554文字の朝食
雑誌で目にする朝食はいつも理路整然としている。
たとえば洋食の場合。トーストにスクランブルエッグ、それからサラダにオレンジジュース。そんなバランスのとれた具合に、なんだか焦る。
実際の日々の生活は、なかなかそう竹を割ったようにはいかないからだ。
朝ごはんをつくらないと、と思いながら体が動かない日もある。今朝は、きのう握っておいた塩鮭のおむすびを一つ頬張って体を目覚めさせてから、朝食の準備をはじめた。
賞味期限が3日過ぎたマフィンをいいかげん食べなきゃ、とトースターを温めはじめる。
あつあつのマフィンにクロテッドクリームを塗って食べるだけでもじゅうぶんおいしいけれど、冷蔵庫を物色すると、ゴーバルの骨付きハムが出てきた。それから、くらしモアのとろけるチーズも。
それなら卵焼きでもつくるか、と玉子を3つ割って塩胡椒を混ぜて、チーズ入り卵焼きが完成する。
と、ここで気づく。
「ゆうべの冷や汁が残っていたのだっけ」。
冷蔵庫から鍋を取り出していると、洗面所から「納豆食べたいー」の声。
そんな具合に朝食の準備ができるころには、すっかり食卓は和とも洋ともつかぬ様子になっている。けれど、マフィンをちぎって冷や汁につけるとこれまたおいしい。
そんなふうに、今日もなしくずしに1日が始まっていく。
そのことを、ぼくらは生活と呼んでいる。