街で祭を拾い集める
夏真っ盛りである。みなさんは夏といえば何を思い浮かべるだろうか。
海だろうか、山だろうか。私は真っ先に祭を思い浮かべる。
どれくらい祭を思い浮かべるかと言えば、自宅で夏祭りをするくらいには祭を思い浮かべている。
ちなみに、自宅で夏祭りというのは祭の屋台で出ているような料理、たこ焼きや焼きそば、焼き鳥などを用意しつつ、ちょっぴり自宅を飾り付けて大量の炭水化物を食うというイベントだ。
これの準備をPさん(彼女)とともに前日からせっせとやっている。中々に骨の折れるのだが、いざやってみると結構楽しいものである。
とはいえ、本物の祭に繰り出したいとは思っているがなにぶん人混みが苦手だ。なんとか人混みが得意になる方法でもないもんだろうか。しかし一朝一夕で得意になるものでもないのは当然わかっている。
でも本当は外でちょっとでも祭りを感じたい。
しかしすでに今年も自宅で祭の食べ物はたらふく食ってしまっている。正直ソース系の味わいには飽きた。
じゃあ平時の街で探しますか、祭。
私が何をやろうとしているのかピンときていないかもしれない。
祭の人混みが嫌だし屋台のご飯は食べ飽きたので祭が開催されそうな、もしくはされたであろう場所に行って祭の痕跡を探し、そこで祭に思いを馳せようというのだ。
というわけで、何も催されてないだろう8月某日の日時を狙ってやってきたのは浅草。平日の昼間なら人混みに邪魔されることなく祭を感じられるはずだ!
まあ、この夏休みに人混みがないわけはなく、仲見世通りは人がごった返していた。
しかし浅草にはいくつも商店街がある。1番にぎわっている浅草寺、仲見世のエリアはとりあえず避け、方向オンチの勘に任せて乱暴に歩き出した。
そうはいっても、どこもかしこも人でいっぱいというわけではない。人気のエリアを避ければ十分に歩きやすい。
キョロキョロ祭の痕跡を探しながら歩く。やはりご時世か、あまり祭の痕跡は見当たらない。
商店街に差し掛かった。商店街はなにかしらの祭が催されがちだ。入ってみよう。
商店街は実に日常的な空気が流れていた。あまり観光客が入り込まないエリアなのか、気だるそうなおじさんやおばさんがポツポツいらっしゃるくらいだ。
しばらく歩くと、大きな垂れ幕が見えた。
浅草サンバカーニバル、聞いたことある!浅草の地をサンバの集団が踊りあかすヤツだ!
調べたところ、例年は8月の終わりに開催されているようだが、近年は状況が状況なので延期している様子。今年は代替イベントのサンバフェスタを行うとのこと。
私は祭と聞けば、神輿やら縁日やらを想像していたが、もう全くの浅慮!遠目でもいいからサンバカーニバルの熱狂を見てみたいものだ。
だらだら歩いていると、普段は目に入らないようなチラシをクローズアップして見ることができる。
チラシをバシャバシャ撮っていると、自分が何らかの研究者であったかのような錯覚をする。あるいは変人の奇行か。
何枚か撮ったので気になったものを紹介。どんどん行きます。
隅田川とうろう流し。これこれ、こういうの探してた。
できれば仮組されたテントとか屋台とか見たかった。そういったものを見ながら焼き鳥を食べ、思いを馳せれば疑似祭体験になるだろう。なんだ疑似祭体験って。
あったらいいな!こんな伝統工芸品デザインコンテスト。
これもまた一種の祭り。小学生たちがお互いのアイデアをお神輿にぶつかり合う、アイデアのけんか祭と言っても過言ではない。
…いや、過言だわ。
浅草すしや通り商店街大感謝祭。
商店街、縁日、抽選会。祭のフルコース。とっくに終わっていて残念だが、会場案内図を見ながらどんな感じで開催されていたか想像しながら商店街を散策するのも乙だ。そうすれば、あなたにも存在しない祭を幻視できるようになるはずだ。
浅草ニューオリンズフェスティバル。人はどうしてコンサートをフェスティバルというのか。
人がいっぱいいれば、そこはもう祭認定を受けるからだ。だからインターネットも祭みたいなものです、いいね?
しかし歩けど歩けどこんな祭がありますよ、とか祭がありましたよ、みたいな掲示しか見ることしかできていない。
疲れがどっと押し寄せてきた。仕方ない、今日のところは諦めて浅草寺にお参りでもしてから帰ろう、と浅草寺に足を向けた。
浅草寺に辿り着く。雷門を一目も見ないで帰るのはある意味リッチな浅草の歩き方かもしれない。
昼ご飯も食べないまま、2時間以上は歩いただろうか。どこかで腹ごしらえでもするか、と仲見世の方向へ向かう。
すると、お店のショーウインドウに祭の文字が見えた。
神社仏閣には祭がある。基本ルールだ。
しかしこのお店、やたら祭の字が見える。なんだ?正面のほうへ回ってみると…
祭用品店!?思わず吸い込まれる。所狭しと祭グッズ、法被やら手ぬぐいやらが並ぶ。あー、これをお祭り野郎のみなさんは着ているのか。
もう祭への馳せが止まらない。頭の中で「お祭りマンボ」が爆音で流れ出す。
ここが今日のゴールで間違いない、調査終了だ。
祭を感じるには、やはり豊かな想像力が大切だ。わずかな情報をもとに、風景、音、味を幻視する。
それにはやはり現地に行って、そこが実際どんな空気感の土地であるか観察することが大事だと思う。
祭用具店見つけた興奮で、結局なにも食べずに最寄り駅まで着いてしまった。
帰路の途中でコンビニによる。祭調査の余韻か、思わずソース焼きそばを買う。帰宅してすぐに食べた。
やっぱり飽きたな、ソース味。あーあ、結局普通にお祭り行きたくなっちゃったよ。
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