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『さまよう刃』
原作 東野圭吾
2024年9月に視聴したドラマ。同じ原作で過去に映画化もされていて、一気に両方を観た。
色々感じることが有りすぎてまとめることができず、下書きのままだったので、『熟成下書き』を完成させてみた。
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児童の権利に関する条約37条により18歳未満の児童は死刑および絶対終身刑から保護されると規定されており、日本はこれを批准している。ただし、同第37条C項は留保している。また、同条約を引用している北京規則では、同条の規定等は全ての少年および若年の成人に対しても生かされなければならないと規定されている。
愛する娘を少年犯罪によって殺された父。どんなに酷い犯罪であっても少年保護法に守られた彼らは捕まっても決して極刑にはならない。
法が裁かないならこの手で下す。
理不尽な法律に立ち向かう父親の姿にマスコミは、世論は、警察はどう対峙するのか。
実際の事件でもこの問題はたびたび浮上する。
光市母子殺害事件では2006年法改正に一石を投じたが、2014年法改正では無期懲役に値する有期懲役の期間15年が20年に引き上げられたことにとどまっている。
今回の『さまよう刃』はネトフリで6話完結ドラマを観た後、2009年公開の映画版も観てみた。
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2021年wowowオリジナルドラマとして配信された竹野内豊主演の『さまよう刃』は第12回衛星放送協会オリジナル番組アワード番組部門(ドラマ)において最優秀賞を受賞した。
民放では制限のかかる凄惨な描写も衛星放送ならではの血みどろのシーンが目立つ。
が、それでこそ主人公の無念さが伝わってくる。
竹野内豊演じる長峰の行動に共鳴してしまう。
共犯者を手にかけてしまう父親の葛藤と覚悟がまざまざと迫ってくる。
自分でも恐らく同じことを考えただろう。行動に移すかどうかはべつとして。
彼を追う警察側にもそれぞれの事情がかいま見えてくる。
定年を迎えた老刑事とバディをくむ正義感溢れる青年刑事。自らも親になったばかりの彼には、被害者の父の無念さと悔しさが自分のことのように胸に突き刺さる。
追う側でありながら、葛藤の中に埋もれそうになる。
果たして長峰の復讐は叶えられるのか?
対峙する刑事の取った結末とは?
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一方、映画では寺尾聰が初老(年齢の設定は同じなのだろうが印象として)の父として描かれる。娘の敵を打つために雪のなかを彷徨う姿には渾身の怒りが秘められていた。
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静かに、怒りを内に秘め、犯人をじわじわと追い詰めてゆく執念に共感してしまう。
追う側の刑事達の描き方も秀逸で地道な捜査ななかで犯人である長峰への憐憫もある。
若き刑事織部役で竹野内豊が出演しているのが、興味深い。
ドラマ版へのオファーがあった時、同じ作品の中で全く正反対の立場の役に戸惑ったと言う。
映画が『静』ならドラマ『動』。
全く違った演出でとらえられたひとつの作品。
試行錯誤の結果、竹野内がみせてくれたのは、見ごたえのある現代版のさまよう父親像だった。