2月松竹座昼の部「源平布引滝」感想
とりあえず、観た順に思いつくまま。詳細は後に書ければ追記します。
2024年2月10日 松竹座昼の部_源平布引滝
「義賢最期」「矢走浦~竹生島遊覧」「実盛物語」
良かった点
「義賢最期」
1 片岡千壽さんの葵御前がそれらしい。
2 愛之助さんの動きが大きく時代物らしさを堪能させる。
3 壱太郎さんの柔らかい立ち回りに背を反らした形がよい。
4 派手で迫力のある立ち回りが見ごたえある。
5 敵を切った義賢が三段を駆け下り小万が止める息が面白い。
6 原作を良く伝えテンポも意識している。
7 義賢と小万の別れは、ドラマになって血が通った。
「矢走浦~竹生島遊覧」
1 皆二役の変りがきっぱりとした。特に実盛。
2 湖中の船が凄惨な立ち回りから変わって目を喜ばす。
3 花道の小舟と舞台の大船の間の会話が空間を活かして良い。
「実盛物語」
1 グロテスクで血の香りがして土臭い。
2 実盛の物語は華やかで颯爽としている。
3 妹尾と実盛の詰め開きが聴き所、緊張感がある。
4 実盛の太郎を慈しむような所作から大きく武張っての戦の所作への切り替えが鮮やか。
残念な点
「義賢最期」
1 りき弥さんの待宵姫が大きく見える。
2 九郎助親子到着知らせる侍のどたどたが気になる。走って告げに来ることではない。
3 折平の軽く洒脱さが出ない。
4 義賢が手水石を割っての折平=多田蔵人との詰め開きが面白くない。
5 隣室より平家方に切り込もうとする多田蔵人とそれを止める義賢がはまらない。
6 義賢息絶え、傍らに小万で幕が腹に落ちない。
「矢走浦~竹生島遊覧」
1 小舟の動きが電動的で滑らかすぎて面白くない。
2 後の実盛物語の元のドラマとしてもう少し厚みが欲しい。
3 実盛が櫂に縄をまく所作が地味に見える。
「実盛物語」
1 妹尾の「腹に腕があるからは胸に思案がなくゃかなわぬ」は独特な調子の言い回しがあったように思う。
2 息を吹き返した小万の声が死人のように聞こえない。
3 妹尾の首斬るのは本筋のやり方で私はこれで良く残念とまでは思わないが、今の観客に見せるのに子に手を添えさせ何度ものこぎり引きにするのは少し工夫があってもいいかもしれない。
メモ補記
残念な点「義賢最期」
3 右近さんの折平の男ぶりはいいが、軽みの聞かせどころがからからと軽やかに転んでいかない。待宵姫との空間が詰まりすぎているように見えた。少し距離を取って大きく動けるとどうだろうか。
4 台詞の意味が分かっても観客にわかりずらいやり取りの連続から、さらさらとだれないようにするつもりかもしれないが、面白みがない。折平の軽みから多田蔵人に鮮やかに変わる見せ場。観客に意味が通じなくても、義賢・蔵人の息の詰んだ台詞の掛け合い、台詞を調子で聞かせる場。
その前の蔵人の見現しも面白くない。義賢が「行け」と言ってすぐ「多田蔵人行綱待て」がどうもぴたりとしない。「行け」で折平が立って行きながら後に心を残す様子を見せて、義賢がサテハとの思いで、折平が気を変えて行きかけるところに義賢が呼びかけるぐらいの手順があるはずだが、さっと進む。
5 原作では義賢が目くばせで意気込む隣室の蔵人を押しとどめるが、芝居では膝を打つ音で止める。しかし、蔵人の切り込む意気込みを悟る芝居が必要でどうしても隣室へ気を配る所作がいるが、平家方と義賢の位置が悪く芝居を邪魔するように思える。蔵人と義賢、平家方の間もあっていないように見えた。蔵人、ここで片肌脱ぎになってほしいなあ。
6 義賢が「小万見届け物語れよ」と言う台詞があり、義賢仏倒し、三段傍らで小万が泣いて幕となっているが、通しで出すとなると、身重の葵御前の行方、白旗の行方はどうなるか(続く)・・・という場面なので、白旗持った小万が花道を駆け行き、義賢、向こうを見て、葵御前の行方、白旗の行方に思いをはせて、仏倒れの方が芝居の形はいいように思う。
原作は、「さしも我強き大将も子故の闇が道理なる、『迷うたり迷うたり』・・・切って捨てたるこの世の輪廻・・・」と義賢悟って死んでゆくところからすると、腹の子にも白旗にも思いを残さず最期を遂げるのが本筋ではあるが、何か工夫して、舞台に一人義賢最期を遂げたいところ。
「竹生島遊覧」
3 実盛が櫂に綱をまくところ、膝ついて地味。立って、見せ場にしてほしいところ。