~フィンテック・ロボティクス~シリコンバレーの一流投資家が教える世界標準のテクノロジー教養 山本康正(著)を読んで③
SaaSやリテールテックについて、前回の記事にて述べましたが、この記事では第四章から第五章について触れて、個人的にコメントをしたいと思います。※前回の記事は以下のとおりです。
1.第四章 フィンテック データが創る新しい経済
第四章では、日本がフィンテックで遅れている原因や、この現状を打破するための議論をフィンテックベンチャー金融事情に詳しい北村充崇氏と議論しています。
フィンテックとは
フィンテック(FinTech)とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融サービスと情報技術を結びつけた様々な革新的な動きを指します。身近な例としては、スマートフォンなどを使った送金もその一つです。
近年フィンテックが世界的に広がっている背景としては、リーマンショックにより、「金融の自由化」、「規制緩和」、「低金利」が進み、世界的な金余りとなっています。そこで積極的な融資先を探すための方策として、AIやテクノロジーを活用したフィンテックが注目されているところです。
日本がフィンテックで遅れている理由
フィンテックは主にイギリス、アメリカと中国で発展し、日本ではまだその浸透が海外に比べて進んでいないといわれています。
日本でもキャッシュレス決済の普及を図るためのキャンペーンも行われていましたが、スーパーなどでの買い物を現金で決済している方も多く見受けられると思います。
しかし、中国では現金を使う人はほとんどおらず、QRコードによる決済が進んでいます。
本書では日本がフィンテックで遅れている主な理由として、経営層がデジタルに積極的でないなど、他の分野と同様の理由を挙げています。
フィンテック導入のためには
日本では、ハードウェアのテクノロジーで一歩先を進んでいたにも関わらずデジタル化に活用されなかった事例としてi-modeやQRコードを紹介しています。
技術をグローバルスタンダードにしていくために重要なこととして、北村氏は以下のように答えています。
「頭取や社長といったトップ中のトップが、もっとシリコンバレーを直に見て、アメリカと日本の差を肌で認識し、危機感を持って会社の方向性を考える必要性があります」 「シリコンバレーの一流投資家が教える世界標準のテクノロジー教養 山本 康正(著)」より
amazonなどのデジタル企業はテクノロジーやビックデータを背景として、身近で不可欠な存在となりつつある今、国内の金融システムを大きく変える可能性があるといえそうです。
2.第五章 ロボティクス 人と機械の共生
第五章では、著者のビジネスパートナーであり、ロボティクスの技術にもビジネスにも精通するQ・モティワラ氏に話を伺っています。
ロボティクスとは
ロボティクスは、日本語に訳すと「ロボット工学」です。辞書では「制御工学を中心に、センサー技術・機械機構学などを総合して、ロボットの設計・制作および運転に関する研究を行う」とまとめられています。そして、こうした学問をビジネスに応用することを指す言葉としても我々は認知しています。 「シリコンバレーの一流投資家が教える世界標準のテクノロジー教養 山本 康正(著)」より
日本においては、少子高齢化による労働人口の減少が予測されており、日本に限らず、欧米諸国にも同様の現象が今後起きることが考えられます。
ロボティクスの技術をいかにして社会に取り入れていくか考えることは有意義だと思います。
日本の強みと弱み
モティワラ氏は日本のロボティクス技術に対して、以下のように述べています。
ハードウェアやモーションプランニング(タスクに応じてロボットの動きをスムーズにするための技術)の技術はとてもすばらしい。一方でソフトウェアについての弱点があります。 「シリコンバレーの一流投資家が教える世界標準のテクノロジー教養 山本 康正(著)」より
ソフトウェアの弱点でいうと、世界ではクラウド型が主流になっているにも関わらず、日本では組み込み型のソフトウェアが多く、AIを活用した付加価値をつけることが難しいといえます。
もう一点は、UI(ユーザーインタフェース)やUX(ユーザー体験)が他国と違いすぎる点です。そのような状況では、他国への拡大は難しく、たとえばシンガポールのエンジニアは、日本よりもはるかに容易に他の東南アジア諸国や欧米に対して価値のある提案ができます。
ロボティクス分野をさらに発展させるための方策
上記のソフトウェア分野の弱点への対応が必要なことはもちろんですが、本書では日本はロボティクスに対して
・ロボットが起こす事故への不安
・ロボットが仕事を奪うという認識
という根本的な意識の問題があると指摘しています。
事故への不安については、結局のところ人の監視が必要としており、最初は1台1人の監視体制で仕事を進めるようなイメージです。次第に4台1人というように効率化することは可能ですが、事故のリスク回避と効率化をどのように達成するかは難しい判断となりそうです。
また、ロボットが「仕事を奪う」というイメージについては、「人間が本来の仕事に集中できる環境を整備すること」という根本的な目的に基づいて普及することが重要になりそうです。
いずれにしても、これからの日本の労働人口減少に対して重要な役割を果たすことになるロボティクス分野についても、引き続き理解を深めておくことは重要だと感じました。
第六章以降の内容については、改めて書きたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。