癒され、私に「還る」:唯一無二の屋久島
ついさっきまで晴れていたのに、突然降り出す雨。
濡れて濃く薫る屋久杉。
頬擦りしたくなるほど可愛い緑の絨毯、苔。
叩きつけるような雨風の後に突然晴れる空、虹、目が焼けるように眩しい夕日。
屋久島の森に入った瞬間、「これはただの観光地ではない」ことに気がつきました。
考え事がすっと止まり、鳥のさえずりや風が木々を通り抜ける音、遠くの川の香り。
都会で生きる「人間」から、自然の中で生きる「生物」に、心も身体もいつの間にか切り替わっていました。
圧倒的な生命力に溢れ、荒々しいパワーを感じさせる一方で、深く優しく包み込む癒しの力。
気がつけば「ここに帰りたい」と思わせる特別な場所。それが私にとっての屋久島です。
思ったより気軽だけど、ただものではない
スタジオジブリの「もののけ姫」のモデルとしても知られ、観光地としても有名。私も「縄文杉」という名前は、聞いたことがありました。
2024年の春、転職の合間に初めて訪れた屋久島。精神的にハードな経験が続いていたので少し気分転換したいな、くらいの気持ちで選んだ、3泊4日、ただの気楽な一人旅のつもりでした。
屋久島が大自然なのはなんとなくの印象としては持っていたものの、私は北海道生まれで、自然ならある意味では見慣れているし、Canadaでかの有名なCanadian Rockiesも見たし、NewZealandで氷河も見た。
雄大な大自然に圧倒され、感動した経験は1度や2度ではありません。
世界自然遺産、樹齢何千年にもなる屋久杉、北海道から沖縄まで、すべての気候が一つの島にあることなど、屋久島が特別な自然である理由はたくさんあります。
しかし、屋久島は、言葉で表現できるような事実ではないところで、私がこれまで見て、体験してきた自然とは「何かが」違いました。
「人間」を「生き物」に戻してくれる、それが屋久島
屋久島で愛される存在の一つに、「苔」があります。
映画「もののけ姫」のモデルとして有名になった白谷雲水峡は、「苔むす森」としても有名です。
朽ちた倒木を覆うように敷き詰められた、ふかふかの緑の絨毯。
そこにさまざまな木々、植物の種が落ち、やがて芽が出る様子は、サークル・オブ・ライフを見ているよう。
倒れた木にも役割があり、苔の上で様々な植物がそれぞれに成長する姿を見ていると、本当の多様性を見せてくれているようで、心が震えます。
雨の森で静かに雨粒を感じているとき。
澄んだ川に足を浸しているとき。
巨木に背を預けてじっとしているとき。
鳥の声で目を覚まし、橙色の朝日が飛び込んでくるとき。
頑張って作ってきた社会的な「人間の私」が剥ぎ取られ、「生物としての私」が出てくるような、そんな感覚。
しかも全く嫌な感じがせず、無理矢理でもなく、ごくごく自然に「いつの間にかそうなっている」。
それが「その人にとって一番自然で楽だから自然とそうなっている」のです。
それこそが屋久島の特別な力だと感じました。
懐深く神秘的な自然に触れていると、自分の身体性がどんどん回復して研ぎ澄まされ、深く癒されていくのがわかります。
もちろん、圧倒的な自然は優しいだけではなく、厳しい顔を見せることも。
2024年8月の大型台風10号で、苔の森で有名な白谷雲水峡の一時閉鎖や、樹齢3千年の弥生杉が倒壊するなど、大きな被害がありました。
それでも、それすら「自然界では必要だから起こっている」「抵抗するのではなく、受け入れて次のサイクルに繋げていこう」、そんな風に受け止められるのも、屋久島の大きな特徴だと思います。
人生が変わる、屋久島
そんな屋久島の自然に魅了されて移住する人が後を絶たないのも頷けます。私もご縁があったのか、初めて屋久島を訪れてから、気がつけば2ヶ月に1度のペースで滞在しています。
そしてなんと、私もこの屋久島で、心と体を癒し、自分らしい次の一歩を見つけるリトリートを主催することに。
屋久島は、ただの観光地でもただの自然スポットではありません。
心を整え、身体を研ぎ澄まし、自分自身と深く向き合うための環境が揃った、特別な「場」です。
屋久島は、ただ訪れるだけでも人生を見つめ直すきっかけをくれる場所です。
人生に迷いを感じたとき、自分と向き合う時間が欲しいとき、この島でその答えを見つけるチャンスがあるかもしれません。