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エントロピー増大と憂鬱の法則〜僕の同居人#3〜
コロナの影響で奴はバングラデシュから帰国した。
それから僕と奴との同居生活が始まったのだ。
同居と言っても、
僕の家は至って普通のマンションの1Kの部屋だ。
決してデブ2人が長時間共にして良い空間ではないことだけは分かって欲しい。
簡単な話、常に密だ。
このご時世あまり大きな声では言えないが。
ただ家で一緒に居る時間は殆どない。
お互い別々の時間に仕事が終わり、
別々に帰宅する。
晩飯も各々済ませて帰る。
それから、
晴れていれば深夜1時くらいまで散歩。
雨ならApex(今流行りのゲーム)に没頭。
これが僕らのルーティーン。
あの旅のような散歩以来、
すっかり散歩が僕らの日課になりつつある。
無論、適切な距離で。
深夜の都心にわんぱく少年のような格好でデブ2人が歩いていたら僕らだと思ってくれていい。
そして散歩が終わって帰宅するや否や、
奴は自分の部屋に引き籠る。
そうだ。
大事なことを忘れていた。
もうすっかりお決まりになっているのだが、
毎回奴が家に泊まりに来ると、
「ここ、俺の部屋ね」
と、デスクの椅子だけをキッチンに運んで奴のプライベートゾーンを構築する。
それを奴は、部屋と呼ぶのだ。
僕の家は暫定的に2Kになる。
と言ってもキッチンに椅子が置いてあるだけで、扉もついていなければ空間を隔てるものすらない。
だからトイレに行く度、僕は汚されていくキッチンを横目に落胆している。
まあ、部屋にしたいのなら勝手にすればいい。
ただこのシステムにはお互いメリットもある。
ヘビースモーカーの奴にとって、
紙タバコは換気扇の下でしか吸えないというルール上、キッチンは最高のスポットである。
しかも振り向けば冷蔵庫だ。
いつだって飲み食いできる。
一方、僕にとっては
少しでも奴と距離を取れる。
だから奴にキッチンを譲った。
譲ったと言えど、
看過できないことは沢山ある。
奴は基本的にゴミを捨てない。
ペットボトルも中途半端に置きっぱなしにする。
捨ててくれたと思ったらラベルと蓋を取り外さないまま捨てる。
コップを使っても飲み切ることなくそのまま置きっぱなし。
捨てようとするとまだ飲むとごねる。
帰ってきても指摘するまで手は洗わない。
使ったマスクもそこら辺に放ったまま。
服は常に散乱。
そのくせすぐに洗濯しろとせがむ。
買った物を取り出さずにコンビニ袋ごと冷蔵庫にしまう。
食べもしないお菓子を広げる。
捨てようとするともったいないと怒る。
枚挙に暇がない!
奴が来てからというもの、
僕の家のエントロピー増大は甚だしい。
そして僕の憂鬱はこれからも続く。