そうか、押し売りじゃなかったのか。
それは2018年の夏。一ヵ月、中東パレスチナに暮らしていた時のこと。
私がいた町ヘブロンには旧市街と呼ばれるものすごく歴史の古い区域があって、世界遺産であり、石造りの家々が保存されていました。観光地なので、バスでツアー客がやって来て手工芸品や地元のお菓子を買い求める、そういうエリアです。
ただ、このエリアは陳腐な表現で言うと係争地で、パレスチナの占領状態が顕著に見られる場所。そのため、直接の危害があるかないかに関わらず、政情によって観光客の足が遠のいてしまうこともしばしばあって、観光産業が安定していません。
そういう背景もあり、お客さんを見つけるとどこからか現れるある商人がいました。
ちょっとした雑貨を手に、買わないかと声をかけてくるのですが、これが私にはなかなか断りづらく。
多少価格が盛られていても、買いたいな、と思うものならいいのですが、贈る相手も思い浮かばない場合は困ってしまいます。
この経験があって、旧市街へは用事をまとめて行こう(もしまた出会ったら入場料だと思おう)、と思ったのですが、先日配信イベントのアフターで、
「実は、パレスチナで苦い経験がある」
と切り出すと、他の登壇者から
「いや、そんなの可愛いもんだよ」
と言われたのです。
・・・え?
旅慣れた彼女曰く、
例えば、物売りの人は500メートル離れた道路の反対側からでも声をかけてくるし、追い払ってもどこまでもついてくる人もいる。ただ商品を見せるなんて可愛いもんじゃなくて、ブレスレットを腕にはめてきてお金を請求する人もいるんだよ。パレスチナにいた時は、そういうことが全くなくて心が落ち着いたよ。
ほほう。
まだまだ小さな私の社会経験。
彼女と一緒に旅した女性も、
○○はパレスチナにいた時は本当リラックスしてたよね~
と証言。彼女の数あるサバイバル体験を聞けたのも有意義でしたが、私の中の苦い記憶が溶けていったそんなアフターでした。
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