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規格外野菜が地域の見守り弁当に!7年前からSDGsと"4方良し”を実現する「ベジラボ」とは

一汁二菜の栄養満点なお弁当が、宅配込みで500円。

こんなサービスがあったら、使ってみたいと思いませんか?

海邦福祉会が指定管理を行う「読谷村農林水産物加工センター(通称ベジラボ)」では、規格外野菜を使った弁当を平日(月〜金曜日)に約30〜40食つくっています。

お弁当は地域のお年寄りや障がいを持つ家庭に届けられ、料金は宅配料込みでなんと500円!ウーバーイーツで珈琲を1杯買うより安いです。安さのポイントは使用する野菜に「規格外」のものを使用しているから。

実はベジラボ、海邦福祉会と読谷村のコラボ事業なのですが、聞けば3方良しどころか4方良しが叶う事業。さらにこのサービスが誕生したのは2017年。SDGsという言葉がまだ浸透していない頃から、規格外野菜の循環や障がいを有する方への就労機会の創出など、SDGsな取り組みがされていたことに驚きです。

取り組みの存在をもっと多くの方に知ってほしい!ということで、外部広報担当の三好がベジラボに潜入してきました〜。

規格外の野菜をきれいにし、ヘルシーなお弁当に!

ベジラボは読谷村の緑あふれる地域「都屋(とや)」にあります。

出勤時間にお邪魔すると、こちらに勤務している利用者さんが朝のルーティーンを行っていました。

この方は入り口付近をウロウロするのが日課。独自のルーチンやこだわりは、支援員が塩梅を見て行動を調整するのだそう。

ベジラボはカット室と調理室のふたつに分かれており、刃物を使える利用者さんは基本的にカット室の配属になります。

カット室では、農家さんからもらった規格外野菜を洗うところからはじまり、使えない部分を丁寧に切り落とし、最終的にはカットして料理に使える状態にします。

この日はにんじんが大量に届いていました。ぱっくり割れていたり変形していたり、割とレベル高めな規格外野菜がたくさん!

汚れているところを手作業ですべて取り除くのが利用者さんの仕事。知的障がいを持つ方は、集中力や持続力に優れた方が多く、単純作業にコツコツと取り組むのが得意!まさに適材適所です。

カット室を担当するのは皆さん、安全管理のもと刃物のトレーニングを受け、無事合格した方のみ。慣れた手つきで次々と野菜の皮を剥いたり切ったりしていました。

カットされた野菜は、機械で精製された次亜塩素酸水で滅菌処理をされ、すぐ隣の調理室へ移動します。

調理室では、カットされた規格外野菜と、その日の献立に合わせた食材を調理担当者が調理し、出来上がったものを利用者さんが容器に入れます。

お米はきっちりグラムを図りながら盛り付けます。流れ作業も利用者さんが得意とする分野です。

こうして毎日、約30食の食事が完成!
栄養士監修の献立は、ヘルシーでありながらも和洋中から日替わり。栄養満点かつ彩りもゆたかでおいしそうです。

ちなみに容器はすべてレンチンOK!専用のBOXに入れられており、回収も楽々なので、お年寄りの1人暮らしでも安心です。

食べ終わった容器は軽く水で流す程度でOK。洗い物が大変な方も、安心して利用できます。

はじまりは「農家さんが作った規格外の野菜を活用したい」という読谷村の想い

ことのはじまりは、読谷村役場による「読谷村の農家さんが作った、規格外の野菜を活用したい」という想い。

不揃いなものや割れている、いわゆる「規格外」野菜は、スーパーで販売することができません。味に問題がなくても廃棄されてしまうことが多く、日本国内ではなんと年間180万トンものフードロスを生んでいると言われています。

フードロスを解消しつつ、農家さんの売上にすこしでも貢献したい。その思いから農林水産課で「規格外野菜を弁当の材料として活用する」企画が上がり、海邦福祉会に声がかかったのだそうです。

実は海邦福祉会では「どうせ毎日給食を作るのだから、すこし多めに作って地域の人に安く配達しよう」という発想から、1998年から弁当の配達事業を行っていました。1食からはじまった事業でしたが、口コミで広がり、農業推進課から声がかかったときにはすでに30食を各家庭に配達していたのです。

農業推進課から話を受けた理事長の隆生さんは、海邦福祉会とコラボすれば「規格外の野菜を活用」し「栄養士監修のヘルシーな献立」を「障がい者雇用なので宅配込み500円」で実現できることを伝えました。実はそのとき読谷村は「村民の医療費をさげる」という目標も掲げており、安価でヘルシーな弁当を作れることは二重三重に魅力的だったといいます。

海邦福祉会としても、施設の厨房で作っていた弁当を専用の調理場で作れること、そして利用者に就労の機会を提供できることは魅力。双方の魅力が合致し、トントン拍子に進んで2017年、ベジラボが誕生しました。

4方良しかつSDGs!メリットだらけのベジラボ

こうして生まれたベジラボは、聞けば聞くほどメリットしかない取り組みなのです。まとめましょう。

①就労の機会をつくる
就労支援B型事業を行っている海邦福祉会。ベジラボは調理室とカット室に分かれており、それぞれ利用者さんの性格にあわせた就労を提供することができます。

②フードロス削減と農家さんの売上UP
廃棄寸前の規格外野菜を30〜80%の価格で買い取るため、フードロス削減と農家さんの収入UPの一助となっています。

➂地域の方に、安くてヘルシーな弁当を提供できる
規格外野菜を使うことと、障がい者就労支援により人件費が割安になることで、当法人の管理栄養士監修のもと、栄養満点な弁当が1食500円(宅配料込)という破格で提供できます。

④地域の見守り役にも
実は、離れて暮らす息子さんから「配達の際、高齢の母親の安否確認もお願いしたい」というオーダーも多いそう。実際、配達の際に倒れているのを発見し、救急車を呼び一命をとりとめたケースもあるとか。弁当を持っていった際に火事を発見したことや、何度も「弁当がきていない」と電話があることで認知症が発覚したケースも。

いかがでしょうか。ほかにも「夫が太りすぎているから、ヘルシーなお弁当を食べさせたい」というオーダーがあったり、食器洗浄が大好きすぎて休み時間でも絶対に休まない利用者さんもいるなど、関わる皆さんがそれぞれの需要を満たしているのが素敵です。

「儲かってはいないんだけどね。だけど民間企業では実現できない価格とクオリティが、障がい者施設との掛け合わせで実現できる。それは意義のあることだと思うんです。海邦福祉会として、利用者さんが楽しそうに働いてくれていることと、その働きが地域に還元できることは喜びでもありますね」

と隆生さん。最後に、配達先にすこしだけお邪魔しましたが「とっても助かっていますよ。おいしいし、毎日の楽しみです」と笑うおばぁを見て、なぜか私まで誇らしい気持ちになりました。


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