戟スターとしてのアラカンの最後のほうの作品となります(60年代、役者の晩年は、性格俳優みたいになります)。


でも、当時は、もうこういう映画は評価されなくなっていたようです。

すでに「七人の侍」(1954年)みたいな映画があったわけですからね。

山田達雄とアラカンの映画も、ほとんど批評的には無視されたらしい。

「新東宝かB級や、娯楽作品やと差別してジャーナリストも試写に来なかった」(Wikipedia「山田達雄」)という扱いを受けていました。


でも、1960年代生まれの私には、逆に新鮮でした。

80分で、サクッと見られる娯楽作なので、お暇なら是非。



<参考>


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