経済的なコロナとの戦い / コロナショック・サバイバル
・コロナショックは、過去の危機を上回る破壊性をもっている
・危機の経営の第一のメルクマール(指標)は、生き残りであり、去った後の反転攻勢が重要
・時間軸では、L(ローカル)、G(グローバル)、F(ファイナンシャル)で重篤化する
上記の内容は、「コロナショック・サバイバル」に乗っている内容です。
著者は、経営共創基盤(IPGI)代表取締役を務める冨山和彦氏です。数多くの企業再生や経営改革に関わっており、NHKスペシャル「激震 コロナショック~経済危機は回避できるか~」に出演され、企業が危機的な状況におかれていることをわかりやすく説明されており、印象に残っている人も多いのではないでしょうか。著者は、経営共創基盤で、みちのりホールディングスの経営に関われており、日本の過疎地域のローカル事業に関わられている視点もあり、グローバルからローカルに渡り、深い見識を持たれています。(地方企業については、著者の「なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略」が学びになります)
リーマンショックよりも深刻なコロナショック
コロナショックと、リーマンショックの違いは、感染症リスクに備えるための経済活動の自粛からはじまっており、リーマンショックのときの金融からはじまった経済危機とは順番が逆であり、コロナショックのほうが影響は協力なものになります。経済活動の自粛で大きく営業を受けるのは、観光、宿泊、飲食、エンターテイメント、生活必需品以外の小売、住宅関連などのローカルサービスとあります。これらのサービスは、ローカルの中小企業が中心であり、こういうった産業は、リーマンショックのときには大きな影響は受けなかったが、コロナショックでは、こういったローカル企業が大きな影響を受けている。これは身の回りで起きているが、3月に大きなイベントはどんどん中止され、また4月には、緊急事態宣言により、ローカル毎に実施されるイベントの中止、飲食店さえも自粛され、完全に売上は停止しつつあります。
Uber Eats などのデリバリーや、テイクアウトや、ネットショッピングもたしかに増加していますが、影響は一部の企業や、事業の一部分でしかないのは明らかです。
そして、著者は、このコロナショックは、ローカル企業からグローバル企業へも波及するとあります。当初に考えられていたのは、中国などの生産が停止したことによるサプライチェーンの問題だったが、これから、急激な消費停滞による需要消滅、売上消滅に繋がり、企業の維持も厳しくなってくるとあります。
急激な消費停滞は、人々の心理的な影響であり、コロナにより個人の生活が脅かされ、また企業もどうなるかもわからない状態で、高価な耐久商材は購入しません。このタイミングで、家や車を借金をして購入するということは、相当なリスクがあるため、様子をみることになり、買い控えが発生します。これは、デリバリーや、ネットショッピングがあるという問題ではありません。テイクアウトでちょっと良いものを食べるようになったとしても、ちょっと良い「家」や「車」をローンを組んで購入しようとは考えられません。
企業は、売上は減ることになりますが、固定費がいっきに0にはならないため、キャッシュが流出するため、大企業であってもすぐに手元資金が枯渇します。この状態が、半年、1年と続くと企業の事業は回復が難しくなり、金融機関の融資が不良債権化していき、金融機関にも深刻なダメージを与えることになります。金融機関にダメージが深刻な場合は、今後、コロナが収束した場合に、設備投資や、高額な耐久商材を購入しようにも金融機関が融資が適切に行われないリスクが発生し、日本のバブル崩壊後の金融危機以上の影響がでる可能性がある
生き残るにはどうすればよいか
過去の多くの経営危機の乗り越えた経験や、リーマンショックの経済危機の経験から、著者がこのコロナを生き残る術を教えてくれる。
過去の経済危機では、「キャッシュ」「金融機関との信頼関係」「平時に稼ぐ力」「自己資本の厚み」と言い切っています。 「キャッシュ」は、緊急時の酸素ボンベであると述べていますが、この危機的状況にどれだけ耐えられるかが重要になる。しかし、長く続くとそれも厳しくなるため、金融機関から借り入れるために、「金融機関との信頼関係」「平時に稼ぐ力」「自己資本の厚み」が必要となるとあり、説得力のある言葉で語られています。
過去の経済危機の歴史において、同じ業種でも企業の生死を分けたのは、要するに危機到来時における、手元流動性(現預金)の潤沢さ、金融機関との従来からの信頼関係、そして平時における稼ぐ力(特に営業キャッシュフローの厚み)と自己資本の厚み、以上である
引用:冨山 和彦. コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.318-320). Kindle 版.
コロナのサバイバル術
著者は、日本の経済危機とリーマンショックの経験から、経営者に危機に対するサバイバル成功の心得として、8つの教えを伝授してくれています。どの心得も、著者の経験から説明されるために重みのある言葉となっています。
修羅場の経営の心得
- 1)想像力
- 2)透明性
- 3)現金残高
- 4)捨てる覚悟
- 5)独断即決
- 6)タフネス
- 7)資本の名人
- 8)ネアカ
引用:冨山 和彦. コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画
コロナのような世界的な経済危機のカオスな状況になってしまうと、平時のシステムをカオスの状況用にへのうする必要があり、いかに迅速に適用するかが求められています。3)の現金残高では、PLがどう変動しようが、利益が変動しようがどうでもよいと言い切っています。危機的なカオスな状況で管理するべきは、存続の命綱である「キャッシュ」になります。
危機が迫ったら、まずはこの仕組みを簡便なものでいいから、極論すれば毎日エクセル集計で構わないから整えることである。それから経済危機が長引きそうな場合、同時にこの先1年間くらいのキャッシュポジション・シミュレーションをいくつかのシナリオで用意し、そのモデルを随時アップデートしていく態勢も整えなくてはならない。
引用:冨山 和彦. コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.440-443). Kindle 版.
本書の最終章では、ポストコロナショックを見据え、危機が終わった後のビジョンをもつ必要があるとあります。そして、DXではなく、CX(CorporateTransformation)が必要とあります。CXについては詳しくは次回の書籍に記載されるとのことなのですが、ポイントはいくつか掲載されています。
まずは短期的にコロナショックを乗り切り、その後にどうafter コロナに向けて変化をしていくかについて準備をしつつ、次回書籍と照らし合わせてみたいと思えました。
まとめ
数々の修羅場を経験している経営者だからこその言葉の重みというのと、グローバルな企業とローカルな企業を見ているからこそ、幅広い視点となっていると感じました。
これを個人に置き換えてみると、企業と比べてセーフティーネットが多く存在しており、自己破産とまでいく可能性は低いのかなと感じました。そのうえで、この状況を耐えることで自らの肥やしとしつつ、次の変化を見据えて、どう戦っていくかを考えていく必要があると感じました。
経営者はもちろん、個人としてコロナへの向き合い方が学べる本だったと思います。
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