「自分の親や身近な人」これから高齢者に関わるすべての人の必読書の誕生秘話。
実はこの度、高齢者にまつわる書籍を出版させていただくこととなった。
理学療法士として医療・介護現場の10年以上の経験を持つ私と、同じく理学療法士でありイラストレータとして活躍しながらパーキンソン病の祖父の在宅介護をしてきたkeiさんが、それぞれの実体験をもとに作り上げた大切な人を支えるための知恵と工夫を詰め込んだ一冊である。
紹介はほどほどに。
実は、この一冊を書くにあたって、祖父の闘病生活・介護を通じて得た貴重な体験が私の背中を押してくれたので、ここでお話ししたい。
理想の老後が一転『かっこいいおじいちゃん』だった祖父の変化
私の祖父は二人とも(父方・母方ともに)高齢者になってから癌を患った。それまでは健康そのもので、畑仕事や趣味のゴルフを楽しみ、愛犬と共に自宅と別荘を行き来したりと優雅な生活を送っていた。孫の私から見ても、それは理想的な老後の姿であった。しかし、突然の癌の診断は家族全員にとって衝撃的なものであった。
祖父が在宅で療養することを決めたとき(どちらも頑固)、同居する同年代の祖母と私たち家族全員がサポートに回った。しかし、核家族で生活しており遠方だったため、介護保険の手続きや在宅療養の具体的な方法についてはその場にいる誰も分からず、混乱していた。特にキーパーソンとなるべき私の父と母は、介護保険の知識が全くなく、突然の介護に戸惑い、あたふたしていた。
その混乱した状況の中で、最初に知識を伝える場面は本当に苦労した。予備知識があれば簡単に理解できることも、『介護保険とは何か』から説明しなければならない。挙げ句の果てには『「介護」なんて言葉を突きつけるなんて、かわいそう・・・!」と言われてしまう。
突然の介護、その時に必要な知識とは
癌が脳に転移したころ、もともと認知症の気が全くなかった祖父がトイレの場所を間違えて部屋中に放尿してしまったり、(よろよろした足取りで)夜中に何度も浴槽に入ろうとしたりと、これまでとは考えられない行動を取るようになり、介護者の負担も増えていった。
その都度、ヘルパーさんやショートステイ、通所サービスの提案をしたり、杖や手すりの設置、住宅改修の提案など、必要な場面で私なりに助言することで、なんとかいろんな場面を乗り越えてきた。
私がこれまで理学療法士として10年以上病院や介護、在宅の現場で働いてきた経験を生かし、父と母に必要な知識を伝えたことで、
・誰に何を相談すべきか
・今何を準備すべきか
が明確になった。結果として、祖父が亡くなるまでの間、家族も納得のいく形で介護をすることができた。
祖父が亡くなり、49日の法要が過ぎたころ、介護未経験であった父に思い切って心境を尋ねたことがある。
という言葉が出てきた。この言葉を聞いたとき、本当に嬉しく思った。こうした経験は、私が理学療法士としての知識と経験を家族に伝えることで、家族全員が安心して介護に取り組むことができることを実感した瞬間であった。
「高齢者図鑑」の誕生:実体験から生まれた一冊
この本はもともと、パーキンソン病の祖父の介護経験を漫画にしていたイラストレーターのkeiさんの作品から派生したものでもある。
ご縁があり、書籍の原稿の執筆依頼をいただいたときから、何をどうまとめるべきかはものすごく悩んだ。結果として、私がこれまで現場で体験してきた中で、本当に必要な知識だけを厳選してまとめた。イラストが半分、文字が半分という構成で、誰でも見やすく、理解しやすい内容になっている。
そして、イラストレーターのkeiさんのどこか愛らしい高齢者のイラストは、センシティブな内容もまるごと優しさで包み込んでくれている。
この本は、介護現場や医療現場で働く人はもちろん、自分の親や祖父母の介護に不安を抱えている方々にも、ぜひ手に取っていただきたい一冊である。認知症のパートも漫画に置き換え、リアルな現場の雰囲気を少しでも伝えられるよう工夫した。
この本が、皆さんの大切な人を守るための一助となれば幸いである。8月29日の販売開始だが、アマゾンや楽天で先行予約がスタートしている。どうかこの「イラストでわかる 高齢者のからだ図鑑」を、お守り代わりに手に取っていただければ嬉しい。