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『遮光』(25首)第3回U-25短歌選手権予選通過作

「遮光」/柊木快維

お手軽なタイムマシンとして飲酒とか睡眠を乱用してる

性欲は水色の蛇のイメージで螺旋階段降りゆく僕へ

ママチャリを買って正解だったでしょ寒さで膀胱が縮むでしょ

死ぬことはいつでもできて柘榴の実熟れる速度で回想はすぐ

川沿いに町は歪んで盗まれた自転車がそこらじゅうに錆びつく

饒舌なクレームのあとで泣き出してそれっぽく続ける保留音

入口の花瓶の細かい傷見つつ洋楽のような邦楽を聴く

令和だぞって誰か突っ込む居酒屋の蛸がはいっていないたこ焼き

初恋が綾波レイであることを年金の愚痴の次に話した

気の利いたたとえを思いつくまでにひとしきり降り終えるはつ雪

うつくしい女性が僕に脱毛を勧める動画 続けて2回

唇がひび割れていく 受話器ごし底なし沼が広がっていく

美少女がボンネットで微笑んでいる 笑い返すとクラクション鳴る

母に似た声に鼓膜は濡らされて、降ってない霧雨がしつこく

支持してる党のちがいで揉めたって中島みゆきはみんなで歌う

ほとんどは読み飛ばしつつ詩を終えてつめたい水の結露に触れる

卓上のジンジャーエールが凪いでくる頃に濡れ場は終わり、佳境へ

ヘッドフォンからイヤフォンへ乗り継いで夜風にそよぐ遮光カーテン

おじさんをたらい回しにしていると僕に戻ってくる聖夜かな

〈あのちゃん〉でキーワード録画してるから川辺で鷺を見ていてもよい

君が代のBPMを高くして歌う友達の透けてる乳首

ときどき鳥が休みに来たりするだけだ パキラが枯れてからというもの

曲がっても霊園はまだほど遠く、死ぬまでに読めない本のこと

がんばれと歌うアイドルの頭上に指名手配の速報ずっと

極刑の主文みたいにいろんなこと後回しにして冬の駅前

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