マガジンのカバー画像

短編小説

4
運営しているクリエイター

#過去

池袋12:30 (真夏)

その煙草の味を変えて見せます。 はあ。 いちごの香りがするかもしれません へえ。 僕ら三人は困惑している。 僕はそういう変人によく絡まれる。 宗教団体の勧誘ももちろん多数経験済みだ。 彼および、その後に二人いる女性は相手に警戒感を抱かせない為の あの「ちょうどいい」表情をしている。 その顔は僕もよくやるからわかる。 掴みは最高だ。俄然興味か好奇心が湧いてしまった。 そして、催眠だとか暗示だとかには大変引っかかりやすいと思われる単純な思考構造をしている僕が

【短編】荷物も、未来も、過去も、捨てられたらいいのに。

済みませんね、今日はメニューが一種類だけなんですよ。 どのような事情があったのかは知らないが、この汚い中華料理屋は今日、観測史上最大の客入りだ。 厨房では時折大きな炎が上がり僅か三名のアルバイトがひっきりなしに料理を供給し続けている。 テーブル、カウンタ、そして立ち食い。本来であれば15人程度のキャパシティしかない店内は300パーセント以上余計に充填された人間の呼気で酸素濃度が著しく低い。 特別美味くも不味くも無いはずのこの店がこんなことになってしまっている事に対する