見出し画像

あの頃


忙しすぎる毎日の中でふとあの頃を思い出す。









日曜日、怠惰な我が家の外出は昼過ぎからだった。母親の趣味だった多肉植物を買うために少し遠くのホームセンターに行く。

行きの車内、シートベルトをしないで弟と後部座席に寝そべってSDSに熱中する。

ホームセンターについても、「買ってきて」なんて言って、ゲームを続ける。母親は不機嫌そうだが、無理矢理ついてこさせたから渋々1人で買いに行く。

それからは息子がゲームに熱中しているのをいいことに、母親も開き直った。骨董品屋で皿を見たり、スーパーで買い物したりして。大体は母親一人で行かせて、車の中でゲームを続けた。




帰りの車内、SDSの充電がなくなって赤色にピカピカしたら、車酔いで気持ち悪くなったら、ようやく外の景色を見る。夕日に田んぼが照らされて黄金色が一面に広がる。せっかくの日曜日が一瞬にして終わってしまって絶望した。

家帰ってから、ちょっと良い夕食を食べながら、鉄腕DASHとイッテQを見る。そのあとの音のソノリティが終わったら、就寝時間だ。せっかくの日曜日を無駄に過ごし、また明日から新しい一週間が始まることに憂鬱しながら部屋の電気を消した。








今思えば、ゲームなんかしないでもっと外の景色を見てればよかった。もっと母親に着いていってれば良かった。もっと母親と一緒にいればよかった。別に今母親がいなくなったとか、そんなことはなく家には母親がいる。でも一緒にいれる時間なんてほとんどない。





ただ時間を無駄にし続けることができたあの頃はかけがえのないものだったことを今知った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?