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【イベントレポート】このままで大丈夫? みんなで議論しよ! 広島市初(!)の「平和の推進」に関する条例

※※こちらの記事は一度別アカウントにて2021年2月15日に公開したものを改めてキャンペーンのnoteアカウントに転載したものです。条例案に関する市民意見(パブリックコメント)募集は終了しています(21.2.22記)。※※

みなさんこんにちは!
昨日、記事タイトルにあるように「このままで大丈夫? みんなで議論しよ! 広島市初(!)の『平和の推進』に関する条例」と題するイベントが開催されました。

ご存じの方もいるかも知れませんが、広島市は現在「広島市平和の推進に関する条例(仮称)」の素案に関するパブリックコメントを受け付けています。しかし、この素案の内容を巡り、これまで広島で平和に取り組んできた市民から疑問の声が複数寄せられる事態になっており、各所でこれに関するイベントや声明の発信が相次いでいます。

今回のイベントは同じようにこの条例案に疑問を抱いた有志で企画しました。この記事ではイベントの内容を紹介したいと思います。なお、パブリックコメントの募集締切は『本日2/15(月)!!!』となっておりますので、素案を読んで疑問・ご意見等ある方は、ぜひあなたの考えを市に届けてください!

広島市平和の推進に関する条例(仮称)素案
パブリックコメントの提出はこちらから

ではこれ以下より今回のイベントについて対話形式で振り返ってみたいと思います。発言者のお名前については初出のみフルネーム、二回目以降は敬称略とさせて頂きます。参加者のみなさんのお名前は伏せています。

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渡部久仁子さん(主催者):みなさま、本日はイベントにご参加頂きありがとうございます。主催者の一人の渡部久仁子です。今回のイベントは、条例案に疑問を感じた個人の有志によって企画しました。何か解決したり何らかの合意を目指すものではなく、情報提供や議論の場としたいと思っております。

私自身今回の条例案を読んで、被爆地広島初の平和推進に関する議員条例であるにも関わらず、
・核兵器禁止条約に一言も触れていない
・なぜこの推進条例をつくるのか納得できない
・条文が理解できない
・なぜ年度内成立を目指しているのか
など、疑問と不信感が募りました。

このイベントを開くことで、
①条例案の目的と作られた経緯を理解し、パブコメの作成に役立てる
②条例について意見交換をすることで条例について読む人、考える人を増やし、開かれた議論の場が必要であると市議会にも認識してもらう

以上の二点を達成したいと思い企画しました。

2月6日より条例案の作成に関わった委員9名全員に働きかけを行い、唯一、政策立案検討会議の委員の中森辰一議員が参加を快諾して下さいました。条例案の経緯だけでなく、可能な限り参加者の皆さんからの疑問にもお答え下さると伺っております。
委員のお一人という難しい立場にも関わらず、趣旨に賛同し、登壇いただけることにお礼申し上げます。

それでは、市議会議員、政策立案検討会議委員の中森辰一さんです。どうぞよろしくお願い致します。

中森辰一さん:みなさんこんばんは。検討会議の委員で、日本共産党会派から出ております、中森と申します。条例の経緯と目的を説明してほしいというご依頼があり参加しました。どうぞよろしくお願い致します。

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中森 辰一 議員

早速経緯の説明をしたいと思います。2019年の4月から新しい議会になっているのですが、改選前に、被爆者の高齢化を踏まえ、市の平和行政を存続させるための条例を作りたいという案が出ました。条例が必要かどうか、作るとしたらどのような内容になるのかなどについて、平和推進・安心社会づくり特別委員会で調査することが合意されました。
委員会の中で、広島市として何をやっていくべきか議論し、条例の必要性についてもさまざま意見がありましたが、改選後に条例策定について検討を進めてほしいという旨の提言が出されました。

(提言)平和の推進に関する条例案の策定に向けて
被爆者の高齢化も一段と進み、被爆者自身から被爆体験を直接聞けなくなるという現実を迎えようとしている中で、被爆者の願いを次の世代へ継承していくため、平和の推進に関する条例について、改選後に取組を進めることとしている議会による政策立案を行うための仕組みの中で、条例案策定に向けて検討されたい。
ー「平和推進・安心社会づくり対策特別委員会報告書」p.45 提言2より
(報告書全文はこちら。)

2019年6月に政策立案検討会議が設置され、初会合において平和の推進に関する議員提出の条例をつくる方向で議論を進める方針を確認し、大まかなスケジュールを作りました。

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広島市議会ホームページより

その後、条例の内容を検討するために、これまで平和に取り組んでこられた平和団体や個人のみなさんのご意見を聞こうということで、アンケートをお願いしました。今の平和行政にどんな意見をお持ちか、条例を作るということに対してどう思われるかをお尋ねするアンケートでした。
(約150団体に回答を求め、3団体の辞退の回答含め29団体が回答)
また、有識者85人にお願いした内、回答を得たのは31人、一般の方からは16人の回答を得ました。アンケートは2019年10月〜3月くらいの期間で実施しました。

そのアンケートを踏まえ、各会派で、どのような方向性でやっていこうか意見交換を始めました。まず4人のメンバーで構成されるワークグループが具体的な文案を作る作業を行い、それに基づき修正等検討を重ね、草案に近いものが完成しました。そしてそれを各会派に持ち帰り意見を出し、それらを検討会議にかけ、出来上がったのが現在の条例案です。

広島市平和の推進に関する条例(仮称)素案

条例の目的ですが、広島市は年間20億円超の予算を平和行政に扱っているわけです。これほどの規模の予算を平和に充てているのは広島市だけ。平和行政にお金を投じ続けていくことは共通の認識であり、そのような事業を広島市がこれからもやっていく必要があるが、市長がリードしていくものであるため、5年、10年と経った時、違う考え方の市長が登場する可能性もありますよね。そのときのために一つの枠組み、予算をこのように使おうというような根拠が必要ではないかということで、条例案を仕上げてきました。

アンケートで調べたとはいえ、十分不十分といったご意見はあると思います。さまざまな団体・個人の方からもらった意見が全部反映されているわけではないです。様々な会派が合意ができる範囲内での条例になってしまったという面はあるかもしれません。それについてはさまざまな意見をいただければと思います。また、このような大きなテーマを扱うのに2年という期間で良かったのかという考え方もあると思います、市民のみなさんとより広く考えていくという必要もあったのかもしれませんね。

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↑ ひろしま市議会だより296号(2021年1月発行)より


安彦恵里香さん(主催者):中森さんありがとうございます。ではここから質問に入っていきたいと思います。

(安彦)まず、一番最初にこの条例を作らなければいけないと言った人は誰ですか?

中森:前の期の平和推進・安心社会づくり対策特別委員会の方で作ったことなので詳細には分かりません。委員長がリードしたのかもしれないですが。前の期委員長は公明党の平木さんでした。

安彦:何を解決するためにこの条例が必要なんですか?

中森:先程も申し上げた通り、ずっと平和行政をやってきて、他の自治体にはない規模で予算を使って参りました。しかし根拠になる法的なもの(条例)が今までなかったので、これからも発展していくために、重要な理由として整備しようじゃないか、ということになりました。

特別委員会の提言にあった条例案策定に向けて検討されたい、という意見を引き取った形です。被爆者の高齢化が進む中でも必要という考えになったのではないかと考えています。

渡部:条例というものは、具体的に課題意識があるからこそ作られるものだという風に認識しています。先程お話に出たアンケートでは3つの質問がありました。「市の平和行政について感じていること」「条例の必要性や盛り込む内容」「その他(自由記述)」です。条例案を読むと、広島市の平和行政の定義が「核兵器廃絶と恒久平和」になっていて、具体的にやらなくてはならないことが曖昧な中でのアンケートだったのではないかという印象を持ちました。
どういう政策条例を作る、と説明をされたのか、あるいはもう少し抽象的だったのか、アンケートをお願いした際の説明を知りたいです。

中森:最大の理由は、特別委員会の平和推進に関する提言の2つ目を受けた形で作ることになりました。一つの大きな目的として、平和行政を行う上での根拠が必要ではないかということで、最初の条例づくりはこのテーマにしようということになりました。そしてアンケートを実施し、現在の行政についてのご意見、ご要望を伺いました。

渡部:アンケートは平和行政に特化した条例をつくるためのアンケートという認識で大丈夫ですか?

中森:平和行政はこのように進めていくべきだ、という内容を決めていくためにということですね。

参加者:私も有識者の一人としてアンケート回答を求められたが、当時多忙な中でアンケートに答えられませんでした。お詫びしたいです。
全体を見て気になったのは、「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式を,市民の理解と協力の下に,”厳粛”の中で行う」という点。なぜ「厳粛」という言葉がこの条例に入ってしまったのかを聞きたいです。

中森:ワークグループの方でたたき台が作られました。それに沿った素案になっているのですが、最初から「厳粛」という言葉は入っていました。
私はこの言葉に違和感を持ちました。単に「平和記念式典を行うものとする」でも良かったと思いましたが、大方の意見を反映をしたものになりました。

参加者(続き):憲法21条では表現の自由が保証されていますよね。条例として特定の目的の中で使うのは憲法違反になる可能性もあるのではないでしょうか。この文面は大変まずいと感じます。

中森:「『厳粛』という言葉に加えて、もっと文言を入れるべきだ」という意見もありましたし、「『厳粛』という言葉に違和感を持つ」という意見もありました。該当部分の他に、死没者の「慰霊」という言葉が入っていたのですが、これは宗教的な概念に関わる言葉だとして「追悼」に変えたというような言葉に関する議論はありました。「厳粛」という言葉がそこまで議論になるのかとも思う気持ちもある一方、議論が足りなかったという思いもないことはないです。式典外での音を規制することに対する議論が以前あったと思いますが、そういった動きとの兼ね合いももっと考えるべきだったという思いもあります。

参加者(続き):「ビラを配るときは警察に届けること」ということが以前サイトに載ったことがありました(撤廃されましたが)。平和運動を規制しようとする市側の思惑があったのではと疑ってしまいます。条例は市民の動きを守るものであってほしいです。

中森:広島市が規制条例に傾いていった時期がありましたが、議会は規制をするべきではないという立場でこれまで市とも議論をしてきました。

安彦:条例案は改変される可能性は高いと考えて良いですか?

中森:明日がパブコメの締め切りですよね。それも鑑みて議論することになると思いますが、今の検討会議の代表の意向では、明日から開かれる定例議会の中で、3月25日が最終日ですが、それまでに結論を出したいという思いがあります。個人的な思いとしては、この条例を議論する前も今も、より多くの市民の意見を聞いて作る方がいいのではという考えです。なのでそれも検討会議で訴えていきたいと思います。

安彦:結論を出すのが先送りされる可能性はありますか?

代表の思いとしては、この会期で結論を出したいということになります。

安彦:では私たちがパブコメを書いて、思いを反映してもらうことが重要ということになりますかね?

中森:パブコメについては、検討会議の中の議論で「どうするか?」という議論で終わってしまうかも。「いろんな人の意見を聞いて作るという進め方をしてほしい」という観点で議会に直接働きかけることがいいかもしれません。

安彦:働きかけるにはどんな方法がありますか?

中森:請願(紹介議員が必要)や陳情という形で、各会派に同じ思いの人たちがたくさんいるというのを示す必要があると思います。

渡部:条例案の第6条で「毎年8月6日を平和記念日とする」とありますが、広島市の条例としてすでにそれは定められています。改めてこの条例案に盛り込んだのはなぜですか?この項目が作られた経緯は?

中森:資料館を設置する条例など、平和に関わる条例はほかにもたくさんありますが、この平和に関する条例はそれらの中心になる条例という位置づけになるかと思っています。この条例で平和行政を賄う形で構成するという考え方で理解いただけたら。中身が重複するので広島市役所事務休停日条例は廃止されます。

渡部:イマイチよくわからないです。。。市としてはこの日は全人類が休日、という認識だったのですが、なぜ広島市役所事務休停日条例は廃止なんですか?

中森:広島市当局が廃止を提案しました。そもそも8月6日は休むという意味ではありません。

渡部:広島市の指摘があったから廃止?

中森:内容が重複すると指摘されたので廃止されました。

参加者:第2条について質問です。広島市や姉妹都市においては、核兵器廃絶に対する理解があると思いますが、一般的なものとしてこのように平和の定義が狭くなった経緯はどのようなものだったんですか?

中森:広島市はもっと広い定義をしていると思っています。例えば「市民の暮らしの安寧」という文言が秋葉元市長のときに作られた基本構想・基本計画の中にあります。個人的には、戦争紛争がないだけでなく、人々が安心して暮らせるという文言は必要ではないかという想いがあるが、結果としてこういう条例になりました。

参加者:こういうものに対して批判は多く出ても賛同は少ないと思うが、こういう中でも作ろうというのはすごいと思うし、敬意を表します。
お聞きしたいのは、これを作ることで変わっていくものだったり、最終目標など、どういうビジョンをお持ちですか?また、この条例の中に、何年かおきかに内容を検討し直すという文言を入れることは可能ですか?

中森:これをつくることによって広島市の平和行政がどのように変わっていくのかというゴールはないと思います。この条例をつくることによって変わることはなく、少なくとも、松井市長のスタンスでは、いわゆる平和行政はこれからも続いていくと思います。市議会のなかで、提言、提案をしていくものなので、それを市が受け止めれば新しいことをするかもしれません。
核兵器禁止条約を市としてどういう風に署名・批准を求めていくのかという議論も必要かと思っていますが、この条例そのもので、施策を変えていくというのはないと思います。また、再検討の文言を入れる考えは今の所ありません。もちろん変更は可能ですが、見直しをするという文言を入れる議論はこれまでないです。

参加者(チャットでコメント):
 まず、市議会議員の皆さまが広島市の平和行政についてこれまで協議・検討いただいていることについては共感します。
 そして、被爆75年を迎えた広島市にとって、これからの平和行政のあり方は大きな課題であると理解しています。
 そこで、この度、広島市平和推進条例(仮称)の素案が示されたことについて、進め方と内容について意見交換できれば幸いです。
 進め方について、既に市議会での協議や市民活動団体等へのアンケートを実施されていると思いますが、先に述べた通り広島にとってとても重要なテーマなので、もう少し丁寧な協働プロセスや熟議が必要かと感じます。
 次いで、内容について、平和の定義付け(SDGs等のグローバルな観点から、もう少し多様なあり方や表現が必要かと思います)や市民への強制感が気になります。
 特に、私は日頃よりNPOや地域活動の支援を行なっている立場から、平和や市民活動は市民が主体的に行うもので、行政が主体性を努めさせるものではないかと認識しています。
 そのような意味から、第5条については、現在の文案でなく、例えば「本市は、市民の平和の推進に関する活動に協力するとともに、平和の推進に関する施策を積極的に行うよう努めるものとする。」といように、主語と対象者が反対かと考えます。
参加者:黒い雨についての文言が取り上げられているのはいいが、議論が続いていることではなく、その問題が無視され未だ解決されていないことが問題。被害者の救済がまだできていない、被害の実態はまだ明らかになっていない、というような踏み込んだ内容を明記してほしいです。

中森:市民の役割については、会派として無くていいんじゃないかという意見を出しましたが合意には至りませんでした。
黒い雨の問題は短く簡潔に示したかったが、中途半端になっているという感じは否めないと思います。判決がはっきりする状態ではなかった時期に書かれたので、文章の書き方を変えることは提案したいです。
核兵器禁止条約については検討委員会の中でもちろん議論されました。議会としても国に対して3回は意見書を出しています。条約ができた後も署名をしてほしいと意見書を出していて、50ヶ国批准した際も提出しました。当然議会もそういう方向にあるのは間違いないが、条約はどうなるかわからないという考えが議会の中で強いのが現状です。

参加者:でも条約はもう発効しています。

中森:発効する前の段階の文書だったということがあると思います。

渡部:この平和条例と広島市基本構想の関係性についてお伺いしたいです。

中森:はっきりいって、条例を作るにあたって、少しは考えていた議員はいたとは思いますが、関係性についてはほとんど議論されていないと思います。

渡部:さまざまな条例の中で平和が定義されているが、いってることがバラバラだと定義が曖昧になると思っています。"平和条例"という大きな名前で作られているが、報道では政策立案検討会議で代表を務める若林議員が定義について「焦点がぼやけるので核兵器に絞った」と話しています。
他条例との整合性や条例案自体のロジックについて不正確さを感じます。

中森:平和の定義については、一番最初のどういう内容にするかという意見交換の中で議論されました。戦争というものが環境であったり人々の暮らしと無関係に起きているわけではなく、飢餓であったり希望がないというような、戦争の起こる背景なども含めて考えていく必要があると思いますが、若林議員的にはこうなったと考えています。

渡部:被爆75年のタイミングで出したいという気持ちはわかるが、政策条例を作るということは何かを変えないといけないということだと思います。原点に戻るが、なぜこの条例は作られたんですか?

中森:別な条例を作ろうという提案、要望もしたが、平和の条例について、前の特別委員会で提言があったので作りましょうということになりました。何か目的があって作ったということではありません。

渡部:前の期から条例を作ってほしいという要望があったから?

中森:経緯について詳しくはないですが、提言があったからということですね。前の期の報告書を見ていただければ分かると思います。

安彦:その経緯に詳しい人は誰ですか?

中森:前の委員の方たちになると思います。

参加者:前文にある「核兵器廃絶に向けて」多くの課題があると書いてあるが、具体的にどのような課題があるとお考えですか?課題設定に関しては前期の方がされたんでしょうか?

中森:課題設定に関して、世界情勢を鑑みてということではなく、被爆者の高齢化から引き継いでいく必要があるという認識から、具体的に新たな施策を進めていくという意味で条例を検討することになったという流れです。核兵器を持っている国、核の傘の下にある国々がいることを踏まえ、たくさんの国が参加するには実現までに多くの課題があるという意味合いになっていると思います。

安彦:前期の委員は誰だったんですか?

中森:委員長だった平木さん、原さん、米津さん、安達さん、村上さんはやめていますが、それ以外のみなさんは残っています。誰の発言かは書いていませんが、報告書の文書からどういう議論をしたかは分かると思います。


↓報告書(名簿はp. 48)

参加者:第5条について、これは市民の平和活動を規制するように聞こえるが、このままでいいと主張した方々のロジックはどういったものだったのでしょうか?
(第5条: 市民は,本市の平和の推進に関する施策に協力するとともに,平和の推進に関する活動を主体的に行うよう努めるものとする。)

中森:個人的には市民の役割については書かなくていいと思っています。しかし、私の意見は合意になりませんでした。それについて何か意見があったという記憶はありません。

参加者:市議会や市民についての役割は明記されていますが、市長についての役割は書いてないですよね。それについての議論はなかったのでしょうか?

中森:市長=市という認識ですね。

参加者(続):市長って書かなくても、市の責務になるってことですね。
もう一つもやもやするのは、タイトルと中身のずれですね。「平和の推進に関する」というタイトルはもう一つ上の次元のような気がします。この中に核廃絶であったり、他にもいろんなVERSIONが加わっていくのならまだいいと思いますが。平和の他の観点について、誰かが要求すれば加えられたりするのでしょうか?

中森:なんのために作るのかというところで、3条で本市の責務とある通り、広島市が平和行政を進めていく上で必要になるという意味で作られました。また、9条では、必要な財政上の措置を講ずるということに関して書いてあり、私の方ではこの3条と9条はポイントになると思っています。これから条例の内容について意見を出す中で、変えることが可能かという点では、大きな世論になるものは政治が動いて行くべきだと思っているし、そうなればそれが反映されることもあります。大きな世論を市なり議会なりにぶつけていくと変わっていく可能性があると思います。

参加者(続):核兵器廃絶について財源をかけることに反対する人はいないと思います。この条例案のタイトルをみて期待してしまう部分があるのですが、内容を見ると核兵器廃絶のことについてしか言っていないからもやもやするのかも。世論が大きくなるのは実害があったり不満が溜まったときだと思います。不満がたまらないように議会のみなさんが先手を打っていくような在り方が素敵だし、市民も応援したくなるんじゃないかと感じます。

中森:広島の場合すべての出発点は原爆の惨禍ですので、それが中心になってくるのは自然な流れだとは思っています。第7条の(4)で核廃絶に関わること以外の施策という文言はあるので、定義のところをもっと深めていく必要がありますね。

安彦:中森さんがそんな風に進めていくことはどれくらい可能なんですか?

中森:議会の議論の中では限界があると思います。私たちが議会の半分とかを締めているわけではないので。だから市民のみなさんの声が重要になってきます。

安彦:委員のメンバーに会っていくことは有効ですか?

中森さん:委員や会派のメンバーに働きかけることもできます。会派の大小はありますが、少なくとも一人はいるので。それぞれに働きかけをしていくことはできると思います。

参加者:2条で平和の定義をしている時点で、7条の(4)が存在させることはできないのではないでしょうか。このロジックは破綻していると思いますが、どう思いますか?また他の委員のみなさんはどんなお考えなんでしょう?

中森:現状では、2条で核兵器やその他武力紛争について記載、核兵器に関わる部分以外の分野については2条に書かれてる定義のなかで7条の(4)がカバーしている状態です。私の意見としては2条の定義を広げて(4)の意味を深めたいと思っています。

安彦:誰が書いたんですか?議会事務局?

中森:事務局ではなく、議員が書きました。

参加者:書き方の問題ではないかと思うんです。〜〜によると〇〇と書いてあるという風に、市の定義の文面を引用して定義すればいいと思うんですけど。

中森:飢餓や環境問題等様々な課題があるので、定義については議論しているが、それが盛り込まれている状態にはなっていませんね。例えば、外国の飢餓については広島市は特に何もしていません。やはり原爆の被害の実態を世界に広めていくというのが基本になっています。基本構想・基本計画には広い定義の平和について書いてあるが、なかなか定義のように行動できてはいません。引用するというよりは2条を見直すことのほうが個人的には有効なように感じます。

安彦:条例案は弁護士さんのチェックは受けているんですか?

中森:弁護士のチェックは受けていません。市議会の中にに条例や施策との整合性を網羅的にチェックする部門があり、そこで見てもらっています。

参加者:平和行政を衰退させたいとかいう悪意ではないと思うが、あまりにも突然だったため市民に対して誤解や危惧を抱かせる状況になったと思っています。個人的にはポエムのような仕上がりになっていると思う。核兵器禁止条約が発効し、締約国会議への日本のオブザーバー参加も前向きに検討されそうな動きがあります。定期的にこの内容をバージョンアップするようなものにしたらいいんじゃないかと思います。世論が盛り上がることも大切ですが、議会の中ではどのようなイニシアチブで変わっていく仕組みになっているんですか?

中森:議員や会派から、条例を作りたいとか、変えたいという提案があり、過半数を超える場合は変えることになります。5人以上で議員提案はできますが、否決になることもあるし、否決になるようなものはもともと出さないという感じがあるんですね。なので根回しをして賛成を集めるという動きがあります。

参加者:手順に関して、市民から声を上げることが大きいと仰ってましたが、施行前に条例のタイトルや施行の延期について市民が声を出すのと、施行されてから変えるのはどっちがいいんでしょうか?

中森:施行されてから変えるのもエネルギーがいるものなんですね。今のところは3・25で決着をつけるという意向ですが、先延ばしして内容を深めていくことができるとしたら、どちらかと言えばそちらの方がやりやすいと思います。

安彦:ありがとうございました。お時間も押しておりますので、質疑応答はここまでにして、最後に参加者のみなさんからの感想を一言ずつ頂いて締めたいと思います。

<以下参加者のみなさんからのご意見・ご感想>

核兵器廃絶にフォーカスしすぎている。ヒロシマにいるから貧困に目を向けないのか、基本構想と矛盾。今の状態では曖昧。市民のこういう思いも反映してもらえるような意見を求めたい。
平和活動をしているが、一番違和感を感じたのは、ヒロシマ・ナガサキの原爆被害に絞っているところ。広島、長崎だけでなく被害者は世界中にいる。加えて、軍都としての加害の歴史に関して、文言がない。議論してほしい。
広島市で作る条例は、広島市のものであると同時に、世界への宣言だと思っている。世界に通用する定義に改定されることを望んでいます。
説明を聞いて経緯は分かった。しかしいろんな抜け落ちてる言葉・視点もあるように思うので、うまく加えていくことが重要。
広島市民じゃないので、どれくらい議論に参加できるのかということに興味があった。広島県民として参加できることに感動している。
条約について述べられていない点からも思ったが、議員の皆さんには変えていくべきという気持ちや疑いの目を持って取り組んでほしい。
みなさんよく勉強されてるなと関心しました。条例案に「わたしたち広島市民は」という言葉があって「私知らないよ」と思って参加した。「厳粛」という言葉が一番引っかかった。これはいらないし、6条自体いらないと思っている。また私の周りには「自分たちの生活をどうにかしてほしい。平和にお金は使わなくていいよ」っていう人もいる。なので財政についての記載が会ったことですこし安心した。

安彦:どれだけ平和行政が形骸化しているのかを表現する言葉ですね。汗

一番の違和感は、5条の主語と対象者の部分。反対だと感じる。プレイヤーは活動している団体・個人だと思っているが、果たしてその人達は広島市の人と関わる機会があるのか。こうした素案があるから会話も生まれると思うので、市と、活動する人の対話を大切にしたいと感じた。
矢面に立っていただくような状態だったが、本当に感謝している。市民も色々な考え方を持っているので、その調整をされるのは大変だと思うが、敵対するのではなく協力し合いながら、より良いものができたらと。
皆さんが言われてた定義等は、中森さんのお話を伺って9条が問題になっていて少し観点が自分と違ったが、市民参加が難しい形で議論が進んでることは良くないと思った。
勉強という意味で参加したが、広島市民の理解があって条例が成り立つと思うので、またこういう機会があればぜひ参加したい。
委員の方全員にこの真摯な問いかけに答えてほしいと言ったが実現しなかった。前文で私たち市民が主語になってしまって、本当に残念。ともに歩み寄って一つ一つ丁寧に議論する場が必要だと感じた。拙速に3月に条例案を通そうとしないでください。全員が揃ってそれぞれの立場の意見を表明してほしい。他の会派の人達にお伝え下さい。世界が注目している。グローバルヒバクシャの願いも受けて。真摯な若者の声を届けてほしい。
議員のお話を聞く機会が少ないので新鮮だった。中森さんは私たちに近い。でもパブコメが通過儀礼になるのが怖い。いろんな人がいろんな意見を出して頑張ってほしい。
核兵器禁止条約に日本が入ってほしいという思いが強いが、それが条例に入っていない。発効前だから書いてないというのは理由にならない。広島市が先導せずして誰がやるのかと思う。
今日の議論の中で、役割が不明瞭なまま作られるのはよくない。深い理解や思考がない中で、作られたのは大きな問題。思考停止や現状認識を浮き彫りにしたと思う。

渡辺:みなさんありがとうございます。今回、9名の議員に連絡して参加やりとりをしましたが、中森議員にきていただいて本当にありがたかったです。誠実に答えていただいて、感謝しています。この条例案は、グローバルな観点から見ても恥ずかしくならないようなものにしてほしいです。広島だから伝わるかもしれませんが、平和の定義を安直に定めてはならないし、法的にも見直す必要があると感じます。この条例をそのまま通してはならないと思うので、開かれた議論の場を請願するつもりです。
3月末までの制定にも断固反対します。働きかけ続けるし、ここに皆さんでやっていきたいと思っています。

安彦:これからがスタートだと思っています。私たちが動けば逆に変わっていくんだという希望も持てました。3月は早すぎると感じたので、そういった動きができたらと思います。最後に中森さんからご感想を頂けますか?

中森:今日は色々な生のご意見をいただけてよかったです。これからもこのような機会があれば参加したいと思います。議会へのアクションですが、請願・陳情を出しただけでは難しい場合もあります。議会に様々な形で具体的な働きかけをしていく必要があると思います。

安彦:会派にアプローチするための良い方法はありますか?

中森:明日から会議始まり、本会議がスタートしたら3月中旬まで議員は議会にいるので、そこで働きかけることができます。会派の窓口は幹事長なので、幹事長にアポイントを取る。検討会議のメンバーだったらそれぞれの議員にアポを取る。前期の委員も直接アポが良いと思います。

安彦:分かりました。中森さん、お忙しい中本当にありがとうございました!!何かアクション起こすときは連絡させてください!参加してくださったみなさん、これからも議論を進めるために一緒に頑張りましょう〜!

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イベント終了後、中森議員、イベントに参加されたみなさんと!

☆本日2/15(月)締め切りのパブリックコメントはこちらから提出できます!

☆本日2/15(月)、RCCテレビの「イマナマ!」にて昨夜のイベントの様子が取り上げられました!

※※こちらの記事は一度別アカウントにて2021年2月15日に公開したものを改めてキャンペーンのnoteアカウントに転載したものです。条例案に関する市民意見(パブリックコメント)募集は終了しています(21.2.22記)。※※


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