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短太望

半袖半パンのパジャマを辞めた。気持ちの良い生地と肌がシーツに擦れた時に感じる凛々しさを求めて半袖半パンのパジャマを着ていたが、流石に寒過ぎた。母に冬用の毛布を支給してもらいこの(秋+冬)×1/2を駆け抜ける。

午前3時起床。二度寝。午前6時起床。三度寝。午前9時起床。動き出す。昨日の父の一件(分からない方はBAD're addiction to me cuz  of you.を読んで下さい。)から母の元に父から1通のLINEが届いていた。「これからは僕と僕以外の家族の生活を分断して生活をしていきます。今まで迷惑をかけました。」と実質的な父と父以外の家族を隔離状態にして暫くの間生活していく事になった。父本人が選んだ隔離。少しの安堵と気の抜けない日々がまた再開した。母からその連絡を3度目の起床の時にLINEで送られて来て、少し昔を思い出しながら食卓に向かった。いつものおにぎり。これはいつも美味い。そして部屋に戻り、何をするという訳も無くベットに寝転んだ。現在午前10:00。一旦寝るでも良い。もう昼ごはん食べるでも良い。違う事をするでも良い。引きニートになってからは様々な選択肢を自ら選ぶ事が出来るという時間は至福の時だ。僕はベットに寝転がりながらネットサーフィンをして、その間に眠たくなったら寝るという選択を取った。そしてyoutubeを見ているとある事を思い出す。「前お母さんが話してた共食い見よ」となりアマプラで「共食い」の映画版を見る事にした。そして見始めて5分ぐらいで「おもろ過ぎる!!」と神作という事を確信してすぐに消費したく無いという思いから共食い→YouTube→共食い→Xの様に少しSNSで間を取りながら見ていった。それでもおもろ過ぎる。田舎特有の狭い空間だけで行われる事象。そこには欲を解消する場所などは何処にも無く、ただただセックスするだけ。堪らない。こういうのを僕は見たかった。「地面師たち」の様な事実をしょうもない加工作品に持って行き、最後の1番要らない戦闘シーンで一気に冷めた作品に対して、「共食い」は兎に角リアルに忠実。要らない事を一切していない。特に主人公「遼馬」の父「円」の前妻「仁子」が自身が営む魚屋で魚を捌き終わった後に、部屋に戻り、戦争で左手を無くした為、右手だけで取る→口に入れる→火をつけるの行為をして吸うショートホープ(通称ショッポ)が堪らなく良い。このシーンは後に既に見終わっている母と話している時にも話題に上がった場面でもある。何が良いかというと「仁子」役の女優さんの表情。昔サディズムを抱えた「円」に殴られながらセックスをして2人妊娠が発覚したが、「こんな男の子供なんて1人でいいわ」と主人公「遼馬」だけを出産してもう1人は堕ろした。この過去を回想しながら吸うショッポ。短く太い望みは一瞬で無くなり、無意識のまま2本目を吸い始める。この「円」に対する憎悪をいつか晴らしたいという短く太い望みを感じさせるシーンなのだ。これがとても良いのだ。そしてもう1つの理由は僕が個人的にショッポが大好きだからだ。勿論現在18歳。今まで一度も喫煙をした事はない。だが、僕が13歳の時に初めて読んだ千原ジュニアさんの「14歳」。当時の僕はこの後ジュニアさんと同じ様に引きこもる事などは想像もしておらず、次々と流れ込む14歳なりの感情を感じてとても面白い作品だった。その中でジュニアさんが当時小学3年生、9歳の頃に初めて吸ったのがショッポだったのだ。皆んなで待ち合わせしていた空き地にジュニアさん以外誰も来ず、悲しみを紛らわす為に吸ったショッポ。以降物語の中でショッポの煙の流れ方で心情を表現している所が、13歳の僕には強く刺さった。その日以降僕の中で「いつか20歳まで生き残ることが出来たら、絶対ショッポ吸うぞ!!」という願望が生まれ、その願望は日を増すごとに強くなっていった。そしてある日の朝。僕の家はとある新興宗教の教会なので月に数回信者を集めてお祭りみたいな事をする日がある。(この日に稼がないと生きていけない)その日にいつも来るSさんがいた。Sさんはいつもやる気の無い感じでこの宗教への信仰心は僕と同じぐらいの人だった。だが、実家を出て自分1人で生きていく事は出来ないので今も実家に住みながら仕方なく信仰しているという感じだ。そんなSさんは教会に来る人の中で唯一の喫煙者でもあった。いつも吸っていたのはメビウスライトの8ミリ。Sさんはいつも「マイセン」と言っていた。(マイセンとはメビウスの旧名マイルドセブンを略した言い方)周りからは「臭いから吸うの辞めて欲しいよね」「タバコ吸ってる場合じゃないでしょ」などの辛辣な意見を受けながらも玄関を出てすぐの砂利道の上でいつも吸っていた。そんなSさんを僕はいつも「良いな〜。早く吸いたいな〜。」と思い見ていたらSさんが「コラムニスト(仮)、吸ってみるか?」と当時13歳の僕に平気な顔で喫煙の提案を持ちかけて来た。僕は20歳になるまで喫煙を守れない奴は総じて「ダサい」と思っているので、「あ、結構です。」と返したがかなりショッポに興味を持っていた時期でもあったので「今度、ショートホープを吸いに来て欲しいんですけど、僕ショッポを吸いたくて吸いたくて堪らないんですけど、如何せんまだ13歳なので吸う事はできません。だけどSさんが吸った副流煙を僕に吹きかける事で間接的にショッポを吸う事が出来ると思うんですよ。どうかお願いします。」と一般的に副流煙を拒む奴らが多い中、副流煙を懇願するという今考えればイタイ奴からのお願いをSさんはすぐ「ええよ。」と了解してくれた。大人としては最悪だが、失うものが無いSさんの目は僕の事なんかほんまにどうでも良いという事が節々から感じ取れてとても面白かった。そして次の祭の日。休憩中にこっそり喫煙所とは違う玄関からSさんの所へ行き合流。そしてSさんがポケットからメビ8では無くショッポを取り出した所を確認。僕は辺りを見渡しながらSさんの口元に鼻を近づけた。そして「フゥーーーーー。」とSさんが僕の鼻に吹きかけた瞬間。「ゴホォゴホォゴホォ、ウゥゥゥエェェーー。」と盛大に咽せた。それを見てSさんは「お前はまだガキやな。」と少し笑みを溢しながら僕にそう言った。

ショッポは
甘くて、辛くて、苦くて、臭くて
少しの希望も無い僕に
人生を教えてくれた。

追記
「太くて短い」が一般的なショッポの言い方だったのかも。書き終わって投稿した後に気付きました。まあどうでも良いか。

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