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彼女は悪魔か、不運な被害者か / 病魔という悪の物語

世界で初めて臨床報告されたチフスの健康保菌者
47名の感染者と3名の死者を出した、邪悪な感染源
亡くなるまでの23年以上もの間、隔離された不運な社会的な被害者

上記の内容は、「病魔という悪の物語 - チフスのメアリー(著)金森修」に掲載されている内容であり、メアリー・マローンという女性の話です。
彼女は、1900年代に、初めて存在を確証されたチフスの健康保菌者です。
新型コロナウィルスで話題になった、「健康保菌者」「無症状病原体保有者」。この人たちは、感染しても症状現れませんが、感染源として周囲に感染させてしまう恐れがあります。

この世界で初めての「健康保菌者」のメアリー・マローンから、「個人と全体の利害の対立」について考えさせられます。

新型コロナウィルスでも、「健康保菌者」「無症状病原体保有者」は存在していますし、そうでなくとも悪意なく「感染源」となってしまうケースもあると思います。そのときにどうあるべきかについて考えさせられる内容です。


チフスとは何か?

チフス(腸チフス)とは、サルモネラの一種であるチフス菌によって引き起こされる感染症の一種です。
チフスは、汚染された水や食物から経口感染し、菌が血液に侵入すると体温が40度前後までに上昇し、高熱が1〜2週間も持続するのが特徴。重症例になると、意識障害をおこし、2週間ほど経過すると超内出血が起きるとあります。

1900年代当時では、ニューヨーク市だけでも毎年3000〜4000人の患者がでていたとあります。チフスの致死率は高く、当時は非常に恐れられた病であったようです。

日本でも、昭和初期から第二次世界大戦後直後までは、年間4万件発生していたらしく、非常に感染力の強い危険な病気だと考えられていたと思います。

感染後、7〜14日すると症状が徐々に出始める。腹痛や発熱、関節痛、頭痛、食欲不振、咽頭炎、空咳、鼻血を起こす。3〜4日経つと症状が重くなり、40度前後の高熱を出し、下痢(水様便)、血便または便秘を起こす。バラ疹様皮疹と呼ばれる腹部や胸部にピンク色の斑点が現れる症状を示す[8]。
腸チフスの発熱は「稽留熱(けいりゅうねつ)」と呼ばれ、高熱が1週間から2週間も持続するのが特徴で、そのため体力の消耗を起こし、無気力表情になる(チフス顔貌)。また重症例では、熱性譫妄などの意識障害や難聴を起こしやすい。2週間ほど経つと、腸内出血から始まって腸穿孔を起こし、肺炎、胆嚢炎、肝機能障害を伴うこともある。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/腸チフス#症状

チフスのメアリー

メアリーは、アイルランド系の移民女性で、ニューヨーク市周辺で家事使用人(調理人)として働く女性でした。料理の腕がよく、人柄もよく信頼を集め、住み込み料理人として富豪宅に雇われ、よい待遇で働いていました。

メアリーは、当時は一般的には知られていませんでしたが、「健康保菌者」でした。メアリーが雇われていた家で発生したチフスの原因調査を依頼された衛生士は、1897年からメアリーが雇われた8つの家族のうち、7つの家族がチフスに感染し、22人が感染し、1人が死亡していることを発見します。
そして、強制的にメアリーの身柄を確保し、検査を実施したところ、チフス菌が検出されました。

メアリーは、その後、天然痘や結核などの患者が収容される病院へ収容・隔離されます。感染症の患者が収容される病院は、食事を摂り、眠るだけの生活です。メアリーは、健康であり、当時は「健康保菌者」ということが一般的ではなかったため、自身の置かれている状況に納得がいかず、市衛生局に隔離中止の訴訟を行います。

訴訟は、市衛生局が勝訴しましたが、最終的にメアリーは、(1)食品を扱う職業には就かないこと、(2)定期的にその居住地を明らかにすることを条件に、隔離病棟からでることを許され、再び外にでられることになります。

しかし、釈放から5年後、偽名を使い、調理人として働いていました。そこで、チフスの25人の感染者と2人の死者を出しました。そして、メアリーは、再度隔離病棟へ収容されることになりました。メアリーは、「毒婦」「無垢の悪魔」といったイメージを刻み、亡くなるまで、隔離病棟で過ごすことになりました。

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引用:wikipedia

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「無垢の悪魔」なのか?

メアリーに対して、どのように感じたでしょうか。
全体の利益を残った「邪悪な感染源」といえるかもしれませんし、悪意をもって罪をしたわけではないため、「不運な社会的な被害者」といえるかもしれません。(偽名を使い、調理人として働いたところで意見が分かれる部分ではあると思いますが)

ただ「個人に罪はないが、周囲に悪影響を及ぼすケース」は、身の回りにもたくさん発生していると感じました。

・この子がいると、授業が進まない。
・この人がいると、手間がかかる。

生産性や効率と、「病」は、リスクがまったく異なりますが、
個人と全体の利益が相反するという部分では共通する部分があります。

「悪魔」というのは、全体側から見た答えであり、個人の利益については、まったく言及することのない側の意見だと感じますが、どうでしょうか。

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「不運な社会的な被害者」に何ができるのか?

考えさせられたのは、「全体側にいる人たちが個人の立場」になって考えることの難しさです。

新型コロナウィルスに感染したかもしれない(無自覚)な人たちが、外出していることに対して、「石」を投げることは簡単です。しかし、なぜ、その「個人」が、外出してしまったか、外出しないようにするには、どうするべきだったのか、全体側にいる人として何ができたかまでは考えることはできません。

全体の利益を考えろという言葉は安易にいえてしまいますが、では、全体は個人に対して何ができるのでしょうか。

・罪はないが悪影響を及ぼす個人をどう思いやれるのか
・どうずれば、個人の利益を全体がカバーできるのか

これからの新型コロナウィルスの感染者や健康保菌者に対して、僕たちがどう接するべきかを考えるきっかけになる作品だと思いました。

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