個々のメンバーが賢かったからではない。彼らは賢く協力したのだ / THE CULTURE CODE
・パフォーマンスを左右する要因が組織力からチーム力へシフトしてきる
・成功しているチームがもつ3つのスキル「安全な環境」「弱さの開示」「共通の目標」
・様々なチームの事例「NBAチーム」「軍の特殊部隊」「宝石窃盗団」「ベル研究所」「IDEO」「核ミサイルの発射チーム」「コールセンター」、etc
上記は、「THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法」に載っている内容です。
組織力からチーム力
監訳者 まえがきにて、下記の内容を記載されています。
・パフォーマンスを左右する要因が組織力からチーム力へシフトしている
・組織力は、コモディティ化してしまっている
これらは、経営に関する知見の流布により、「優れた組織」の設計が特別ではなくなったため「組織力」が競争力の差にならなくなっていると指摘しています。
実際に、スタートアップなどの新しい企業であっても、投資家やスタートアップのネットワークから、どういう人材を採用すべきかという話から、どういう組織にするべきだとう情報を耳にすることができます。
監訳者は、多くの企業が「優れた組織」の設計をしているのであれば、会社の仕組みよりも、メンバーがどれだけ力を発揮するかが差別化の要因になってくると指摘しています。
本書では、このチームの力を最大限に発揮する方法について、チームに関する豊富な事例が掲載されており、組織やチームに関わる人は必読の一冊だと感じました。
組織力の優劣は一義的にはトップマネジメントによる構造や制度、システムの設計にかかっている。かつては分業の体系や権限の配置、報酬システム、レポーティング・ラインの設計といった組織力を構成する要素が重要な意味を持っていた。しかし、今日では情報技術の進展や経営に関する知見の流布によって、「優れた組織」の設計はそれほど特別で困難な仕事ではなくなった。組織力では大きな差がつかなくなった。「優れた組織」はコモディティ化しつつある。
引用:ダニエル・コイル,楠木建. THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.32-37). Kindle 版.
ビジネススクール学生 vs 幼稚園児
デザイナーのピーター・スキルマン氏が、「マシュマロ・チャレンジ」とう実験を行いました。
その内容は、限られたパスタと、セロテープ、糸をつかって、高い構造物を作り、マシュマロをどれだけ高い位置におけるかというもものです。
参加者は、ビジネススクールの学生から幼稚園児まで参加しましたが、結果は、幼稚園児が平均66cmに対して、ビジネススクールの学生は平均25cm未満でした。
ビジネススクールの学生は、合理的に話し合いをしながらすすめ、幼稚園児は好き勝手に取り組んでいました。一見、ビジネススクールの学生の進め方のほうが効率的に思われます。しかし、本書では、チーム単位でみると、幼稚園児の行動が効率的で効果的であると述べています。ビジネススクールの学生は、自分の立ち位置や空気を読みながら作業をしており、作業に集中ができていないとあります。しかし、幼稚園児は対等の立場でただ目の前の作業に没頭することができていました。
幼稚園児は、問題を見つけるとすぐに手助けをし、リスクをとって挑戦し、失敗から学び効果的な解決策を見つけ出します。
ビジネススクールの学生の行動は、ビジネスの現場でも多く発生しています。同じチーム内で同じ課題に取り組むメンバーであっても、空気を読んで発言します。会議ではマネジャーや声の大きいメンバーばかりが発言し、他の参加者は発言をしません。失敗をすると評価がさがってしまうと考え、あえてリスクをとって挑戦せず、失敗から学びを得ることができません。
安全な環境をつくるスキル
成功しているチームには、3つの共通なスキルが存在しているとあります。「安全な環境」「弱さの開示」「共通の目標」です。
その中の「安全な環境をつくる」と「弱さを共有する」は、google のチームの効果性に影響する因子として有名な「心理的安全性」に相当すると感じました。
google の事例では、google だからだよね?という気もしてしまいます。しかし、本書では、多くの業界・事業の成功事例を出すことで、これらがどのような業界においても「成功しているチーム」において共通しているということが分かります。
「安全な環境をつくる」では、インドのバンガロールにあるウィプロのコールセンターの事例が紹介されています。2000年代後半のウィプロでは、離職率が毎年50〜70%という高い数値になっていました。ウィプロの経営陣は、給与や福利厚生などのインセンティブを増やすことで離職を減らそうとしましたが、効果がでませんでした。
そして、ウィプロは、通常の研修に加え、下記研修を追加して変化をみる実験を実施します。
・グループA:自社のアイデンティティを学ぶ研修を実施
・グループB:参加する社員のアイデンティティを考える研修を実施
・グループC:何もしない
結果は、グループBの離職率が一番低くなる結果になりました。会社のアイデンティティやビジョンを学ぶことは有用だと考えられていますが、それ以前に、会社と個人の間に帰属意識が生まれたからです。
企業は、人材採用をする際に、会社のアイデンティティやビジョンを伝え、企業や事業に共感できるメンバーを採用しています。しかし、それでも離職率が高いままといった企業は多くあります。
企業と個人の想いは、マッチしているのに離職してしまっているのは、ここにあるような帰属意識が生まれていないからではないでしょうか。
実験から7カ月後、さまざまな数字が上がってくると、スターツは「思わずわが目を疑った」と言う。グループ2の研修を受けた社員は、グループ1に比べ、会社に残る率が250パーセントも高かったのだ。何の条件も与えられない統制群と比べても157パーセント高い。あの1時間の研修が、グループ2と会社とのつながりを一変させたのだ。当初は会社に何の思い入れもなかったが、研修を受けたことで、精神的な深いつながりを感じるようになった
ダニエル・コイル,楠木建. THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.918-923). Kindle 版.
ナイキスト
本書のIntroductionで紹介された「マシュマロ・チャレンジ」で幼稚園児がビジネススクールの学生よりも高い成果を残したことについて、このように記載しています。
「幼稚園児チームの勝因は、個々のメンバーが賢かったからではない。彼らは賢く協力したのだ」
メンバーのスキルが高いことよりも、チームとしてのスキルが高いことが重要になります。本書のなかで、ベル研究所の事例で、同様のことが言えます。
ベル研究所とは、7組13人ものノーベル賞を排出する成功した研究所であり、多くの優秀な研究者が所属していました。ベル研究所は、自分たちの成功した要因を調べるため、研究者のなかでも特に特許数の多い研究者の共通点を調べました。調査結果から共通点は、専門分野でも、受けた教育などではなく、『同じ研究所の「ハリー・ナイキスト」と一緒にランチを食べている』ということでした。
ナイキストとう人物は、優秀ではあるが、ベル研究所の中では、「普通」の存在だったといいます。ナイキストの特徴は、人柄がよく、好奇心旺盛で違う分野の研究者同士の交流に積極的だったことです。
ナイキストと話した研究者は、「彼と話すと色んなアイデアが引き出される。」と回想しています。
ナイキストの事例からは、個々のメンバーが優秀であることよりも、チームとして優秀であることが大切であることがわかります。ナイキストは多くの研究者と話すことで相手のアイデアを刺激し、成果を出すことに貢献したのです。ナイキスト自身が特許の数が多かったわけでも、とりわけ優秀だったわけではありません。
ビジネスの現場において、お互いの目標に対して、幼稚園児のように立場の関係なく、助けを求めたり、相手に意見をいったり、チャレンジや失敗を推奨できている環境はあるでしょうか。会社という枠組みに囚われ、空気を読んだ行動をしていないでしょうか。
ナイキストはあまりに普通の存在なので、研究所内ではほとんど透明人間のようになっていた。つまり、歴史上もっともクリエイティブな場所の1つに数えられるベル研究所で、もっとも重要な人物は、ほとんど誰も気にとめないような存在だったということだ
ダニエル・コイル,楠木建. THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2595-2597). Kindle 版.
まとめ
本書では、語りきれないほど、賢いチームを作るためのチップスにあふれています。組織に行き詰まっている経営者、マネジャーはぜひ一読ください。
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