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『まさかジープで来るとは』又吉直樹×せきしろ 「自由律俳句好きになってきた?」と、いざなって

○はじめに

このnoteは、本の内容をまだその本を読んでない人に対してカッコよく語っている設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『まさかジープで来るとは』又吉直樹、せきしろ

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【又吉直樹の作品を語る上でのポイント】

①言葉選びに注目する

②過剰なセンチメンタルさを指摘する

の2点です。

①に関して、又吉さんは『火花』で一躍有名になりましたが、小説だけでなくエッセイ、そして俳句も出していて、その言葉選びが繊細で上手です。しかも、ただ繊細なだけではなくてお笑い芸人らしい笑いの要素も取り入れてるので敵なしです。

②に関して、又吉さんの作品は彼のセンチメンタルさから来るものだと思います。何をするにも人の目を意識してしまい、その人の目を意識する自分すら、意識しているという、二重にも三重にもぐるぐるに巻かれた自意識から発される言葉が魅力的です。


○以下会話

■一般の人がスルーする言動にスポットライトを当てる

 「あ、この前お貸しした『カキフライが無いなら来なかった』ですか。気に入ってくれました。本当ですか良かったです。嬉しいです。

でしたらこの続編の『まさかジープで来るとは』も同じくらい面白いですよ。内容は前作と一緒で又吉直樹とせきしろさんの自由律俳句とエッセイが沢山編纂されてます。じゃあ、僕が気に入った何句か紹介しますね。

転んでも泣かなかった子供と目が合う

敗訴の文字が勝ったみたいに

カゴの中身でカレーとばれないか

何かを成し遂げた顔で始発を待っている

楽しんでますかとステージから何度も

飛行船が過ぎるまで空を見て中断

こんな感じですね。相変わらず面白いですよね。

特に「楽しんでますかとステージから何度も」とか想像すると笑っちゃいますよね。確かにバンドマンが観客に向かって「楽しんでますか」とか「盛り上がってますか」とかよく尋ねるけど、その言動を冷静に俳句にされちゃうと可笑しいですよね。

又吉さんもせきしろさんも、一般人がスルーする動作にスポットライトを当てて取り出すのがすごい上手なんですけど、少し間違えるとただのアルアルになっちゃうか、こんなの隠れてたぞっていう鬼の首を取ったドヤ感が出ちゃうんですよ。でも、二人とも俳句に昇華されてて、上品なんですよね。これは多分、根底に優しさが流れていて、日常に登場する全てのものに対して愛情深い目を注いでるからなんですよ。それを俳句に落とし込んでるから、読んでいて楽しいんですよ。

■俵万智の帯が素晴らしい

本文とは関係ないんですけど、この本の帯を歌人の俵万智さんが書いてて、その文章もめちゃくちゃ良いんですよ。

ストーリーはないのに、物語がある。いつまでも舐めていたい飴のような言葉たち。一粒一粒を、心のなかで溶かしながら、広がる風景を味わいたい。

どうですか、物凄く良い文章ですよね。確かに自由律俳句って、ストーリーはないのに、物語はありますよね。飴のように一粒一粒舐めていたいですよね。この言葉選び、感服ですよ。さすがサラダ記念日、脱帽です。

■クオリティの高い自由律俳句の凄さ

自由律俳句って良いですよね。自由律俳句といえば種田山頭火と尾崎放哉が有名ですよね。種田山頭火の句の中で好きな句が何句かあるんですけど、ある時その一つをど忘れしてしまったんですよ。その句を思い出す時に、「夕方、学校の帰りに下り坂を自転車でウワーってくだって行った時、小石を踏んじゃって、ズサーって自転車ごと転んで、痛〜って言って顔上げたら、車も人もいなくてシーンとしてて、自分一人が取り残されてる感じがした、っていう句なんだっけ」って思ったんですよ。そして後で調べたら、

すべってころんで山がひっそり

っていう句だったんですよね。あーそうだったって納得したと同時に、夕方学校帰りとか、自転車に乗ってとかの描写はしてないことに気づいたんですよ。だけど僕の頭の中では完全にストーリーが出来上がっていて、そこまで想像させる種田山頭火の力と、自由律俳句の広がりってすごいですよね。

あと今思い出したんですけど、小学生の頃都道府県名を覚えるために、「北海道はでっかいどう」的な感じで駄洒落で覚える問題集をやってたんですよ。その駄洒落の中で今でも覚えてるのが「滑って転んでおお痛県(大分県)」っていう駄洒落なんですよ。あれって種田山頭火を真似してたんですね。今気づきました。

実はこの『まさかジープで来るとは』今持ってるので貸しますね。また感想お待ちしてます。」


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