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【ケア労働は、経済中心の現代社会に内包しきれていない?】フルタイムで働く一児の母にインタビュー

今回は、男性中心社会の中でキャリアを築いてこられた一児の母の方に取材を行いました。私は、子どものお駄賃制度に考えを巡らしていたのですが、そこから派生し、“そもそもケア労働が経済中心の社会に内包しきれていないこと”についてのお話になりました。私が聞きたかったお話よりも、さらに深いお話を聞いて来ました。

ー子どもがお手伝いをするときに、ある家庭では、お駄賃制度を導入しているところがあると思います。(トイレ掃除一回二十円とか)
私は、この制度に対して二つのことを考えました。一つは、お駄賃制にすることによって、「家事」が有償労働としての価値があることを教えてくれるということ。もう一つは、幼少期は、お駄賃をもらえていたものの、大人になれば、タスクの一つに過ぎなくなる。何をモチベーションに家事をするようになるのかといった疑問です。

ーお駄賃制度を導入して、子どもに家事を手伝ってもらうことに対して、どう思いますか?

🗣️お駄賃制度の善し悪しは、子どもの特性によって変わると思います。
フランスの思想家であるルソーは、「大人は、子どもに口だしをするのではなく、子どもの自発的な行動に対して補佐する存在になるべき」という消極的教育を提唱しました。子どもに色んな疑問を与え、大人はそれに対する答えを作らないことが重要であるようです。マニュアルのようなものにそってお手伝いをするよりは、お駄賃制度を用いて自由に家事を行う方が、成長に寄与するかもしれないですね。

ーたしかに、私が幼少期に家事を楽しんでいた理由の一つは、答えが用意されていなかったからかもしれません。
家電や器具の基本的な使い方等は覚えていたものの、家事ひとつ一つにルールがなかったことは、私の好奇心をくすぐっていたかもしれません。例えば、床拭きひとつとっても、どうやったらその汚れが綺麗に取れるのか、考えたり。棚にモノをしまう時には、次に取り出す時に楽なようにするにはどうすれば良いのか、など考える時間が楽しかったですね。

🗣️元 麹町中学校 工藤校長先生も「どうした?」「このあと、どうしたい?」「僕は何をしたら良い?」と子どもが自発性をもてる声掛けが重要だと言っていました。
家事のお手伝いでも、その子に「家でアルバイトしたい?(お駄賃制度で家事をしたい?)」と選択肢を与えて聞いてみることもできそうですね。また、それに対して、親がレスポンスすることも重要です。しかし、親は忙しくて、そのゆとりがなくてできないことも多いんですよね。

ー子どものゆとりのみならず、親のゆとりも必要なんですね。でも、それって共働きの場合、今の社会の仕組みでは難しくないですか?
共働きだと、子どもに向き合う時間はどうしても減ってしまいますよね?

🗣️そうですね。
日本では、ケア労働が経済中心の社会の外におかれがちな気がします。今までケア労働が経済社会に完全に内包された時代はなかったのではないでしょうか。縄文時代は、もしかしたらそうかもしれませんが…しかし、家事や育児などのケア労働とは、人間が生活する上で必須の存在です。ケア労働すべてを経済中心の社会でも内包することが重要だと思います。

ー社会で働く人々や、何か偉業を成し遂げる裏には、必ずケア労働があるのに、それが見えにくいんですね。

🗣️数年前に「アダムスミスの夕食を作ったのは誰か?」という本が注目されました。この本も、アダムスミスの偉業の裏側には、アダムスミスのケア労働を行った人がいると、伝えています。

ー実際に、フルタイムで働かれてきた中で、家事をはじめとするケア労働が経済中心の社会の外にあると感じることはありますか?


🗣️あります。
仕事が忙しすぎて、自分が生きていくためのケアは、全くできていませんでした。
1人暮らしのころは、仕事があまりにも忙しく、母親に週に1回、5千円を払って部屋を掃除してもらっていました。ご飯も外食か実家に帰って食べていましたし、家事的には破綻していましたね。
また、結婚して子どもが生まれてからは、家事や育児という仕事が増えても、それは生産性重視の社会の外の話。仕事量は変わらないので、自分のスケジュールをなんとか変えて頑張ってきました。しかし、自分のキャパを超えて、長い間、頑張ってきたのに、自分の現状には、「え、これ?」と思ってしまうこともありますよ。学生時代、ある程度いい仕事に就こう!といった圧があったけど、それってなんだったんだろうと思ってしまいます。(笑)

🗣️どう思いますか?

ー大学生になってから、どんな仕事に就きたいの?と聞かれることが増えました。その質問は、一見、女性にもキャリアのチケットをもらえたように思うんです。しかし、20代は本当にバリバリ働いてキャリアを築くと良い!などのアドバイスをもらうと、「ということは、キャリアと育児の両立はキャパオーバーだし、どちらかを選ぶしかないの?」と、迷走してしまいます。

🗣️子どもは、放っておいて育つ存在ではないです。お駄賃制度の話の時もあったように、ゆとりは、子どもだけではなく、育てる側にもないと、子育ては上手くいかないので、本当に難しいですよね。
親のメンタルリソースも、限られています。ともすると、仕事にその全てを取られがちになりますが、子育てには、養育費が必要だと今さかんに言われます。親のメンタルリソースも同じく必要ですよ。

ーどうやったら、ケア労働を社会に内包できると思いますか?

🗣️まずは、社会構造を規定する国会や会社の役員に当事者を入れるべきだと思います。組織を変えるには、決定権のあるところに当事者をおくところからだと実感しているのです。

ーしかし、ケア労働をしている当事者は、難しくないですか?

🗣️ある属性を一定の比率で入らなければいけない、とするクォーター制をぜひ強くすすめるといいと個人的には思います。そうすれば、少しずつ変わっていくと思います。


インタビュアー日記

ヤングケアラーや家庭内の介護、ワークライフバランスの難しさなどの家事にまつわる課題は、ケア労働が経済中心の現代社会に内包しきれていないことから派生した問題だと感じました。また、ケア労働は、経済活動を裏で支える存在とされがちであるが故に、専業主婦や主夫はキャリアとしてカウントされていないようにも感じます。家事にまつわる問題の中心核のようなものを見つけられた、貴重な時間でした。

取材・編集・作成:家事に恋する大学生



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家事に恋する大学生
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