車にさす傘はない
突然ですが、お隣さんってどんな方ですか?
私は新興住宅地に家を建てたのが27歳でした。
子どもをきっぱり諦めて、だいぶ見栄を張ったのかもしれません。
人気の住宅地だったので、兄弟、友人まで動員してくじを引いて、今の場所をゲットしました。
初期だったので、お隣はまだ空き地でした。
そのまたお隣の井川さん(仮称)とは同じ頃、同じ住宅メーカーの家を建てたので、とても仲良くなりました。
この空き地(お互いにお隣)の人、どんな人が来るんだろうね、といつも話していました。
何年か経って、いよいよお隣さんが越してきました。
が、警察官上がりと噂のそこのおじさんは、何とも偏屈な人でした。
何かにつけ、文句を言ってくる。
「室外機の空気が庭の植物を枯らしている」とか、「お宅の木の枝がこっちにはみ出している」とか「枯れ葉が庭に飛んでくる」とか。
迷惑をかけているならすぐ対処するのですが、些細な事に目くじら立てて、いかにも喧嘩売ってくる様子で、辟易していました。
ときどき井川さんと話をすると、そのお隣さんの話で持ちきり。
困っていたのはうちの段ではなかったのです。
塀に鉢を置いていたら、全部落とされたとか、木を切られたとか・・・。
とにかく、そのおじさんと顔を合わせたくない。
しかし、玄関を出てちょっとでも左を向くとお隣のリビングが見えるのです。見ないように、見ないようにと意識するとふと目がいっちゃうとか。
次第に外へ出るのが苦痛になってきました。
おかげで、花いっぱいの庭だったのに、次第に枯れて見るも無惨な庭に成り果ててしまいました。
***
銀婚式を迎えた年、母がお祝いをあげたいけど何がいいか、と聞いてきました。
「なんでもいいよ。」と適当に返事をした私でしたが、母はずっと考えてくれていたようです。
ある日「いいこと考えた~。」と嬉しそうに電話をしてきました。
うちにはガレージがありません。
「それじゃ車が可愛そうでしょうよ。」とガレージを作る資金をくれたのです。
なぜか、車を擬人化する母。
ニワトリには冷酷でも、車には優しいのです、昔っから。
私たち夫婦は臨時収入に大喜びをしました。
しかし、ガレージを作らず、隣との間に高い塀を立てたのです。
二度とお隣さんを不本意に見てしまうことがないように。
台風が来ても、地震がきても、お隣には絶対倒れない頑丈な壁を。
それから、庭を整備して大好きな紫陽花や紫蘭やノボタンを植えました。
私の精神状態はみるみる改善したのですが、数年ぶりに母がやってきたとき、びっくり。
え?? ガレージは??
車は雨ざらしじゃない!!
「だって雨の日に車にさす傘はないから、濡れたらいっしょかな?と思って。」
とっさに出た言い訳でしたが、母ががっかりしたのは言うまでもありません。ごめん・・・・ね。
どうしてでしょうか。
今日は、母の「いいこと考えた~。」と嬉々として電話してきた日のことを思い出しました。
裏切った形になったけど、あれは、本当に嬉しかったなぁ。
タイトル画像は”ふみっち”さんにお借りしました。
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