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本を通じて、目指したもの。高齢者ケアのリアルな実態と学び。
2024年Gakkenメディカル・ケア・サービスから出版させていただいた
の3刷ver.の発売を、1月末に控えソワソワする毎日。
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多くの方に手に取っていただき、感想やコメントをいただけるだけでなく
勝手に営業をしてくれる仏のような方や、メディアに取り上げていただいたりと、全方位網に感謝の気持ちでいっぱいである。
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…ありがとうございます…!!!
そんな、みんなに愛されまくっているこの本。
実は、企画から執筆までをまるっと担当したのは初めてであり、それゆえ不安が大きかった体験の一つでもある。
無事に出版できた折に、学研本社にご挨拶にいったときのこと。
代表の方から
「この本、やたらリアルだけど、なんで?」
と聞かれたことがある。
その答えを含めた経験も踏まえて、一度まとめておきたい。
この本のページに出てくるモデルの秘密
この本の中には、実は私がこれまで10年以上の現場経験で関わってきた、多くの高齢者との経験が詰まっている。
ページを開くごとに「このページは〇〇さん」「このページは、どうしても忘れられない・・・」など、自然と脳内に浮かぶ高齢者の方々
そして、中には数年前に亡くなった祖父の闘病生活や、それを支えた家族の介護経験ももちろんある。
60代の両親が、突然の祖父の介護でぶち当たった壁や、その際に力説した内容なども詰め込んでいる。
イラストを担当したイラストレーターのkeiさんも、パーキンソン病である祖父との思い出が詰まっている
すべて経験から生まれた部分。そして、その経験から学んだことや、経験を乗り越える際に必要だった知識を詰め込んでいる。
高齢者の現場でよくある事故の例
そしてもう一つ。
「自分が介護現場の新人だった頃に知りたかったこと」をもすべて詰め込んでいる。
理学療法士として医療現場で働いていた私が、数年後介護の現場に移ったとき、まさに多くの戸惑いや衝撃に直面した。
「高齢者の集まり」というだけで、こんなにも現場はカオスなのかと驚いた。
そして、翌年通所リハビリの責任者をする上で、このリスク管理の徹底は私の最重要事項となった。
例えば、こんな状況があった。
食事後の失神:食事中は普通に会話をしていた方が、食事後に突然意識を失う。泡を吹いて突然倒れてしまうのだ。
訪問リハの出先の事故:利用者宅につくと、倒れているところを発見する。同居の家族もテンパってしまい救急要請〜その後のケアまで緊急時対応に明け暮れる。
浴室でのトラブル:お風呂大好き末期がんの方のお風呂介助で、完全にのぼせて立てなくなるが「出たくない!」と激怒されてしまう。
通所施設での徘徊:「帰りたい」と何度も出口を探し、スタッフの目をかいくぐろうとする。施設内での安心感をどう作るかを考えさせられた。
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これらのケースは医療現場ではあまり経験しなかった。(もちろん、医療現場ではその現場ならではの疾患ごとの急変などはよくある。)
最初こそ、どうすべきか戸惑った。
しかし、知識として「どうするべきか」を知っているだけで「やるべきこと」がわかる。それだけで、冷静になれるものである。
原稿は二度書き直し、リアルを追求
現役の理学療法士が本の作成に求められているのはなにか?
それを考えたときに、強く思っていたのが
「教科書的な知識のまとめ本を作ることはしない」ということ。
そして「自己満だけの本はいらない」ということである。
教科書的な知識本なら、私より適任がいるはずで、自己満だけの本は人の役に立たない。
私の強みは医療・介護現場をくまなく経験し、多くのカオスな現場を経験したことにある。
また、その中で医師・看護師・相談員をはじめ、介護スタッフ・相談員・ケアマネジャー、自治体や民間のスタッフ、ヘルパー、そして家族、高齢者本人と関わってきたことである。
そんなリアルな状況を書きたかったので、実は執筆中、原稿を二度書き直した。
一度目は自分の体験をベースに書き上げたが、それだけでは偏りがあると感じた。
そこで、二度目は文献や参考書を徹底的に調べ、「一人の体験に縛られないように」知識を補った。
文献を調べる作業は本当に骨が折れた。骨が折れすぎて折れる骨がなくなった(大袈裟)。
大変でこそあったものの、多くの視点を取り入れることで信頼性の高い内容を目指した。
その結果、参考文献の数が多くなりすぎて編集者を困らせたが、読者の役に立つためには必要なプロセスだったと思っている…(もちろん、次からはもう少し吟味します。土下座)
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「わかりやすいのに、学びがある本だよね」
といっていただけるのは、この部分にあると思っている。
そしてなによりわかりやすく、何度も修正してくれたイラストレーターのkeiさんをはじめ、編集部の方々のプロ根性が詰まりに詰まっている。
目指したのは、読者と現場をつなぐ一冊
「高齢者のからだ図鑑」は、現場での悩みや疑問をそのまま持ち込み、その答えを探し続けた結果として生まれた。
介護未経験の頃、こうした本があれば、もっと現場での対応が楽になっただろうと思う。
また、両親が初めて祖父の介護にあたる時、この本があったらもっとスムーズに対応することができただろうと思う。
3刷を迎え、多くの方に手に取っていただける機会が増えた。
介護現場での疑問に少しでも答えられる一冊として、これからも多くの人の助けになれば嬉しい。
ということで、ぜひ、高齢者ケアに困っている方がいたら、そっと手渡して欲しい一冊です・・・!
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