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個人情報の価値

この記事を書かなければならないと考えたのは、ミャンマーのタイ国境付近における人身売買、大量の外国人監禁と詐欺拠点の現場が大々的に報道されている事を受けてのことです。日本の高校生が日本人に騙され人身売買の標的にされている。日本の若者が強盗殺人の片棒を担いでいる。こうした凶悪犯罪が、もはや対岸の火事では無いとますます感じたからです。

現代は情報化社会と呼ばれ、私たちが日々やり取りするデジタルデータは、単なる記録や便利なサービスの一部ではなく、一種の通貨として機能しています。スマートフォン一つ、無料で使えるLINEのようなアプリも、その背景では膨大な個人情報が収集・解析され、企業や第三者によって活用されているのです。

アプリ利用の裏側―利便性と引き換えの情報

たとえば、LINEは誰もが無料で利用できる便利なコミュニケーションツールです。しかし、登録時にスマートフォンの電話帳などの情報が自動的に読み込まれ、サービス運営会社に渡っている現実があります。これにより、私たちの知人リストや連絡先、さらには位置情報までがさまざまな形で利用され、場合によっては第三者に転売または共有されることもあるのです。

また、Tポイントカードのようなサービスでは、店舗のレジで確認されるなど、私たちの生活のあらゆる場面で「情報の価値」が実感されます。さらに、Tポイントカードのシステムでは、利用者の基本情報に加えて、運転免許証情報などの高い信頼性を持つデータが紐づけられています。これにより、利用者の購買履歴、住所、さらには免許情報といった個人を特定できる情報が一元管理され、非常に価値の高いデータベースが形成されます。つまり、我々はポイントという見返りに日頃から個人情報を売っていることになります。

更に残念なことに、公然とこのような情報が第三者に売られ、不正な目的で利用されるケースが報告されています。企業はこの情報をもとに、より詳細なターゲティングマーケティングを行ったり、場合によっては詐欺行為やその他の犯罪に悪用されたりするリスクが高まっているのです。

近年、性風俗としてアメリカに入国する邦人女性が増える結果、一人でアメリカ国内へ旅行しようという場合に入管によって入国が拒否されるという事例が後を絶ちません。日本人女性が売春を疑われるという事例でもありますが、日本のブローカーによってアメリカの売春店への人身取引が行われているという事例でもあります。何を入り口にして、人身売買の被害者になるかもわかりません。

甘い話に潜む落とし穴―詐欺と情報売買の現実

SNS上には、「お金を配ります」「ゲーム本体を無料で配布します」「LINEに登録すれば素晴らしい投資情報を教えます」といった甘い誘いが溢れています。こうしたオファーは一見魅力的に見えますが、実際には詐欺まがいの手口です。これらの情報に飛びつき、住所や本名、勤務先といった重要な個人情報を晒してしまうと、犯罪の片棒を担うことになりかねません。目の前の金に目が眩むほど、飢えた人間であっては、こうした誘いに容易に乗ってしまう危険性があるのです。

現代の詐欺手法はますます巧妙化しており、SNSやブログ、YouTube広告などを通じて「副業の手引き」「誰でも簡単に稼げる」といった魅力的なオファーが発信され、ユーザーをLINEに誘導するケースが後を絶ちません。LINE登録後、巧妙に構築されたトークルームで個別に信頼関係を築かれたユーザーは、まるで無料サービスを享受しているかのような錯覚に陥ります。しかし、その裏では、ユーザーの連絡先や行動履歴などの個人情報が次々と収集され、不正な情報商材の販売やさらなる詐欺行為に転用されるのです。

たとえば、実際に副業を謳うSNS広告からLINEに誘導され、実績のあるビジネスコーチを装った詐欺師と連絡を取り、最初は低額の商材を購入させた後、追加の高額投資を要求されるといった手口が存在します。こうした詐欺により、ユーザーは多大な経済的損失だけでなく、クレジットカード情報や住所、電話番号といった個人情報が悪用されるリスクにも晒されるのです。そして、更にその個人情報は転売されます。個人情報は金銭以上の価値を持っている事を知るべきです。

一方で、ミャンマーとタイ国境においては、中国系マフィアが運営する拠点に数万人の人身売買被害者が監禁されているという衝撃的なニュースも報じられています。こうした事例は、一見無関係に思えるかもしれませんが、実は「個人情報」がいかに高い価値を持ち、裏で取引されているかを示す一端です。情報がもたらす利益が犯罪組織をも動かし、被害者が容易に騙される状況を生み出しているのです。ころっとお金を見せられて情報を入力するような人こそ、あらゆる犯罪に利用しやすい人間です。

保険会社も活用する―医療情報の価値

アメリカでは、保険会社が被保険者の医療情報にアクセスしています。契約時に既往歴や一日の入院歴、治療歴などの細かな情報を尋ねながら、支払い時には医療情報にアクセスし、保険支払いを拒否するケースがあります。また、保険適用外の診療を受けさせた医師に対しては、保険会社からボーナスが支給されるというシステムも存在します。これらの事例は、個人の医療情報というデータが非常に高い価値を持ち、場合によっては企業の利益や損失に直結していることを物語っています。

勿論、日本におけるマイナンバー制度は世界一あらゆる情報に紐づくことになる訳ですから、こうした商売のあり方を知らないでは済まされません。利用したい人間にとっては喉から手が出るほど欲するものです。

このように、私たちが日常的に利用するあらゆるサービスやアプリは、利便性の裏側で個人情報を「資産」として扱っています。無料という魅力の陰には、見えないところで情報が収集・解析され、場合によっては不正利用されるリスクが潜んでいるのです。ユーザー自身が自分の情報がどれほどの価値を持ち、どのように利用されているのかを理解することが、情報社会を生き抜くための最も基本的な防衛策となります。

情報の価値を知り、情報資産の意識を高めよう

無料で使えるサービスに潜む甘言に惑わされることなく、慎重に情報管理を行う意識を持つこと。そして理解して利用することが重要です。現代における個人情報は、単なるプライバシーの保護対象ではなく、一種の通貨として企業や不正業者に利用されています。Tポイントカード利用者のように、免許情報などの高信頼性データが連動している場合、情報の価値は格段に上がり、売買や悪用のリスクも大きくなります。

ユーザーは、無料で利用できるサービスの裏に潜むリスクを理解し、安易な情報提供を避けるとともに、自らの情報管理やセキュリティ意識を高める必要があります。私たち一人ひとりが、情報の流通とその価値について真剣に向き合い、自己防衛に努めることこそが、安心してデジタル社会を利用するための礎となると考えています。

このコラムが、あらゆる個人情報の流通の実態や、LINE登録を促す巧妙な手口、そしてそれらがもたらすリスクについて理解を深める一助となれば幸いです。そして、個人情報が流出したところで、大した影響はないと考えている人も多い中、こうした情報こそが価値を持っているという事を知るべきだと感じています。個人情報がどのように利用されているかを知るだけで、知らない人にとっては一種の防衛になるのではないか。そのように考えてこの記事を書いたところです。

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