【DAY 24】睡眠と長寿
みなさん、「寝る子は育つ」という言葉をご存知でしょうか?
実は、この言葉には科学的な根拠があり、良質な睡眠は成長期だけでなく、私たちの寿命にも大きく影響していることがわかっています。今日は、睡眠と長寿の関係について、最新の研究結果とともにお話ししていきます。
1. 睡眠時間と寿命の関係
1.1 適切な睡眠時間
研究によると、夜間7-8時間の睡眠を取る人が最も長寿である傾向が示されています(Cappuccio et al., 2010)。短すぎる睡眠(6時間未満)や長すぎる睡眠(9時間以上)は、逆に寿命を縮める可能性があることがわかってきました。
しかし学生など伸び盛りの時期においては9時間以上とることも大切です。
1.2 睡眠の質と寿命
単なる睡眠時間だけでなく、睡眠の質も重要です。深い睡眠(徐波睡眠)を十分に取れている人ほど、健康寿命が長いという研究結果が報告されています(Mander et al., 2017)。質の良い睡眠は、体の回復と修復を促進するんです。
深い睡眠の割合は歳を重ねるごとに少なくなっていきます。これは自然なことなので気にする必要はありません。世代別に睡眠に対する考え方や取り組み方を変えていくことが大切です。
1.3 睡眠パターンの安定性
規則正しい睡眠パターンを保つことも長寿に関係しています。就寝・起床時間が安定している人は、不規則な人と比べて平均寿命が長いことが示されています(Luojus et al., 2021)。
毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝ることが睡眠パターンを安定化させることにつながってきます。
平日と休日の就寝・起床時刻で2時間以上の差がないようにしていくことが社会的時差を防ぐ上で大切です。
2. 睡眠が寿命に影響を与えるメカニズム
2.1 細胞の修復と再生
良質な睡眠中には、細胞の修復と再生が活発に行われます。特に成長ホルモンの分泌が促進され、老化の進行を遅らせる効果があります(Van Cauter et al., 2018)。
これまでの記事で成長ホルモンの大切さについては何度も触れてきました。就寝から2時間の睡眠の質を高めることが分泌を促す上で大切です。
2.2 免疫システムの強化
深い睡眠は、免疫システムを強化します。質の良い睡眠を取ることで、病気への抵抗力が高まり、様々な疾病のリスクが低下します(Besedovsky et al., 2019)。
これもご存知ではないかと思います。良質な睡眠を取ることは体の免疫力を高めることにつながり、健康的な体の維持につながります。
3. 長寿につながる睡眠習慣
3.1 生活習慣病の予防
適切な睡眠は、糖尿病、高血圧、心臓病などの生活習慣病のリスクを低減させます。これらの疾病の予防は、健康寿命の延伸に直結します(Grandner et al., 2016)。
3.2 認知機能の維持
良質な睡眠は、脳の健康維持に重要な役割を果たします。アルツハイマー病などの認知症リスクを低下させ、健康な脳機能を保つことができます(Spira et al., 2013)。
まとめ
良質な睡眠は、私たちの寿命に大きな影響を与えます。適切な睡眠時間の確保、睡眠の質の向上、規則正しい睡眠パターンの維持が、健康長寿への重要な鍵となります。
次回は、「睡眠とクリエイティビティ」についてお話しします。
お楽しみに!
参考文献
Besedovsky, L., et al. (2019). "Sleep and immune function." Pflügers Archiv - European Journal of Physiology, 471(4), 673-685.
Cappuccio, F. P., et al. (2010). "Sleep duration and all-cause mortality: A systematic review and meta-analysis of prospective studies." Sleep, 33(5), 585-592.
Carroll, J. E., et al. (2016). "Sleep and telomere length in older adults." SLEEP, 39(3), 559-564.
Grandner, M. A., et al. (2016). "Sleep duration and cardiovascular disease: Results from the National Health Interview Survey." Sleep, 39(9), 1583-1588.
Luojus, M. K., et al. (2021). "Sleep timing and longevity: A longitudinal study." Chronobiology International, 38(4), 544-551.
Mander, B. A., et al. (2017). "Sleep and human aging." Neuron, 94(1), 19-36.
Spira, A. P., et al. (2013). "Poor sleep quality and cognitive decline in older adults." Journal of the American Geriatrics Society, 61(2), 251-262.
Van Cauter, E., et al. (2018). "Impact of sleep and circadian disruption on energy balance and diabetes: A summary of workshop discussions." Sleep, 41(5), zsy043.