売れなくなったらあっという間に反社・カルト・薬物・AV・自殺はあまりに救いが無さすぎる。代わりに得られるものは何でしょう。富と名声？随分と揮発性の高い幸せ。

芸人どもが使う定番の逃げ口上。

「いじりといじめは違う」
「信頼関係があってこそのツッコミ」
「権力のある人にいじられるのは名誉なこと」
「素人と違ってやる方もやられる方もプロなのでノーダメ」

もしかしたら本当にただの詭弁だったのかもしれませんね。
実際には化学物質による労働災害みたいに徐々に蓄積して、心身を蝕んでいたとしたら。

いじられ、蔑まれ、リアルな不快感を販売することで金を稼ぐ商売は危ういバランスの上で成り立っていたんですよ。
やらせではないかのように見せながら、いやいや当然台本くらいありましたよというダブルスタンダード。

ほんの2～3年前にも見たような。

あくまでもTVの中の芸であり、実際は脚本のあるただの「劇」であるという暗黙の但し書き。
「このあとスタッフがおいしくいただきました」信じる人いますかね。現実と地続きに見せながら、楽屋芸、身内ネタ、リアリティ、観客、一般人、虚構との垣根、SNSという橋。

レーサーはヘルメットを、ボクサーはグローブを、ほとんどのスポーツはなんらかのプロテクタをつけて身を守り、そして年齢と共に安全の限界が来る前に辞めるようになってますよね。

では、白塗りも仮面もなしの生身で心を切り売りし続けるピエロ達はどうやって心身を守ればいいのでしょう。

あんな詭弁を弄しているうちに、自分達の身内がバタバタと倒れ、自分の番が来た時に初めて気付いてももう遅いかもしれません。
いつの間にか最前線での芸をやめ、司会だったりラジオだったり、そんな場所にいるあの人たちはどう思っているのでしょう。

「愛のあるいじり」

"美しい"言葉だと思います。とても。

ー

売れなくなったり落ち目になった芸人をうまく社会復帰させるシステムや支援組織みたいなもの、本当は必要なんですよね。きっと。
暴力団からの離脱支援は就労支援や経済支援を国と都道府県がやっていますけど、芸能界から足抜けしたい人にもそういうものがあれば、と思わずにはいられません。

右も左もわからない10代のうちにアイドルや俳優になって、だらだら続けて大した成功もせずに30で突然社会に放り出された
職歴無しとかこれからどうやって生きて行けばいいと思います？普通の世界を知らないのに。不可能ですよね。

努力すれば何とかなるでしょって思ってる人は、普通の世界を知ってる人ですよ。
普通の世界で10年15年頑張ってきた貴方/貴女、お疲れさまでした。履歴書に職務経歴を書きましょう。資格もあったりするでしょう。あなたの苦労や困難は無駄ではありませんでした。おめでとうございます。
でもほら、あの人やあの人、どうなったと思います？

頭の中は10代のあなた達以下だったんですよ。
なにも教えられる事もなく。何も経験させてもらう事もなく。
同級生たちの持っていないものを手に入れたのと引き換えに、同級生たちが持っているものを何一つ持っていませんでした。
結婚、出産、病気、立ち止まった瞬間何を思ったのでしょう。

一世を風靡してもしなくても、大御所になってもならなくても、売れなくなったらあっというまに反社・カルト・薬物・AV・自殺。
そのリスクと引き換えに得られるものって何でしょう。
富と名声？あまりにも揮発性の高い幸せですよね。

見世物小屋(Freak Show)のゴリラガラス越しにフリークス達がどんなに札束を持っていても
豪邸やランボルギーニを見せつけてきても、羨むことなんてできないですよ。

だって彼らはガラスの向こうでしか生きられない、フリークスじゃないですか。

もうこっちの世界に戻ることができない、片道分の燃料しかないのロケットからの中継映像なんて可哀そうで見ていられませんよ。

ー

正月、実家で親戚がうちの息子君に「君は整ってるから将来はジャ〇ーズかな～？」とか言ったとき、
普段仲の悪い妹と僕がほぼ同時にいやショウビズは絶対ないでしょって発して、本当に理解できないみたいな顔でキョトンとしてたんですよ。

昭和の人たちは芸能と野球に憧れがちですけど、もうそういう時代じゃないんです。名声も称賛も金も、同じ量の努力をしたのならもっと別の方法で得ることができましょう。

今時マトモな親だったらその道の先がイラク、ベトナム、硫黄島以下だと解ってて送り出すと思います？

ありえないですよね。

おしまい。