須恵器・土器を愉しむ【珠洲焼 中世日本海・黒のやきものグラフィック(渋谷:ヒカリエ8F )感想】マジ珠洲焼20点の展示で技巧・質感を把握
「須恵器・土器を愉しむ」では、個人的関心事の須恵器・土師器を中心に「考古・郷土全般」に関する都内および近郊の展示に関する感想・情報を綴っていきます。施設側の情報発信が少なく「どこに何が展示されているのか分からない」ことも多いので、参考にしていただければ幸いです。
今回の展示のポイントは次の2点。
■東京ではなかなか観られない「珠洲焼」の一挙把握のチャンス
■圧倒的な存在感に向き合う鑑賞の面白さ
■東京ではなかなか観られない「珠洲焼」の一挙把握のチャンス
平安期の能登半島に現れ、戦国時代に継承が途絶えた古窯・珠洲焼。1979年に復活し、その40周年を記念した展示会が渋谷・ヒカリエの8Fギャラリーで開催中です。須恵器に感心を持つと、どうしても気になる珠洲焼ですが、都内ではしっかり鑑賞できる場所がありません(個人の知る範囲で、ですが)。東京国立博物館で古窯陶器の一覧展示に1点。最近開催された出光美術館の「六古窯」展でも参考程度に見た限りで、むしろヤフオクにたまに出てきて高額で消えて行く姿をチラホラ見かけます。
この展示は、途絶える前の中世の本物珠洲焼が20点展示され、年代、技巧、用途等の説明と復活した現在の窯の動画とを合わせたもの。「珠洲焼とは?」の長年もやっとした思いに、幅広く応えてくれる充実した内容です。
最初に登場するのが、珠洲焼最古の型式を残す12世紀の壺。動画説明によると、珠洲焼は、壺を成形後、中に当て具を添え、外から木板で叩く作業を「下から上」のタテ移動で行うとのこと。なるほど、中の当て具の痕が、上に上に重ねられています。
須恵器の甕が土紐を積み上げながら円周横移動から上へ重ねられていくのとは違う模様になっています(下は須恵器の甕の当て具痕)。
パネル説明は決して多くありませんが、動画と目の前の特徴を持つ展示品で技巧や見た目の特徴のポイントがスッと把握できます。
■圧倒的な存在感に向き合う鑑賞の面白さ
小さな底、上へ上へと積み重ねた土の勢い、それを頸に向けて閉じていく肩の張り具合。珠洲焼の独特のフォルム、シンメトリーに収まらないゆがみ、自然釉がなければほぼ灰色の須恵器に通じる飾り気のなさ。どの器にも共通する、そうした「珠洲焼らしさ」がゆるぎない存在感を持ち、こちらに何の知識がなくても「こういうものです」という姿で迫ってきます。
20点という数ですが、一巡後、「ああ、さっきのあれはそういうことか」と二度見、自分なりの視点や理解が進むほどに二巡、三巡と終わりません。鑑賞時間はかなり余裕をもっていくといいでしょう。
撮影可なので、ここにもいろいろ載せますが、その人の見方でいかようにもイメージの変わる器だと思います。今回、この機会に足を運べば、価値は必ずあったと感じるでしょう。
アンケートを記入すると、展示作品のポストカードをいただけます。困ったことに1点1枚のものが数種類あります。まさかのラストに「ああ、どれにしよう」と迷うことになるとは……。なので、鑑賞中にオキニの1点を明確にしておくといいでしょう。
なお、同じフロアにはなんと川本喜八郎ギャラリーがあり、「平家物語」や「三国志」の人形がわんさか展示されています。こちらの室内撮影は禁止ですが、ガラス越しに間近に見られる質感・表情は、珠洲焼同様に大迫力です。
いずれも無料、珠洲焼は20時まで、川本喜八郎ギャラリーは19時までなので、平日夕方でも立ち寄ってはいかがでしょう。
珠洲焼展の概要はこちら https://suzuware.info
フリーランスの編集・ライターとして活動しています。編集・ライター作品紹介webサイト「神楽出版企画」(企画から制作進行・執筆までワンストップ対応)
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