「幻覚がみえます」~認知症の周辺症状について~
「父親がレビー小体型認知症と診断されました。
幻覚が酷く、現在精神科がある病院に入院しています。
もうすぐ退院になるのですが、幻覚症状の事や退院後の対応方法などがあれば教えてください」
という問い合わせがよくあります。
幻覚は、実際にはないものをあるように感じ、視覚や聴覚、嗅覚、触覚などさまざまな感覚で現れます。
本人は「見えていると信じている」ため、「見えない」など否定すれば、「私を理解してくれない」など悪い感情を残し、ますます孤独感が強くなります。
本人の中では、幻覚が真実であると思い込んでいます。
例えそれが幻覚、幻であっても、誰しも自分が信じている事をはじめから否定されれば、怒りを感じるのは当然です。
実際にはそこに存在していないものが「見えたり」「聞こえたり」「感じたり」する幻覚は本人だけではなく家族も混乱してしまうものです
今回は「幻覚症状について」「対応方法」などをまとめています。ぜひ参考にしてください。
幻覚症状の種類
・レビー小体型認知症
認知症の中でも特に幻覚が起きやすいのは、レビー小体型認知症です。
アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症に次いで、多いのがこのレビー小体型認知症です。約80%の人に幻視がみられるとされています。
視覚を司る後頭葉が障害を受け、存在しないものが見えてしまう症状です。
大きな特徴として、幻視を中心とする視覚認知の障害が多いです。
小動物や虫、子供などの幻視は特徴的な症状で、「既に亡くなった家族が現れた」「家の中に泥棒が居る」というような妄想に発展することもあります。
例)そこにない小動物や人影などが、現実として見える→小動物や虫を追い払おうと大声を出したり、不審者として通報したりする。
・機能低下による不安感
高齢になると、「耳が遠くなる」「認知機能が落ちる」など、身体機能が低下してきます。
本人にとっては不安やストレスを感じやすくなります。
認知症により脳の機能が低下している上、目や耳が悪くなり、錯覚などを起こしやすい状態の中、不安や恐怖を感じると、幻覚を起こす場合
・認知症以外での原因
幻覚はうつ病や他の精神疾患でも見られることがあります。
薬の副作用や長期間にわたる大量のアルコール摂取によって生じ、幻覚が起こることもあります。
症状としては、意識がはっきりしているにもかかわらず、実際には存在しないはずの「自分を呼ぶ声」や「自分の悪口を言っている声」などが聴こえてきたり(幻聴)、またその声のために、「殺される」とか「狙われている」などと実際にはあり得ないこと被害妄想などをすることもあります。さらにその不安や恐怖のあまり、激しい自傷行為や他害行為などの問題行動を引き起こすこともあります。基本的にはアルコール依存症者に起こります。
幻覚症状について
外からの刺激がないのに、架空のものを「見える」体験を幻視といいます。
その他にも、「幻聴・幻味・幻臭・体感幻覚」などがあり、
五感に応じて、それぞれの幻覚があります。
・視覚の場合:幻視(ものが見える)
「家の中に知らない人が居る」その人がはっきり見えたり、ありえない物や動物を見る人も居ます。いずれも本人にとっては現実感を伴う体験で、本当に「見えて」いるのです。
前述の通り、レビー小体型認知症でよく見られます。
・聴覚の場合:幻聴(音が聞こえる)
その場にはいないのに「子供の声がした」と言ったり、そんな事実はないのに「自分の悪口が聞こえた」という訴えがあれば、幻聴の可能性があります。
こちらも本人にとってははっきりと聞こえているのです。
幻聴は、アルツハイマー型認知症でよく見られる症状として挙げられています。
・味覚の場合:幻味(味を感じる)
口の中に何も入っていないのに「変な味がする」などを訴えたりすることもあります。
・嗅覚の場合:幻嗅(匂いを感じる)
匂いがしない所で「何かが臭う」などと感じることもあります。
・触覚の場合:幻触(触れた感触がある)
「虫が背中を這い上がってくる」など、身体的に感じる。身体に異物があると感じる場合は、叩いたり振り払ったりする行動が見られることもあります。
※参考資料:e-65.net
http://www.e-65.net/medicine/category02_10.html
※参考資料:認知症ネット
https://info.ninchisho.net/symptom/s90
幻覚が起きた場合の周りの対応
・否定をしない
本人にとっては現実に体験していることなので、「そんなものはいない」などと一方的に否定や怒ったりはしないようにしましょう。拒絶された、わかってもらえなかったなどの感情が残り、ストレスとなって他の症状につながることも考えられます。
・一緒に確認をする
「知らない人がいる」と言われた時には、「誰か来たかもしれないけど、もう居ませんよ」など、一緒に確認すると安心します。
「まだあそこに居る」と訴えがあった場合は、場所を一緒に確認すると本人が「もういない」となることもあります。
・興奮している際には
興奮して暴れると、転倒したりご自分や周りを傷つけたりするおそれがあります。
ご本人の話しを受けとめて対応をし、興奮をなだめることが大事です。
たとえば「虫がいる」と訴えがありましたら「今、薬をまいたからすぐにいなくなりますよ」などと具体的に答えたり、実際に消臭スプレーなどの無害なものをまいてみたりするのも一つの方法です。
ご本人が嫌がっているものが見えるようなら、追い払ったり片付けたりする振りをしてみましょう。
・部屋の照明調整
幻視は暗いところで見える場合が多いです。照明を工夫し、部屋を明るくしてみましょう。
・部屋を見通し
幻覚はふすまや家具の陰、カーテンの隙間から現れることがあります。部屋を見通しよく片付けることで、目で見て判断する能力の衰えの対策としても有効です。
・気分転換
外食をしたり、散歩に連れ出すなどを試みて、気分転換をはかることも有効な場合があります。
また、体調が悪い場合もありますので、脱水症状ではないか、熱はないか、便秘はしていないかなどもチェックしてみましょう。
まとめ
そこにあるはずのないものを感じてしまう「幻覚」と実在するものを違うものと勘違いしてしまう「錯覚」は、本人のストレスや精神的負担があります。
幻覚や錯覚が起きているときには、本人の話を良く聞き、否定も肯定もせず、一緒に確認をして、安心してもらうようにしましょう。
また、幻覚や錯覚が起きにくいように、室内の環境を整えて、心身の状態を管理しておくことも大切です。
介護を1人で抱え込まず、誰かに相談するようにしましょう。
幻覚の症状であるとわかっていても、興奮して暴れたり、疑いの目で見られると、介護者にも大きなストレスになる場合があります。精神的な負担から、介護する側が介護うつを引き起こすなど、体調を崩してしまうケースもあります。
周りに知られると恥ずかしいと思って一人で抱え込んだりせず、家族や親戚、友人などに悩みを相談しましょう。
また、医師やケアマネジャーなど医療や介護の専門家に相談すれば、新しい発見やアドバイスがあるかもしれません。
※東住吉介護センターでも利用者にとって最適なプランは何かを一番に考えアドバイスさせて頂きます。健康のこと、介護のこと、認知症のことなど、お気軽にご相談ください。
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