4コマ漫画を使った「体験デザイン」授業づくりに挑戦|東京学芸大学附属竹早中学校×コクヨしゅくだいやる気ペン
美術担任の杉坂先生としゅくだいやる気ペンの出会いは、2022年1月でした。学校と企業が1つのチームとなり未来の学校創りに挑戦されている中で、杉坂先生から相談されたのは、「生徒たちに、色や形によるデザイン表現だけでなく、創造的にモノを生み出すプロセスを体感させてあげたい」というものでした。しゅくだいやる気ペンが初めて取り組んだ、中学2年生110名との「体験デザイン」の学びをお届けします。
これまでの授業では「課題の解決」が目的だった
授業は、2022年2月中旬に開催されました。生徒さんたちはそれまでの授業の中で、“中学生が本当に使いたくなる文房具”というテーマで、日々の生活の中で感じている課題の抽出や、それらを元にアイデア出しまで進んでいる状態でした。杉坂先生からお話をいただいた「創造的にモノを生み出すプロセスの体感」という課題に対して、私たちが是非一緒に取り組みたいと思ったのが、4コマ漫画を使ったアイデア発想方法へのチャレンジです。①抽出した課題が、②どういう状態になればその人が最高に幸せになるのかを想像し、③そうなるための手段を考え4コマ漫画に落とし込む、という手法です。ルールは、登場人物の“表情”と“言葉”を必ず書き込むこと。そうすることで一気に感情が注ぎ込まれ、より登場人物=利用者のリアルへと繋がるのです。
大切なのは4コマ目「どれだけハッピーになれたか」
授業ではまず、しゅくだいやる気ペンの企画開発リーダーである中井による説明から始まりました。企画当初は全く違うコンセプトだったやる気ペンは、観察を通じてコンセプトが固まっていったこと、その後実際に4コマ漫画を使って企画を練り上げていったことなどをご紹介しました。特に4コマ目の「登場人物がどれだけハッピーになれたか」は、何度も何度も最高にハッピーな状態を描き重ね、その度に2・3コマ目の企画内容が、より利用者の気持ちに寄り添うものへ磨き上げられていったという話をしました。
プレゼンテーション中は真剣な表情で話を聞いていた生徒さん達でしたが、グループワークの時間になると、教室は一瞬にして活気あふれる雰囲気に。これまでのアイデア出しシートを見返しながら真剣な表情で議論をするグループ、登場人物の心情変化を想像しながら盛り上がるグループ、黙々と絵を描き始める子、それぞれのスタイルで取り組みました。終了10分前の呼びかけからは、ラストスパート!「とにかく描き切ることが大切」に全力で応えてくれ、110個の最高なハッピーが出来上がりました。
「自分が本当につくりたい未来」をデザインしてほしい
授業後のアンケートでは、「授業は楽しかったですか?」「授業には意欲的に取り組むことができましたか?」の問いに、97.2%の生徒さんからYesをいただきました。また、“実際に開発する人も使う方法だと知ると力が入り、完成させられた”という達成感を感じられるコメントや、“自分が目指す目標が皆に喜ばれるものであっても、そこを初めからゴールにしてはいけないし、形を変化させながらもより良いものを作り上げるというプロセスの大切さにも気づけた”というデザインに対する本質的な気づきを得たコメント等もいただきました。
講師のしゅくだいやる気ペンチームリーダー 中井信彦より
今回取り組んだ「4コマ漫画を使った体験デザイン」は、不確実性が高い時代の「地図づくり」のような手法です。仮説を立てて進むうちに、地図の精度があがっていく、場合によっては、とらわれていた常識を崩すような発想を得てイチから描き直す・・・様々な道のりがあると思いますが、その過程で「自分が本当につくりたい未来」が見えてくるはずだと信じています。
このような貴重な機会を作ってくださった杉坂先生、そしてとても前向きに課題に取り組んでくださった生徒の皆さん、本当にどうもありがとうございました。皆さんからいただいたパワーと共に、しゅくだいやる気ペンチームも世の中の皆さんに沢山のハッピーを届けられるよう、挑戦し続けます。
東京学芸大学附属竹早中学校 美術教諭 杉坂洋嗣氏より
学校での学びは社会と連結することで、生きた学びになります。今回、実際にデザインすることを通して社会と関わるコクヨのみなさんと共に、子どもたちの教育活動を共創させていただくことで、生きた学びに取り組む子どもたちの姿を見ることができて大変嬉しくなりました。単に目の前の問題を解決するだけでなく、よりよい「未来の幸せ」を創造する「体験デザイン」の手法として提案いただいた「4コマ漫画の発想法」には、目から鱗でした。ありがとうございました。