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おばあちゃんのお餅

少しの間、長崎の野菜農家にお世話になっていた。

農家さんはご高齢でありながらほんとよくしていただいた。

帰る時、バス停まで車で送ってくれた。
おばあちゃんは別れ際少し泣いてるようにも見えた。

「これ食べなさい。」
と、おばあちゃんがお餅をくれた。

来て早々に僕お餅好きなんです〜。と言ったら、休みの日につきたてのお餅をパックいっぱいにくれた。嬉しかったな。
餅だけじゃなく、味噌汁や、おむすび、郷土料理のぬっぺも作って振る舞ってくれた。

「もうこれで最後のお餅。」
ラップに包まれたきな粉もちはまだ温かかった。

「温かいうちに食べよ。固くなるから。」

おばあちゃん、そんなことわかってるよ。
でも気遣いありがとう。

今日は温もりの余韻に浸り、バスに揺られて食べたい気分。
バスに乗って2時間が経ち、思い出したかのようにカバンの餅を探る。
冷えたラップに包まれた餅は案の定硬くなっていた。
きなこもべちゃべちゃだった。

(だから早く食べればよかったのに!)

ただ、味は美味しかったのはもちろん、硬かった分、ゆっくりと噛み締めた。


聞くとおばあちゃん、僕の3倍近い年月を生きてきて、最近は物忘れも覚え間違いも増えてきたみたい。

僕の名前も毎回少し考えて
「あ〜から始まる、、なんじゃったけな、、。」 って、愛おしい。

おそらく、もう名前なんて忘れてるだろうね。それでも、いいんだ別に。
餅が好きだった男の子がいたもんだ。
って覚えてくれてたらそれだけで。

おばあちゃんっ子だったからこうした微笑ましい雰囲気がどうも好きみたい。

自家製ちゃんぽんもめちゃくちゃ美味しかった

また長崎に行く理由ができました。
なんたろーに。

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